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「消費税が上がったらマイナンバーで還付」は課題山積。そもそも消費増税が不必要だ=FP・落合陽平

2017年4月に予定されている消費税10%への引き上げによる負担軽減のための方法として、マイナンバーを使った還付制度が検討されています。これは、酒類を除く食料品を買った時に、まず10%の消費税を支払い、その時にマイナンバーカードを提示することにより、後に2%が還付されるという仕組みです。この政府案に対し、ファイナンシャルプランナーの落合陽平さんは、私たちが考えなければならない、気をつけなければならない点が3つあると語ります。

財務省の魂胆は空気作り?マイナンバーカードで軽減税率は実現できるのか

【食料品の軽減税率、マイナンバーで還付】
2017年4月に消費税率が現行の8%から10%に引き上げられるのに合わせて導入される、酒を除く「飲食料品」への軽減税率に、国民全員に番号を割り振るマイナンバー制度を活用する案が浮上した。

欧州などの軽減税率は、買い物時に対象品目に低い税率が適用される仕組み。それとは異なり、たとえば消費者が1000円の飲食料品を買うと、一たんは10%の消費税を含む1100円を支払うが、そのうちの2%分(軽減後の税率を8%と仮定した場合)に当たる20円が後日還付される仕組みだ。(後略)
(2015年9月8日 Jcastニュースより引用)

今回の軽減税率議論において、私たちが考えなければならない、あるいは気をつけなければならないのは以下の3つである。

  1. 軽減税率は本当に弱者のための制度なのか
  2. マイナンバー活用は「意味のある」制度なのか
  3. 消費増税は不可避なのか

適用の線引きが難しい軽減税率は困窮者を救わない

まず1であるが、個人的に軽減税率は弱者のための政策だとはあまり思えない。確かに一定の品目について税率を下げることで、消費者が得をする、というのはその通りであるが、ポイントは本当に弱者(経済困窮者)のための政策にすることができるのか。その点において、私は相当に難しいと思っている。

軽減税率において、もっとも難儀な問題は「何を軽減税率対象品目にするか」である。この線引きは非常に難しい。経済の公平性を保つ場合、低所得者が高所得者よりも、より減税の恩恵を受けなければならない。日本の所得税はまさしくそういう制度になっているし、様々な優遇制度に年収要件があるのもそういうことだ。

その一方で、例えば記事のように飲食料品に軽減税率を設けるとして、卵や肉、魚などは低所得者も高所得者も購入するわけである。仮に生肉に軽減税率を適用し、2%の税率軽減を設けたとした場合、低所得者は安い肉を買い、高所得者は高級肉を買う頻度が多いわけであるから、この場合高所得者のほうが税金優遇を受けているという結果になるわけである。
例)
400円の肉⇒8円の軽減
1000円の肉⇒20円の軽減

同じことは卵にも魚にもいえることで、「どこから適用するか」というのをきちんと考えないと、結果的に軽減税率は高所得者にとって有利な政策となるわけである。そして、「肉はここからからが適用だよ!」なんてことは不可能であるということだ。そういった観点から、個人的に軽減税率は反対である。

ブレストレベルのマイナンバー活用。“増税ありき”の空気に飲まれるな

次に2。マイナンバーを活用していったん支払った10%分の消費税のうち、2%分を後に還付するという手法であるが、申し訳ないが現実味が見えない。そもそもマイナンバーカードを通す機械が必要であり、それを負担するだけで小売店はお手上げであるし、スピード命の小売店などでは効率が悪すぎる。麻生大臣は「クレカを通すのと一緒」みたいな発言をされていたが、精肉店でクレカ払いをしている人を見たことがない。何よりも、なぜ行政機関に購入履歴を見せなければならないのか。課題が多すぎてブレストレベルとしか思えない。

最後に3であるが、つまりこういった軽減税率系の議論を始めることで、「消費税は10%に上がることが決まっている」という空気を作っているようにしか見えない。すでにマスコミの報道でも、「2017年の消費税10%にあたり~」という枕詞が目立っているし、財務省の魂胆が見え見えなのが非常に不愉快である。

私たちが本当に考えないといけないことは、「そもそも10%に上げるべきではないのでは!?」ということである。今の経済状況、株価を見ても、10%に上げる理由は一つもない。
増税ではなく、むしろ減税が好ましい日本経済において、こういった「作られた空気」に飲まれてしまわないよう、気をつけていただきたい。

【関連】「マイナンバー」は簡易書留で届く。受け取ったら何をすればいい?=行政書士・山田和美

落合王子のマネーアカデミー』2015/9/9号より抜粋
※太字はマネーボイス編集部による

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