近年、中国企業による海外資産の買収や海外企業の誘致が盛んですが、その背後には日本人には到底理解不能な中国の国家戦略があるようです。はじめは従順な態度で接し、技術やノウハウを盗めば強気に出てくる中国の強引なやり方に対して、日本企業はどのように対処すべきなのでしょうか? メルマガ『中国大連ビジネスリポート』の高瀬正博さんは、長年中国でビジネスに関わってきた立場から、中国人の根底にある思考回路を詳しく解説しています。
中国企業が海外資産を戦略的に買収するのはなぜか?
大連の近頃はどんより曇り空で、雨降りが二、三日続き、変な暑さのある(と言うか中途半端なナマ暑いというか)そんな日が続いている。
思いつくのは16年前とは随分変わったこと。朝晩は少々冷え込むので体温調節が儘ならない状況。いかにも中国特有のハッキリとしない、好い加減さがそのまま出ているようだ。
先日の話になるが、中国人の友人が今から8年前に買った北海道の土地でようやく利益を生み出すことができるようになったと。
当時から北海道は中国東北人にとって格好の地であった。役人たちが視察旅行に日本へ頻繁に出向いていたころでもある。
その当時の価格は本当に二束三文だとはいえ、広大な土地に中国人村でも作るようなそんな雰囲気を醸し出していた。
経済改革を打ち出した「トウ小平」の手法は、「能ある鷹は爪を隠す」「綿中に針を蔵す」「白猫であれ黒猫であれネズミをとるのがいい猫だ」というように、すべてを現実的実務的にとらえて処理することを推し進めた。
製造業を中心に外国からの資本や技術などを吸収するべく、税制や土地使用等に優遇策を盛り込み取り込んだ。
大連の経済開発区(現金州新区)もその通りで、マブチモーター、三洋、パンチ工業、キャノン、アイリスオーヤマ、富士ファイン等々、進出年度はばらばらにしても次から次へと日系企業が設立された。
しかし、徐々に当初の思惑通りになかなか進ませてくれず、今回シャープを買収した鴻海・郭氏の言う「信賞必罰」導入のように、何かとイチャモンもつけては罰則のみを強化し、それにより外資企業を居づらく仕向けるのだ。
人件費の高騰も一つの要因にはなるが、それよりも十数年間に貯め続けた技術等のノウハウも万全となったころを見計らって、やおら落とし込み作戦が開始されるのだ。
このように外堀から内堀へそして本丸を攻め落とすのが中国のやり方だ。
アリババの馬雲がソフトバンクの孫正義に仕掛けた手法も特有のものであり、今回騒動となっている「中国で作られるコピー商品は本物に負けない品質だ。しかも本物より安い」と発言し、知財権を容認し、称賛していること自体、常識人からみれば何をバカなことを言っているんだと腹底から怒鳴り散らしたくなるだろう。
しかし、これこそが中国人の底流に流れる思考回路なのだから、目くじらをたてることこそ逆におかしな人と見られてしまうのだ。
当初は自らを下手に置きいかにも従順な態度、行動を見せつけているが、いざその立場が大きくなるとともに中国人特有の大柄な態度が顔を覗かせるのだ。
中国人が海外の企業や資産を買い漁っている現状をみて、一つには、自らの保身のための財産を確保するためがある。二つには、中国人をその国へ流出させることで、その地を中国人で埋めることだ。
それこそ日本企業から技術を掌中に収めることができれば、それだけで信用度が大きく増すだけでなく、コピーも作れば幾千倍、万倍の利益を得ることも不可能ではない。
だから日本企業は今ある技術の賞味期限が切れたらそこまでだといえる。
中国人は、自責無く他責理論で押し通すのが当たり前だから、そのことを強く認識しておいて日本人の曖昧な態度を改め、相手の語調に合わせてこちらも正面から強く訴える必要がある。腕づくできたら、腕づくで返す。
今中国は日本の外堀を埋めつつ、内堀へと突き進んできている。日本の議員もその掌中にあるものもいる。甘い言葉に乗せられやすい日本人は本当に要注意だ。