「前進することを止めなければ、トンネルはいつか必ず抜ける」~辻野晃一郎の人生サプリ(第3回)

読んだ人が元気になれるサプリのようなコラム。朝のしんどい満員電車で、少し眠くなってきたランチの後に、上司に叱られた夕暮れ時に、何だか眠れない夜に。。。あなたに届ける人生サプリ。

前進することを止めなければ、トンネルはいつか必ず抜ける

「電車がトンネルに入ると、真っ暗で不安になりますね。だからといって、電車がそこで止まってしまったら、永久にトンネルから抜け出すことはできません。その代わり、前進することを止めなければ、いつかは必ずトンネルを抜けることができます。」

忙しい日が続いてすっかり間が空いてしまいました。いつもメッセージを読んでいただきありがとうございます。

今回は上記のフレーズを取り上げてみました。これも何かのインタビューの時にお話しした内容の一部だったかと思います。

今、移動中の新幹線の中でこの原稿を書いていますが、新幹線に乗っていると、トンネルがたくさんあります。東海道新幹線で13%、東北新幹線で31%、山陽新幹線や九州新幹線では約50%がトンネルです。トンネルに入ると真っ暗で、いつ抜けるのかがわからないので、不安になったりイライラしたりすることがあるかもしれませんが、電車が前に向かって走り続けている限り、そのうちトンネルは必ず抜けます。

人生も同じようなものではないでしょうか?誰にでも突然、出口もわからない漆黒のトンネルに入ってしまうような時期が必ずあります。上手くいかないことが続いたり、長いスランプに陥ると、将来が不安になったり、ヤケを起こしたりしがちですが、そうではなく、粛々と日々やるべきことをこなし、淡々と前に進み続けてさえいれば、いつか状況が好転する日は必ずやってきます。

そして、電車のトンネルが、目的地に到達する最短経路を確保するためのものであるように、人生におけるトンネルも、後から振り返れば、そのトンネルを抜けるのが実は目標達成に向けた最短経路であるかもしれません。

だから、人生のトンネルに入った時に一番大切なことは、不安になったり、うろたえたりして前に進むことを止めないことです。落ち着いて、一歩ずつでも構わないから、前に進むことを続けている限りは、必ずいつかそのトンネルを抜ける日が来ることを信じて、あきらめずに進み続けることです。

しかし残念ながら、多くの人達は、トンネルに入ると、うろたえ、自信を失い、あるいは足がすくんで前に進むことを止めてしまいます。そして、後戻りをしたり、横に逃げ道を探したりして、結局、トンネルの先に開けている目的地にはいつまでたっても到達できず、そのうち、目的地がどこだったのかさえもわからなくなってしまいます。

そのまま前に進み続ければ、後ほんの100メートル先に出口があったかもしれないのに、最後の最後でそのラスト100メートルをあきらめてしまうのです。これは本当にもったいないことだと思います。

野球のイチロー選手は、次々と前人未到の記録を達成し続けて来ました。それはイチロー選手が、何があっても前に進むことを止めなかったからです。年齢を重ねて40代となり、標準的なプロ野球選手としてはとうに現役選手としての限界を超えている彼は、未だに前に進み続けています。2012年のシーズン途中でニューヨーク・ヤンキースに移籍した時には、下位打線でしかもレギュラーの座すら保証されないという屈辱的な扱いでした。そんな中でも、彼はまったく腐ることなく、日々黙々とトレーニングに励み、出番が来ると嬉々としてプレーし続けました。そしてふたたび、そのシーズン後半の大活躍につながったのです。

マイアミ・マーリンズに移った後も、МLB通算最多安打記録、アジア人初のメジャー3000本安打記録などを打ち立てました。イチロー選手が愚痴を言ったりヤケになったりしている姿を想像できるでしょうか。スランプだろうが屈辱的な扱いを受けようが、苦しいときにも普段と変わらず、自分を信じて地道に前に進むことをサボらない強さこそが、真のプロフェッショナリズムなのだとまさに教えられます。

今年のノーベル文学賞が、ボブ・ディランに授与されることが決まり話題になっていますが、日本人として初のノーベル文学賞を受賞した文豪川端康成の不朽の名作『雪国』の出だしは、「国境の長いトンネルを抜けると雪国であった」でした。

トンネルを抜けた先に広がる思いがけない光景や感動や情緒、それはトンネルに入っても前に進み続けてトンネルを抜けた人にしか決して味わえないのです。