融資戦略を組み立てる~午堂登紀雄の「フリーキャピタリスト入門」

なぜ子供を「稼ぐ子」にさせるべきなのか?

いま連載している子どもへの金銭教育は、11月ごろに書籍となって発売予定です。

そして現時点での仮タイトルが「年収1億稼ぐ子育て」となっています。

もっとも、1億というのは単にわかりやすい表現にするためで、それが5千万円でも3千万円でもよく、社会に出てとにかく人よりも稼げる大人になるよう、子どものうちに伝えておきたいことをまとめたのが本書です。

ではなぜそういう主張をするかというと、3つの理由があります。

まず、稼ぐことは「人の役に立つ人間になる」ことであり、「人から感謝を集められる人間になる」こととイコールであり、それは非常に尊いことだと私は考えるからです。

「カネカネ言うのはいやしい」という人もいるかもしれませんが、ではなぜ治安の悪いスラム街を構成するのは富裕層ではないのでしょうか。

職住足りて礼節を知るではありませんが、人や社会の役に立てなければお金が稼げず、品性も後回しになるのです。

2つ目の理由は「知能」の獲得です。

ここでいう「知能」とは、いわゆる学力というよりも、認知・記憶・予測・判断をはじめ、仮説を組み立てる力、人生設計やリスクへの備えなどを含む、人間の知的活動全般の土台となる能力のことです。 

以前も紹介しましたが、数年前にハーバード大学の行動主義経済学者が発表した論文によると、人の知能の高さは常に一定ではなく、どんなに知的な人でも、状況によってその知能が下がってしまうことがある。その大きな要因の1つが「収入が減ること」だというのです。

つまり「収入が増えれば知能が高まり、収入が減れば知能は下がる」。つまり「お金を失うと、知能も同時に失う」ということです。

たとえば収入が下がってお金が減っていくと、住宅ローンが払えるか、携帯電話やクレジットカードの支払いは大丈夫か、子供の教育費をどうするか……と、精神的に追い込まれ、お金をどうするかということだけで頭がいっぱいになります。

お金に乏しくなると、心配事が膨らみ、仕事に集中できない。それがストレスとなって心の余裕を奪い、深く慎重にじっくり考えることが面倒になる。

つまり、収入が減ってお金がなくなること自体が問題というより、お金がないことによる不安や焦りが、生活の全方位に悪影響を及ぼすことが問題なのです。

そして3つ目の理由。なぜ「お金持ち」ではなく「稼ぐ」ことにフォーカスしているのは、稼げる能力は自分に対する自信を生み、自分らしく生きることにつながるからです。

お金を貯めるだけでは安心感は得られても、自信にまではならない。なぜなら、貯金を切り崩すだけでは「いつまでもつか」が不安になるだけで、預金残高が減っていくだけの生活はむしろ恐怖だからです。

しかし仮に貯金が少なくても、今月も500万稼げる、来月も500万稼げる、来年も6,000万稼げるというほうが、逆に計画的な生活が遅れるでしょう。

それに、お金を使わない生活とは、人生を楽しめない生き方とイコールです。もちろん、お金がなくても楽しめる方法はたくさんありますが、お金を使えば使うほど、できることの幅は広がります。

一流のホテルに泊まれば、一流のサービスを知ることができる。海外旅行に行けば、日本とは違う世界に感動する。外注や代行を利用して、自分の時間を生み出すこともできる。

そうやって人生の楽しみ方を獲得することも大切だからです。

・学校では教わらない大事な知恵

「子どもにお金の話をすると、よけいお金に縛られるのではないか」「よけい金銭至上主義的な考えを持つようになるのではないか」と危惧する人もいると思います。

そのため、子どもに所有や儲けなどといったよけいなことを考えさせたくないと、お金の話は一切しないという方針の家庭もあるかもしれません。

そうやって信念やポリシーを持って育てることは賛成です。

しかしその裏側に「自分もなんとかなってきたんだから、子どももなんとかなるだろう」という発想があるとしたら、それは思考停止というか、責任放棄のようにも思います。

かつてと違い、世の中はますます「自己責任」の方向へ向かっています。

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