世界情勢は貿易摩擦に加え、イラン問題で緊張状態になりつつあります。米国がイラン政策に本腰を入れ始めており、これはあまり甘く見ないほうがよさそうです。(江守哲の「ニュースの哲人」~日本で報道されない本当の国際情勢と次のシナリオ)
本記事は『江守哲の「ニュースの哲人」~日本で報道されない本当の国際情勢と次のシナリオ』2018年8月10日号の一部抜粋です。全文にご興味をお持ちの方はぜひこの機会に、今月分すべて無料のお試し購読をどうぞ。
プロフィール:江守哲(えもり てつ)
エモリキャピタルマネジメント株式会社代表取締役。慶應義塾大学商学部卒業。住友商事、英国住友商事(ロンドン駐在)、外資系企業、三井物産子会社、投資顧問などを経て会社設立。「日本で最初のコモディティ・ストラテジスト」。商社・外資系企業時代は30カ国を訪問し、ビジネスを展開。投資顧問でヘッジファンド運用を行ったあと、会社設立。現在は株式・為替・コモディティにて資金運用を行う一方、メルマガを通じた投資情報・運用戦略の発信、セミナー講師、テレビ出演、各種寄稿などを行っている。
着々と進むイランの弱体化。原油相場の乱高下は何をもたらすのか
イラン問題を大きくするトランプの狙いとは?
国際情勢は関税問題に加え、イランの問題で緊張状態になりつつあります。米国がイラン政策に本腰を入れ始めています。これはあまり甘く見ないほうがよさそうです。
その目的な何なのかを理解すれば、そう感じるでしょう。
米国は7日に対イラン制裁の一部を再発動しました。貴金属や米ドル、鉄鋼、石炭の取引などを対象に経済制裁を発動しています。
また、イラン産原油を輸入している国に対して、11月までに輸入をゼロまで削減するよう求めています。
イラン産原油の禁輸措置の影響は見通しづらいものの、最悪の事態になれば日量150万~200万バレルのイラン産原油が市場から消える可能性があります。
そうなった場合には、原油相場は乱高下する可能性があるでしょう。
米国は原油高になってもいいと思っています。なぜなら、いまや世界最大の産油国だからです。
中には、「中間選挙をにらんで、ガソリン価格が上がるのはよくないので、いずれ政策を解除する」などとのんきなことを言っている専門家と呼ばれる人がいますが、全くの理解不足ですね。
「原油高が続く」ことを前提に動く必要がある
さて、米国によるイランへの経済制裁問題はかなり根の深い問題になりそうです。
米国は産油量の減少による経済の疲弊化・国力の弱体化を真剣に狙っており、これは結果が出るまでやり続ける可能性があります。
原油相場をいかに高値で維持するかを考えています。ここまでわかっていれば、原油高が続くと考えておいて問題ないことになります。
つまり、景気・経済・株価などの分析をする際には、これを前提に考えておく必要があるということです。日本政府はわかっているのでしょうかね。なにせ、政治家にはこのような分野の専門家がいませんからね。
イランにとって「原油輸出の妨害」は死活問題
さて、このような状況ですので、イランのザンギャネ石油相は、「OPECが加盟国による無許可の産油量調整を阻止できなかった場合、臨時総会開催が必要になるかもしれない」として、産油国をけん制しています。
OPECとロシアなどの非加盟国は、7月から原油減産措置を緩和し、日量100万バレル程度の供給を増やすことで合意しています。
ザンギャネ石油相は、「OPECの一部加盟国が産油量を調整する動きに出ている」とし、OPEC議長を務めるアラブ首長国連邦(UAE)のマズルーイ・エネルギー相に苦情の書簡を送付したとされています。
その中で、「共同閣僚監視委員会(JMMC)は産油国間で増産枠の分配をさせるべきではない」とし、「JMMCが義務を果たさない場合や、見解がOPEC会合の決定と異なっている場合、OPEC臨時総会で問題を提起すべきだ」としています。
イランは重要な収益源である原油供給に関して、かなり神経質になっています。
とにかく、イランは原油輸出ができなくなると、国家収入が絶たれることになります。そうなれば、国力の低下に直結します。
米国は6カ国核合意から離脱し、独自路線を歩み始めています。これはTPPなどでも同じです。
イランの疲弊化は本気です。特に核保有国に対する対応は今後さらに厳しくなっていくでしょう。