停戦中にアメリカが行ったシリアへの空爆を境に米ロ両国の関係が悪化していることは、先日掲載の記事「すでに軍艦も出港。米の誤爆に激怒のプーチン、米ロ戦争を決意か」でお伝えした通りですが、無料メルマガ『ロシア政治経済ジャーナル』の著者でモスクワ在住の北野幸伯さんは、プーチン大統領がアメリカに事実上の「最後通牒」をつきつけ、戦争へまた一歩近付いたとしています。
プーチンがアメリカに「最後通牒」
モスクワの最高気温は、プラス5度。どんよりと曇り、近々雪が降るといわれています。そして、私の心も、モスクワの天気と同じく、寒く、暗く、今にも雪が降りそうな感覚。なぜでしょうか? プーチンがアメリカに、「最後通牒」を出したから。
今回の話は、昨日のつづきです。必ずこちらからご一読ください。
● すでに軍艦も出港。米の誤爆に激怒のプーチン、米ロ戦争を決意か
アメリカとロシアは、シリア停戦を実現すべく、共に作業を進めてきました。それで9月12日、停戦合意が発効した。ところが、9月17日、アメリカ軍の空爆でアサド軍の兵士60人が亡くなります。
アメリカは、「誤爆しました。すいません」と謝罪。しかし、ロシア側は、「停戦をぶち壊すために、カーター国防長官がわざとやらせた!」と激怒。これでアサド軍は9月19日、「停戦終了」を宣言。10月3日、アメリカはロシアとの「停戦協議中止」を発表します。米ロ関係は、大変険悪になりました。
ここから、ロシアは、あらゆる面で強硬になっていきます。プーチンは10月3日、「余剰プルトニウムの処分に関する米国との合意」を停止する大統領令を出した。
<ロシア>米との合意停止 余剰プルトニウム処分で
毎日新聞10月4日(火)12時43分配信
【モスクワ杉尾直哉、ワシントン会川晴之】ロシアのプーチン大統領は3日、米露の核軍縮合意により生じた余剰プルトニウムの処分に関する米国との合意を停止する大統領令を出した。「米国の非友好的な行動の結果、状況が根本から変化した」としている。
「米国の非友好的な行動の結果、状況が根本から変化した」
この「非友好的な行動」とはなんでしょうか?
プーチン氏は3日、米露合意を破棄する法案を露下院に提出した。提出理由として、米側が余剰プルトニウムを発電で消費せず、合意に違反して「貯蔵」しようとしていると指摘。さらに、米国による
- 東欧・バルト3国の軍備強化
- ウクライナ問題を巡る対露制裁
- ロシア国内の人権侵害に対して米国が制裁を科す「マグニツキー法」(12年成立)
――などを列挙した。
(同上)
この三つなんですが、日本の新聞とロシアの報道では、かなりニュアンスが違っています。ロシア国営放送RTR「ヴェスティ ニデーリ」10月9日では、「ロシアは、アメリカに最後通牒をつきつけた!」と報じられていました。どんな「最後通牒」?