オスプレイとグスク。沖縄の現在・過去・未来が見渡せる公園を往く

2015.06.17
by kousei_saho
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みなさんは、「普天間基地(普天間飛行場)」ってご存知でしょうか。時事問題に関心のある方なら、名護市辺野古への移設問題で混迷をきわめる米軍基地として耳にされたことがあるかと思います。今回は、その普天間基地を見下ろすことができる「嘉数高台公園」をご紹介したいと思います。

嘉数(かかず)高台公園 宜野湾市嘉数

嘉数高台公園は、宜野湾市の南西部地域にある小高い自然林を利用して造成された公園(1984年造成)。

遠く残波岬を望む

遠く残波岬を望む

この公園の高台頂上には地球を模した展望台があり、普天間基地や市街地はもちろん、北は残波岬、南西方向には慶良間諸島などが見え、景色は最高です。

那覇市街地・慶良間方面

那覇市街地・慶良間方面

普天間基地の立地状況や航空機の運用状況が把握できるため(今話題のオスプレイの離発着も見られます)、報道機関による取材や学校教育での平和学習などによく利用されているほか、閣僚や国会議員などが普天間飛行場の状況を視察するさいにも利用されています(ニュースなどでも展望台からの視察映像がたびたび流れていますね)。

市街地に隣接する普天間基地とオスプレイ

市街地に隣接する普天間基地とオスプレイ

また、遊具やスポーツ施設等も整っており、普通の公園として家族連れでも楽しむことができる場所でもあります。

木陰と遊具

木陰と遊具

ただし、私たちにとって忘れてはならない事実は、ここが去る沖縄戦の激戦地であり多くの犠牲者を出した場所でもあること。

実は、ここ嘉数は、高台の標高わずか92メートルの丘をめぐって、日本とアメリカの数千人の兵士が命を落とした(嘉数住民も半数以上が死亡)「嘉数の戦い」が行われた戦跡でもあるのです。

陣地壕入口

陣地壕入口

ちなみに「嘉数の戦いとは」、太平洋戦争末期の沖縄戦において、嘉数高台をめぐって1945年4月8日から16日間に渡って行われた戦いです。この戦いは沖縄戦最大級の戦闘の1つとしても知られるほどの激戦であったそう。日本軍は低地に「反斜面陣地」を構築して米軍に劣る火力をカバーし、頑強に抵抗したため、嘉数は米軍からは「死の罠」「忌々しい丘」などと呼ばれたといいます。

トーチカ正面

トーチカ正面

というわけで、嘉数高台公園には、眺めの良い展望台だけでなく、戦争遺跡のトーチカ(圧倒的な物量のアメリカ軍を食い止めるため、分厚いコンクリー卜で固めた日本軍の小さな攻撃拠点)や陣地壕、戦闘を物語る「弾痕の塀」や慰霊の塔などもあります。

「楽しい沖縄旅行のついでに…」なんて気持ちでは足が向かない場所かもしれません。しかし、私はぜひ一度足を運んでいただけたらなあ、と願います。なぜなら、嘉数高台公園から沖縄の様々なものが見えるから。

北を望む。中央のホテル奥は米軍上陸海岸戦

北を望む。中央のホテル奥は米軍上陸海岸戦

展望台から北を望むと、手前にはリゾートホテルやコンベンションセンター、奥には米軍が沖縄戦の際上陸した嘉手納や読谷方面の海岸線。そして北東前方には普天間飛行場が広がっています。東側には琉球大学病院、南西方向には那覇市の市街地や慶良間列島が。

浦添グスク跡とようどれ

浦添グスク跡とようどれ

南東側には浦添グスク(12世紀から15世紀初頭にかけて舜天、英祖、察度の3王朝10代にわたって居城した城跡)と浦添ようどれ(琉球王国の陵墓)、そして前田高地(この辺りの高台も激戦地)が見えます。さらに、天候が良ければ、当然、沖縄の真っ青な海と空も見えます。

前田高地

前田高地

要するに、大げさに言わせてもらうなら、嘉数高台公園から沖縄の現在・過去・未来が見えてくる気がするからです。

また、今年は戦後70周年の年でもありますので、もし時間に余裕のある旅であれば、慰霊や平和を祈念する気持ちで訪れてみるのもいいかもしれませんね。

展望台の見学者

展望台の見学者

国道330号線を那覇方面から北上し、伊祖トンネルを抜け、ファミリーマートの手前を左折して500mほど行くと、左側に嘉数高台公園の案内板があり、それに従い住宅街に入っていくとすぐに公園はあります(20台ほど駐車可)。

那覇空港から約40分でアクセスできますので、一度足を運んでみてはいかがでしょうか。

 

iha伊波 一志(いは かずし)

1969年、沖縄生まれ。写真家。香川大学法学部卒。2007年夏、44日間で四国八十八カ所1,200kmを踏破。現在、沖縄県在住で、主に『母の奄美』という作品撮りのため奄美大島を撮影中。家族は、妻と三人の子。

 

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