「勉強させていただきます」がダメな理由 中高年のキラキラアピール

働き方改革がかけ声倒れに終わるのか、本当に実行できるのか。企業からは経営を支える幹部人材の不足の声が上がる一方、大手銀行のリストラが始まるなど、政府のかけ声と世情にはずいぶん開きがあるように思います。中高年の転職において心しなければならないコミュニケーションとは何でしょう。それは過去の栄光ではなく・・・



1.中高年の転職による給与実態は、やはり・・・

転職者の給与がどう変化したか、内閣府が発表した白書「日本経済2017-2018-成長力強化に向けた課題と展望-」(平成30年1月18日)では、年齢別の転職による賃金変化データが出ています。

残念ながらというかやっぱりというか、若者は転職で給与が増えた人が多い一方、40代以上では、給与は下がっているとのこと。20代、30代は5%未満の微増の一方、40代は数%減、50代は5%減となっています。(同白書より)

ちなみにこの白書では転職も立場ごとに分かれており、ここで触れたデータは「一般正労働者」から「一般労働者」に転職したケースです。逆にパートから一般労働者に転職したケースでは、40代も50代も10%程度給与はアップとなります。

パートと正社員は給与バンドが違うので、給与が上がるのは、ある意味当然な一方で、正社員での転職で給与が下がるというのは厳しい現実ですね。人事コンサルタントとして、ヘッドハンティングや採用支援を多数やってきましたが、2000年代には転職で給与が2割3割どころか、ヘッドハントで50%増などもありました。



2.中高年の転職で求められるもの

さまざまな働き方やダイバーシティ実現には、転職による仕事・キャリアの流動性が欠かせないにもかかわらず、現実は厳しいことがわかります。日本には岩盤のような解雇規制があり、公務員と大企業の正社員はその恩典を享受できます。

しかしその結果、「一度雇ったら解雇できないリスク」を企業に背負わせることになり、結果として正社員での採用をやめ、その分を必要な時にオンデマンドで労働力となる派遣社員など非正規労働者で賄うという方式が今の労働環境です。

判例としての解雇規制は整理解雇4要件、「人員削減の必要性」「解雇回避努力」「人員選定の合理性」「手続の相当性」を定め、事実上つぶれない限り解雇は無理になっています。ガッチリ正社員としての既得権を守った結果、新たに正社員として雇われるには大きなハードルが維持されているのです。

転職をしようとする中高年は、当然この高いハードルを超えなければなりません。



3.キラキラネーム、キラキラアピール

子供に読めないような当て字を付けるキラキラネームまたはドキュンネームと呼ばれる命名が批判されます。黄熊(ぷう)、泡姫(ありえる)のタグイ。当然就職などの選考では、こうした名付をする親の子という目で見られる運命を背負うことになります。ちなみに女子学生で名前が「子」で終わるというだけで真面目そうな、しっかりもののイメージが持てるという人事の人によく会います。昭和テイストの名前の方、決して損してませんよ。

名付けだけでなく、キラキラは採用にも浸食してきています。自己アピールなどが、ネットのお手本丸写しだったり、「志望理由は社会に役立つため」のタグイの、中身ゼロだったりするキラキラアピールも多いのです。「社会に役立つため」が悪いのではなく、具体的に「自分」がどう、その職務を通じて役立てるのかなどは一切書かれていない、きわめて表層的なキレイごと「しか」書いていないのがキラキラアピールです。

新卒学生ならまだしも、中途入社で選考されようという人が、中身のないアピールしかできないようで可能性などあるでしょうか?冒頭に書いたように、中高年の転職は、これだけ人手不足といわれても楽なものではありません。またその最大の阻害要因となる解雇規制には誰も恐くて手が出せません。つまり当面状況が変わるとは考えられないのです。



4.求められる「中身」とは

そんな中で転職しようと考えている方、その勇気は単に蛮勇で終わらせずに、厳しい環境をしっかり見据えて、中身のあるアピールを作りましょう。決してキラキラした絵空事の言葉など、誰も求めていません。ご自身の価値をきっちりと伝えるためには、これまでの経験と、その経験で培ったビジネスセンスが、会社の成長につながることを具体的に述べる必要があります。

「経験がある」だけで終わらず、どんな経験がどのように成果と結び付いたのか、その構造やプロセス、与えられた環境の活かし方、あらたな環境や市場の作り方といった、新たな職場でも応用につながる情報が求められます。過去の栄光談では決してありません。

面接訓練に来られる方の中には、奥ゆかしく「勉強させていただきたく志望した」という人もいます。しかし未経験者ではなく、経験者募集でこれは通用しません。自分が学ぶ以上に、その応募先に貢献できるからこそ採用されます。

ぜひ、今一度アピールを見直し、中身がしっかり伝わる説得力あるものにしていきましょう。