何ともデタラメな国会答弁が繰り返されている。「GPIFの資産構成の見直し」によって運用リスクが増大した中で、「必要な年金積立金を下回るリスクは少なくなった」という安倍首相の答弁は理論上あり得ない話だ。
プロフィール:近藤駿介(こんどうしゅんすけ)
ファンドマネージャー、ストラテジストとして金融市場で20年以上の実戦経験。評論活動の傍ら国会議員政策顧問などを歴任。教科書的な評論・解説ではなく、市場参加者の肌感覚を伝えるメルマガ『近藤駿介~金融市場を通して見える世界』がまぐまぐ大賞2015メディア賞を受賞。
政府は「必要な年金積立金」の額を公表できない
公的年金運用「3つの欺瞞」
何ともデタラメな国会答弁が繰り返されている。
安倍晋三首相は12日午後の衆院予算委員会で、年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)の年金運用を巡り、GPIFの資産構成の見直しによって『年金財政上、必要な年金積立金を下回るリスクは少なくなった』と述べた。GPIFは2014年10月に国内外の株式を5割に高めると発表。リスク性資産の割合を高め、従前の国債に偏っていた資産構成を見直すとしていた。
公的年金運用の最大の問題は「必要な年金積立金」の額が明らかになっていないこと。このような発言をするということは政府は「必要な年金積立金」の額を把握しているということ。ならばそれを公表するべき。
「必要な年金積立金を下回るリスクは少なくなった」というのであれば、今後年金保険料の引上げや、年金給付金引下げ、年金支給開始年齢引上げのリスクも少なくなったということ。俄かに信じ難いこと。
運用に関しては、「GPIFの資産構成の見直し」によって運用リスクが増大した中で、「必要な年金積立金を下回るリスクは少なくなった」というのは理論上あり得ない話。しかし、そこを突ける議員はいない。
維新の党の井坂信彦議員への答弁。井坂議員は質問に際し、年初からの日経平均株価の続落を受けて「大ざっぱに予想すると、この1週間で年金積立金が約5兆円目減りした恐れがある」と指摘していた。
維新の党の井坂議員は、拙記事を読んでくれたのだろうか。
『近藤駿介~金融市場を通して見える世界』(2016年1月12日号)より
※記事タイトル、本文見出し、太字はMONEY VOICE編集部による
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