沖縄が美しく輝く「うりずん」の季節に訪れたい、県内最大の門中墓

2015.04.15
by kousei_saho
うりずんの頃うりずんの頃
 

沖縄では、お墓がごくごく身近な存在であることをご存知の方も多いかと思います。ご先祖様とこの世の人々との距離が近いと言ってもいいかもしれませんね。ご自身もお墓は幼い頃の遊び場だったという沖縄在住の写真家・伊波一志さんが、県内最大の門中墓をフォトレポートしてくださいました。

幸地腹・赤比儀腹両門中墓(こうちばら あかひぎばらりょうもんちゅうばか)  糸満市字糸満

沖縄は現在、冬が終わり大地に潤いが増してくる「うりずん」の季節(2月から4月)まっただ中。この「うりずん」の時期には、若葉がいっせいに芽吹き、草花はその彩りを増して、大地を潤していきます。亜熱帯気候の沖縄ですが、この時期が最も美しく過ごしやすい時期かもしれません。

そんな「うりずん」の季節の旧暦の三月清明節(新暦の4月5日ころ)には、沖縄本島中南部を中心に祖先供養のまつりが盛大に行われます。沖縄好きの方々はご存知かもしれませんが、シーミー(清明祭)といわれる行事です(那覇市首里近辺ではウシーミー(御清明)とも呼ばれています)。

シーミー(清明祭)は門中(もんちゅう、沖縄県における、始祖を同じくする父系の血縁集団のこと。門中は、17世紀後半以降、士族の家譜編纂を機に沖縄本島中南部を中心に発達し、のちには本島北部や離島にも拡がった)墓に一族が集まり、各世帯が持ち寄った重詰料理や酒、花をお墓にお供えし、その後、皆でお供えしたご馳走をいただきます。先祖を敬い大切にする沖縄人にとってはとても重要な行事。ただ、それほど堅苦しいものではなく、シーミー(清明祭)はピクニックのような感覚で行われ、親族の親睦の場となっています。

シーミーのような行事を筆頭に、沖縄人にとってお墓はそれほどおどろおどろしい場所ではなく比較的身近なところです。実際、僕ら中年世代のウチナーンチュにとっては、お墓は探検したり、おにごっこやかくれんぼをする遊び場でもあったんですよ。

幸地腹・赤比儀腹両門中墓入口

幸地腹・赤比儀腹両門中墓入口

さて、大変前置きが長くなりましたが、今回ご紹介したいのは、沖縄最大といわれる門中墓、幸地腹・赤比儀腹両門中墓(こうちばら あかひぎばらりょうもんちゅうばか)。

幸地腹・赤比儀腹両門中墓は、幸地腹と赤比儀腹(腹というのも門中とほぼ同意味)の共同墓なのですが、墓の歴史はきわめて古く、墓に建てられた石碑には康熙23年(1684)の銘もあるほど。ちなみに、1684年の創建当時から1868年までは1つの小さな亀甲墓だったそうですが、近代になって子孫が広がり、1935年に大改修され、屋根の形も亀甲形式から破風形式の家型の墓になったそうです。

幸地腹・赤比儀腹両門中墓中央

幸地腹・赤比儀腹両門中墓中央

ところで、幸地腹・赤比儀腹両門中墓の敷地は5400㎡におよび(ちょっとした神社やお寺の境内くらいの広さ)、敷地内にはトーシー1基、シルヒラシー4基、ワラビ墓(幼児墓)、納骨堂、洗骨場などがあります。

ワラビ墓(幼児墓)

ワラビ墓(幼児墓)

トーシーは洗骨後の遺骨(現在では火葬骨)を永遠に安置する第二次墓で、大きな破風墓。シルヒラシは4基とも破風墓で遺骸を数年間置いて白骨化させ洗骨をするまでの第一次墓で、東側から順番に使うそうです(火葬の現在においては利用されていないかもしれません)。トーシーの内部もシルヒラシ所と納骨所に分かれているようですが、ここのシルヒラシ所は80歳以上の高齢で亡くなった方や、功労のあった方を直接葬るところとなっているそう。ちなみに、納骨所も東西に二分され、東側に幸地腹系統、西側に赤比儀腹系統が葬られているとのこと。

トーシー

トーシー

先ほども述べましたが、「門中(ムンチュウ)」「腹」とは、父系の血縁集団を表す言葉ですが、ここ幸地腹・赤比儀腹両門中墓には約5,500人の先祖が祀られているのだとか。この血縁共同墓は、一族団結の象徴となっているそうですが、葬られている人数の多さを知ると、あらためて人間は無数のご先祖さまのお陰で生かされているのかな、なんて思い知らされる気がします。

シルヒラシー

シルヒラシー

今回ご紹介した幸地腹・赤比儀腹両門中墓は、歴史的人物とか有名人のお墓ではありませんが、歴史的建造物として足を運ぶ価値は十分あると思います(門中以外の人も見学可)。那覇空港から車で約30分、糸満ロータリーから徒歩3分ほどで行けますので、ぜひ足を運んでみてください。もしかしたら、あなたご自身のたくさんのご先祖さまに思いを馳せるよい機会になるかもしれませんよ。

 

iha伊波 一志(いは かずし)

1969年、沖縄生まれ。写真家。香川大学法学部卒。2007年夏、44日間で四国八十八カ所1,200kmを踏破。現在、沖縄県在住で、主に『母の奄美』という作品撮りのため奄美大島を撮影中。家族は、妻と三人の子。

 

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