2017年は日本が没落の一途をたどるばかりであることが明らかになった年でした。国際社会における日本のプレゼンスはこの30年で低下する一方であったのに対し、中国の成長は目覚ましく、世界経済は米・欧・中の三極体制に移行しつつあります。完全なる敗北と緩やかな衰退の中で日本が今やるべきことは、将来を全く視野に入れていない「人づくり革命」でも「生産性革命」でもありません。2017~2018年の世界・日本の動きを俯瞰し、2018年のビジネスに役立つ、大前研一氏による国と企業の問題・トレンド解説をお届けします。【連載第4回】
※本連載は、大前研一氏による2017年12月末の経営セミナーをもとにした書籍『大前研一 2018年の世界~2時間でつかむ経済・政治・ビジネス、今年の論点~(大前研一ビジネスジャーナル特別号)』(2018年1月発行)を、許可を得て再編集して掲載しています。
ビジネス・ブレークスルー大学学長。マサチューセツ工科大学(MIT)大学院原子力工学科で博士号を取得。日立製作所原子力開発部技師を経て、1972年に経営コンサルティング会社マッキンゼー・アンド・カンパニー・インク入社後、本社ディレクター、日本支社長、常務会メンバー、アジア太平洋地区会長を歴任し、1994年に退社。スタンフォード大学院ビジネススクール客員教授(1997~98)。UCLA総長教授(1997~)。現在、ボンド大学客員教授、(株)ビジネス・ブレークスルー代表取締役。
なぜ中国に遅れを取った? 日本が生き残るために今やるべきこと
「人材格差」がそのまま経済格差につながってきた1年
2017年の総括を端的に言うと(図-29)、「人材格差」が経済格差につながってきた決定的な1年であったということです。
もはや日本には時価総額でトップ20に入る企業はありません。企業が今後いくらの富を生み出すかというものを現在価値に引き伸ばしたものが時価総額ですが、世界トップレベルの時価総額となれるようなところがないのです。
中国では国主導でやってきた国策企業が陰り、新しい起業家たちが起こした企業がトップに躍り出ています。
なぜ中国に差をつけられ、長期衰退に陥ったのか?
「中国は本当にそこまで進んでいるのか?」という疑問に対して見ていただきたいのが以下の数字です(図-30左)。
モバイル決済の規模が1,000兆円。これは世界のモバイル決済の約50パーセントです。日本のGDPと同程度の金額が中国のモバイル決済の規模です。
また、株式公開から10年未満の企業、すなわち新しい企業の時価総額がどのくらいになっているのかを見ると、米国が4.3兆ドル、中国が2.8兆ドル、日本は0.6兆ドルです。日本のデータにはスタートトゥデイ(ZOZOTOWN)などが含まれています。
AIに関する論文数は1位が米国、2位が中国、3位がインドで、日本は7位に落ちています。特許の出願数などはもっと落ちています。
米国への留学生の数は、中国が35万人、インドは18万人、日本は1万9,000人です。中国から35万人も米国に留学に行くというのは、ある意味恐ろしい話です。