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ブラックスワンには早すぎる。ナスダックも日経平均も今からが上昇本番だ=江守哲

先週末にハイテク株が急落したことで「いよいよIT関連株の暴落が始まる」との煽り系発言が聞かれます。しかし過去データを見ると、今年のナスダック指数は年末まで上昇しやすい傾向があることがわかります。(江守哲の「投資の哲人」~ヘッジファンド投資戦略のすべて

本記事は『江守哲の「投資の哲人」~ヘッジファンド投資戦略のすべて』2017年6月12日号の一部抜粋です。全文にご興味をお持ちの方はぜひこの機会に、今月分すべて無料のお試し購読をどうぞ。

プロフィール:江守 哲(えもり てつ)
エモリキャピタルマネジメント株式会社代表取締役。慶應義塾大学商学部卒業。住友商事、英国住友商事(ロンドン駐在)、外資系企業、三井物産子会社、投資顧問などを経て会社設立。「日本で最初のコモディティ・ストラテジスト」。商社・外資系企業時代は30カ国を訪問し、ビジネスを展開。投資顧問でヘッジファンド運用を行ったあと、会社設立。現在は株式・為替・コモディティにて資金運用を行う一方、メルマガを通じた投資情報・運用戦略の発信、セミナー講師、テレビ出演、各種寄稿などを行っている。

ナスダック指数急落は恐るるに足らず、日経平均2万円は通過点に

FOMCを終えると暴落?

私がよく言うのは、「ウォーレン・バフェット氏が、いちいち個別材料で持ち株を調整しますか?」という言葉です。

本当の株式投資をしているのであれば、目先の材料に振り回されてはいけません。そして、株価形成の本質である企業業績がおかしくなるような材料でなければ、無視してよいのです。

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もっと言えば、そのような状況で株価が材料で暴落した場合には、それを利用して安いところで売り手から買ってあげればよいわけです。それこそ、何かの材料で移動平均線から異常に下方乖離したときに、粛々と買っておけばよいわけです。

さて、これで市場の関心は、いよいよFOMCに移るでしょう。しかし、これも私からすれば大した材料ではないと考えています。

13・14日開催のFOMCでは、0.25%の利上げは決定的です。問題はそれ以降の利上げです。現実的にはかなり難しいでしょう。なぜなら、インフレになっていないからです。

雇用情勢は決して悪くありません。失業率も4.3%まで低下しています。過去と比較しても、歴史的低水準です。しかし、インフレになっていない以上、これ以上の利上げは正当化できません

もちろん、金融政策の正常化という名目で、利上げを継続するとの見方もあるでしょう。しかし、現状から利上げをするには、インフレの状況を確認するのが先になるのではないかと思います。

メルマガで何度も解説しているように、米国のインフレ率は原油価格に直接的な影響を受けます。CPIと原油価格の前年比を比較すると、ほとんど同じように変動しています。ちなみに、相関係数は0.79です。相当高い水準といえます。

いまの両者の関係からすると、CPIは4月の2.2%から1.5%程度に落ちていくと考えられます。14日に発表される5月のCPIは2%を割り込む可能性が高いでしょう。そうなると、FRBが追加利上げを正当化するのは難しくなります。

希望的観測ではなく常識で考える

9月以降の利上げは見送られ、一方でFRBが優先課題と考えている保有資産の圧縮を検討するでしょう。

イエレン議長が退任する来年2月までに、なんとしてでも資産の圧縮だけは開始しておきたいところでしょう。

FRB関係者が繰り返すように、資産圧縮と利上げは同時にできません

利上げで市場が混乱する可能性があるうえに、資産圧縮で万が一金利が上昇してしまうと、ダブルで市場を混乱させることになるからです。

したがって、資産圧縮の際には、いったん利上げを停止し、資産圧縮の市場への影響をまずは見極めることになるでしょう。そのうえで、資産圧縮でも金利が上昇しないことが確認できば、その時点で利上げを再開することになるでしょう。

これまで相当慎重に金融政策を実行してきたイエレン議長ですから、最後に慌てていろいろやることはないでしょう。

慎重に慎重を期して、ゆっくりと政策を進めていくスタンスが継続されるのであれば、上記のような政策になると考えるのが、きわめて常識的であると考えています。

以上の点は、先週のメルマガでも詳しく解説しましたので、もう一度確認してみてください。

いまのFOMCメンバーはほとんどがハト派です。性急な利上げで市場を混乱させるようなことはまずないと考えるが普通でしょう。

為替市場などでは、利上げ継続と予想する人も少なくありません。なぜなら、円安になってほしいからです。利上げ=ドル高=円安と説明しやすくなりますので、結論ありきでの利上げ継続予想になるわけです。

しかし、このような考えが上手くいくことはありません。市場動向の本質も見ないで、期待や希望通りに市場が動くと考えるのは虫が良すぎます。

とにかく、やはり本質を見るべきです。本質をみれば、上記のような考え方になるはずです。

ということで、米国株に対する見方は何も変わりません。アマゾンのPERは200倍とか、とんでもない数値になっているようですが、それもわかったうえでの投資です。自分が納得できる判断の上での投資であれば、それは許容されるべきでしょう。

ダウ平均株価の出遅れとナスダック指数の堅調さをみれば、いまの米国株はいわゆるIT関連・ハイテク企業の株価がけん引していることがわかるでしょう。

しかし、ここまでかなり上昇していますので、今年はこれから調整するとの声も聞かれます。

そのナスダック指数ですが、非常に興味深いデータがあります。

ナスダック指数の上昇はこれからが本番

1986年以降、ナスダック指数が年初から6月初めまでに20%以上、上昇したケースは9回あります。このケースでは、6月中旬以降、年末までの上昇率は平均で13.9%となっています。

つまり、これまで強ければ、年末までそのまま株価は上昇しやすいということです。

さらに言えば、1986年以降の20%超の上昇で、年末までに下落したのは86年と87年だけであり、残りの7回はすべてプラスとなっています。

つまり、この経験則からすると、かなり高い確度でナスダック指数は上昇基調が続くということになります。

ちなみに、20%超の上昇とならなかった年も含めた全体の平均でも7.13%の上昇となっています。

これから、ナスダック指数は本質的に年末までは上昇しやすい傾向があることがわかります。

したがって、ナスダック指数が年末までマイナスになるとすれば、これはむしろ相当の驚きとなるわけです。

このような過去データを知っておけば、目先の材料に振り回されにくくなるでしょう。

いつもこのようなデータを繰り出しているわけですが、米国ではこのようにいろんな見方をする人が、それぞれ独自の視点でデータを繰り出してきます。それらを参考にすると、非常に冷静に市場を見ることができます。

データは過去の実績でしかありません。しかし、市場がそれに縛られているという事実もあります。

やはり経験則は無視できません。このような有益なデータを利用することは、冷静かつ客観的な判断につながります。

つまり、いつも言っているように、「再現性のある投資判断」ができるようになるわけです。

Next: ハイテク株急落は恐るるに足らず、株価上昇余地は依然大きい

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