2018年度ブランドランキング~コクヨ、グーグル、キューピーに学ぶ 売れるブランドの創り方=理央周

特集【コクヨ、グーグル、キューピーに学ぶ売れるブランドの創り方】

日経リサーチがまとめた企業ブランドの、2018年度版の調査結果が出ていた。対象は大きく分けて、消費者とビジネス・パーソン。

カテゴリー別の評価結果として、総合的ランキング、消費者評価の調査結果、ビジネスパーソンの評価の結果が、それぞれ出ていた中で、興味深いのは、企業ブランドに関する評価の順位が、消費者とビジネス・パーソンの間で、ブランドによって違っている点だ。

これをブランドマネジメントの観点で考えてみる。

総合評価のトップは7年ぶりにグーグル

まずは、総合評価の結果から。

日経新聞9月19日号によると、順位は以下のようになる。

順位 ブランド名

1(3) グーグル(Google)

2(5) ヤマト運輸

3(2) ソニー

3(1) 日本マイクロソフト

5(7) パナソニック

6(3) アップル ジャパン

7(8) トヨタ自動車

8(17) コクヨ

9(6) TOTO

10(11)キユーピー

10(11)アマゾン

(カッコ内は昨年順位)

グーグルが7年ぶりの首位になり、昨年1位だったマイクロソフトが3位に後退。2位だったソニーも3位に後退、アップルも昨年の3位から6位に後退しているが、昨年5位だったヤマト運輸が2位に浮上、パナソニックも7位から5位に上がっている。

この辺りの企業は、とはいうもののそれほどの大きな変動はなく、そもそも素晴らしいブランドをすでに構築しているし、それを私たちも知っているので、意外性もなく、ランクインして当たり前と感じる。

グーグルの高評価は、特にビジネス・パーソンから、独自性が高い、開発しているAIや自動運転の取り組み、特許取得などの競争力の評価、が高かったとのことだ。

一方で、マイクロソフトの方は、昨年同様ビジネスパーソンからの評価は高いが、消費者からの評価が16位から26位に落ちたのが、総合順位が落ちている要因とのことだ。

消費者評価のトップはキューピー

一方で、同日の日経MJの記事に掲載されている、2018年度企業ブランド調査の消費者評価ランキングは、以下のようになっている。

順位 ブランド名

1(1) キユーピー

2(3) 味の素

3(4) ヤマト運輸

4(5) ソニー

5(20) カルビー

6(3) アップル ジャパン

7(6) グーグル

7(11) パナソニック

9(2) TOTO

9(27) 森永製菓

(カッコ内は昨年順位)

消費者評価ランキングは、もちろん一般消費財、日用消費財の方が、消費者の目に触れる頻度も多いため、高評価につながることが多いのもわかるが、ここで目立つのが、1位のキューピーだ。

昨年も1位だったとのこと、その評価理由としては、愛着があり、プレミアム感もある、ということらしい。

記事によれば、この理由を掘り下げていくと、食卓に馴染みが深く、幅広い料理に使えること、手軽に使えて、価格の変動も少ない、いわば必需品としての評価が高いことが、ランキングに反映されているのであろう。

ブランドをマネジメントしていく上で重要な点は、消費者のブランドへの忠誠心、ロイヤルティ(Loyalty)の向上を目標にするということ。かっこいいロゴを作ることや、イメージを好転させていくことは、手段であって、目的ではないのだ。

忠誠心とは、数と質、すなわち、頻度多く買ってもらえるリピーターを増やすことと、心理的、感情的にもブランドに高い好感度を持ってもらうことの、2側面が必要だ。キューピーは、この2つの側面を兼ね備えているための高評価だ。

キューピーが総合評価でも、10位に入っているのは、この消費者評価が高いからだと言える。

また、消費者のランキングで3位の味の素に関しては、総合評価のランキングでも、12位に入っている。同じように、日常に入り込んでいるブランドであること、使用頻度が高いことがあるが、キューピーは味の素を上回るブランド評価を得ている点が、特筆すべきことだ。

他にも、グーグルは消費者評価5位、総合1位、ソニーは、同5位と3位、ヤマト運輸3位と2位、パナソニックが7位と5位と、消費者評価も総合ランクも高い、すなわち、消費者にもイメージを高評価され、ビジネスパーソンにも新規性などの点で評価されているブランドが、いくつかある点に学べることは多いだろう。

順位を上げたコクヨを解剖してみる

コクヨは、総合評価において、昨年の17位から8位へと大きくジャンプした。その内訳は、消費者からは55位ではあるものの、ビジネスパーソンからの評価のランクは3位と、高く評価されている。

その理由として、「独自性」と他人に勧めたいという「推奨意向」が高かったとのことだ。

コクヨは現在文具事業で苦戦はしているものの、キャンパスノートを進化させたりする、ステーショナリーのみでなく、傘下のカウネットの利便性と独自性の高さなどが、実際に製品を仕事をする場で使う、ビジネス・パーソンに評価されたと言える。

その意味では、キューピーもコクヨも、ターゲット層は異なるとはいえ、ブランドが持つべき4つの資産である、歴史による認知度と想起率の高さ、知覚(見た目の)価値、ブランド関連性(アソシエーション、ユーザーとブランドの距離感)、そしてロイヤルティ(忠誠心)を、頻度高く、また独自化をしながら構築している成果だといえそうだ。独自性、という意味においても、グーグルの高評価は、消費者からも、ビジネスパーソンからも高いのが特筆すべき点だ。

グーグルの事業領域の中心は「検索」だ。この強大な強みを生かしつつ、消費者向けのサービスは作られている。

さらに、その真価は独自の技術開発と先見性にある。アマゾンに遅れをとったとはいえ、わたしの私見だが、グーグルホームはかなり使いやすく、将来の AIの主導権を握る企業に、一番近いところにいるのはグーグルだと言っても過言ではない。

さらに、自動運転の仕組み化や特許の取得内容を含めて、一歩先を行っているという印象が強い。

ブランド、というものは、数値で表されるものでもなく、目に見えるものだけでもない。消費者の心の中で構築されていくものだ。

その意味において、確実な実績も重要だが、将来性なども大きく加味される、ということが、このグーグルの順位から言えることだ。

■目次

… 1. 特集「コクヨ、グーグル、キューピーに学ぶ売れるブランドの創り方」

… 2. コラム「水平思考を生むための仕組み」

… 3. 仕事術「野球のトークはNG、天気はOKは本当か?「根拠」が大事」

… 4. おすすめビジネス書「AI 2045」

… 5. 著作・イベントのお知らせ

… 6. 編集後記



キューピー、コクヨ、グーグルから何を学ぶべきか

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