ノーベル賞を受賞した大村智教授、成功の秘訣は「出会いを大事にすること」

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2015年ノーベル化学賞を受賞した大村智教授。彼の研究はアフリカに住む多くの人々を失明する病から救いました。そんな彼の足跡についてメルマガ『Japan on the Globe-国際派日本人養成講座』の著者・伊勢雅臣さんが紹介しています。 

大村智教授、一期一会のノーベル賞

大村智(さとし)が東京・墨田区の夜間高校で物理と化学の試験を監督している際、ふと目にしたのは、1人の生徒が鉛筆を握っている手の指に油がこびりついている事だった。

改めて生徒たちの姿を見ると、洋服の所々に油をにじませている生徒もいる。昼間は働き、夜はこうして勉学のために登校してくる。大村は改めて、その姿に感動した。

大村は自分の高校生時代の生活を思い出した。裕福な農家の長男として生まれ、何1つ不自由なく過ごした高校時代は、勉強などしないでスキーや卓球に明け暮れていた。高3の2学期からは受験勉強をしたが、大学に入ってからも、勉強に打ち込んだ覚えはない。

昼は油にまみれて働き、夜はこうして必死に勉強に取り組んでいる夜間高校の生徒たちを見て、自分はもっと何かをしなければ済まないという気になった。大村は胸の奥から湧き上がるようなエネルギーを感じた。「自分も学び直そう」

信条は「一期一会」

2015年のノーベル医学・生理学賞に輝いた大村智・北里大特別栄誉教授が研究者への道を歩み出したのは、この瞬間だった。

大村は、12月7日、ストックホルムでの受賞記念講演で、信条としてきたのは「一期一会(いちごいちえ)」だと語った。茶会に臨む際に「一生(一期)に一度の出会い(一会)と考えて、真心を尽くせ」という茶道の心得である。

この夜間高校での生徒たちとの一期一会の出会いで、「自分はもっと何かをしなければ済まない」という初志を抱いた事が大村が研究人生を踏み出すきっかけとなった。この時に「生徒たちも頑張っているな」という程度の思いで終わっていたら、今回のノーベル賞もなかっただろう。

その後の大村の研究人生も、この初志を遂げるために様々な人々との出会いを大切にし、それらの人々に導かれ、助けられて、ついにはノーベル賞に至ったのである。

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