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住友電工<5802>の研究=市場平均に勝てない老舗銘柄の隠れた強みとは?

単純な上昇率では日経平均に負けてしまうことの多い「地味銘柄」の中にも、よく観察してみると特徴的な値動きをしている会社があります。住友電工<5802>もそんな銘柄のひとつ。元日本株ファンドマネージャーの若林利明氏が解説します。

過去データに見る、住友電工<5802>のユニークな特徴

「市場平均に勝てない老舗銘柄」の隠れた強みとは?

住友電工<5802>は、投資家であれば誰も知らない人はいないほどの名門企業です。

かつて、この企業の業績を捉えるには、マクロの統計データである鉱工業生産を追いかけろと言われたほどです。日本経済の動き全体に関わっている製品を作っている企業なのです。

いわゆるハイテクの内容を持った製品群も多く手掛け、世界トップクラスの技術力によって作られた製品も少なくありません。今後東南アジアで成長が見込まれる通信用の海底ケーブルも評価の高い製品の1つです。

また自動車エンジンまわりのハーネスといった部品も有名です。こうした高品質の製品を手掛けることで外国人投資家の評価も高く、外国人投資家の持ち株は発行済み株式の40%以上もあります。

一方、株価の動きは、実際に保有している投資家にとっては若干物足りないのではないか、と思われがちです。

2007年大納会を起点“1”とし、その後の株価の変化について、各年6月末、12月末の値をプロットし直近までつなげました。

日経平均に勝っていないことが最大の特徴です。さらに特徴的な動きは日経平均との格差が開いた時、市場が上方に向かう場合に、出遅れ感の強い銘柄として短期的に市場平均をキャッチアップするように動くことです

その間だけを捉えれば日経平均に勝る動きを示しているハズです。このグラフでは2008年12月~2009年6月、2013年6月~12月までの2回、その動きがはっきりと見られます。

一方、市場が低迷するときは、ほぼ市場の動きと同じように動くのも特徴です。それが具体的に見られるのが2009年から2011年までの動きです。

おそらく、市場の平均以上に積極的に買い上げられないことにより、相対的ダウンサイドリスクが少ない銘柄とされているのかもしれません。

株価の動きの物足りなさはこの種の銘柄に良くあることです。当社の場合事業の内容が広く産業全般に関わっていますが、大きな柱となるような製品が目立つ形ではありません

さらに消費者の目に直接触れる最終製品がほとんどないことも特徴です。消費関連の製品に限らず、ブルドーザーであればコマツ、船であれば三菱重工といった投資家に解りやすい形の製品もありません。

産業を支える力持ち的存在であることは確かですが、なかなか人気がつきづらいことの要因はこうしたところにも結構ありあそうです。

まとめ

2016年、2017年の値はコンセンサス予想です。

事業資質を生かした水準の高い利益が出るようになってきました。2016年3月(予想)は前期の利益が大きく出たことにより反動減もありますが、その後の収益状況も堅調に推移しそうです。

過去の8年間にわたる経験則があてはまれば、PER的にもそれほど高く買いこまれている株価ではないので、日経平均の動きに接近する可能性が見て取れそうです。

少なくとも下値不安は日経平均を大きく凌駕した銘柄より少ないと言えそうです。現金配当は増配含み35円(2016年3月期)の見方が一般的です。利回りも2%前後の水準となり、地味ながら手堅い銘柄と言えそうです。

住友電工<5802> 週足(SBI証券提供)

住友電工<5802> 週足(SBI証券提供)

筆者プロフィール:若林利明
外資系機関投資家を中心に日本株のファンドマネージャーを歴任。現在は創価女子短期大学非常勤講師、NPO法人日本個人投資家協会協議会委員。世界の株式市場における東京市場の位置づけ、そこで大きな影響力を行使する外国人投資家の投資動向に精通する。著書:「資産運用のセンスのみがき方」(近代セールス社)など。

投資の視点』(2015年9月2日号)より一部抜粋

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