日本の株式市場は「円安=株高」の傾向が強いと言われますが、為替レートの変動が個々の企業業績に与える影響となるとまさに千差万別。お気に入り企業の事業構造を知り、為替から受ける影響を自分で予想できるようになれば、投資がもっと楽しくなりますよ。公認会計士・税理士の柴山政行氏が解説します。
円安でピンチに!?トレンドマイクロ社の決算から分かること
ウィルス対策ソフト大手のトレンドマイクロ社が12日に2015年度第2四半期(1月~6月)の決算発表をしました。
それによると、当期純利益が前年同期比で3.0%減少の10,444百万円(約104億円)となりました。売上高以下の6ヶ月累計は次の通りです。
2015年1~6月累計 | |
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売上高 | 60,668(前期比+9.7%) |
営業利益 | 15,494(前期比△3.5%) |
経常利益 | 16,571(前期比△5.0%) |
当期純利益 | 10,444(前期比△3.0%) |
2014年1~6月累計 | |
売上高 | 55,325 |
営業利益 | 16,056 |
経常利益 | 17,435 |
当期純利益 | 10,764 |
こうしてみると、売上高は前期比で9.7%も増えているのに、営業利益以下は軒並み減少しています。
その主な理由として、円安の影響があるということです。
具体的には、海外拠点の人件費などを円換算した金額が膨らんでしまった結果、費用負担の増加にともない、営業利益以下が減少することになってしまったようですね。
シンプルな計算例
円安の影響により営業利益以下が減少する仕組みを、具体的な計算例でみていきましょう。
計算例1
8月分の海外拠点の給料20万ドルを現金で支払った。この日の為替レートは1ドル120円だった。
(借方)給料2400万円 | (貸方)現金2400万円 |
※2400万円=20万ドル×120円
もしもその後、急激に円安となって、1ドル125円になってしまったとしましょう。
計算例2
9月分の海外拠点の給料20万ドルを現金で支払った。この日の為替レートは1ドル125円だった。
(借方)2500万円 | (貸方)2500万円 |
※2500万円=20万ドル×125円
いかがでしょうか。為替レートが5円ほど円安に振れたことにより、同じ20万ドルの経費(ここでは給料)の円建てによる計上額が100万円も増えてしまいました。
同じ経営努力でも、為替レートの変動によって、大きく業績に影響を及ぼすことがわかりますね。
円安は、収益を増やす一方で、費用も増やすので、それらの相対的な関係によっては、費用の増加負担が大きくて業績を下げることもあるわけです。
そんな現象をあらわす事例として、今回のトレンドマイクロの決算発表は参考になると思いますよ。
※【PDF】トレンドマイクロ 平成27年12月期 第2四半期決算短信〔日本基準〕(連結)
『時事問題で楽しくマスター!使える会計知識』(2015年8月13日号)より一部抜粋
※太字・見出しはMONEY VOICE編集部による
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