業界の闇を暴露!ぶっ通しで2日間働くと残業代はどうなる?

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みなさんは働き方改革の一環として近年さまざまな企業で導入が進んでいる『勤務間インターバル』という制度をご存知でしょうか?

この制度は、前日の終業時刻から翌日の始業時刻までの間に、一定の時間を確保するというものです。

例えば、定時が9時~18時の会社で深夜0時まで残業した場合、翌日は始業時刻を遅らせて11時に出勤すればよいというものです。

 

勤務間インターバルとは?
「勤務間インターバル」という言葉をご存知でしょうか。「勤務間インターバル」は、勤務終了後、一定時間以上の「休息時間」を設けることで、働く方の生活時間や睡眠時間を確保するものです。2018年6月29日に成立した「働き方改革関連法」に基づき「労働時間等設定改善法」が改正され、前日の終業時刻から翌日の始業時刻の間に一定時間の休息を確保することが事業主の努力義務として規定されました(2019年4月1日施行)。
引用:厚生労働省

勤務間インターバルは、労働者の健康を保持するといった面では素晴らしいシステムだと思います。

しかし、どうしても守らなくてはいけない期日が設定されている職業に就いている場合、勤務間インターバルの適用が難しい場合もあるのでは? と感じることもあります。

 

雇われライターである私が実際に経験した話

ライターという仕事をしている以上、原稿の締め切りから逃れることはできないという辛い事実があります。

今の仕事では、社内記事は社内ライターが書くという体制のため、期日に追われることはほとんどありませんが、以前勤めていた会社では、クライアントからの依頼を受けてゲーム関連記事の執筆を行っていました。

 

そんな以前の職場での、ある日のできごと…

 

1日目:21:00

編集長「とあるゲームのレビュー記事の依頼がきたんだけど、明後日の正午までに入稿いける?」

私「ええっ!! 今晩そのゲームを夜通しプレイして、徹夜明けで明日中には書き終えなければいけないってことですよね!?」

編集長「まぁ、先方からの赤字(※)入ることを考えたら明日の午前中には初稿が欲しいんだけど…。頼むよ、君しかいなくてさ(笑)」

 

(※)赤字
言葉づかい、改行、漢字のひらくor閉じる、先方の要望に沿っているか、先方へのネガティブイメージを想起させる表現がないか?
などの修正希望点に赤ペンでチェックが入り、先方より原稿が返却されてきます。

 

などと無茶ぶりをかましてくるわけですよ。

なぜ私しかアテがなかったのかと言うと、他のライターさん達は既婚で家族がいたり、学生のアルバイトさんだったりしたため、こき使えるのが私だけだったのです。

編集長の期待に応えたかったうら若い私は、その案件を担当することに…。

 

2日目:0:00~

その日は会社に泊まり、朝10時までぶっ通しでそのゲームをプレイ

「仕事とはいえ、ただゲームで遊んでるだけでしょ?」

と思う方も多いかもしれませんが、記事に使用するスクリーンショットや、メモ書きを残しながらゲームをするため、実は結構労力使うんです。

(ちなみになんとかクリアできました…)

そのまま記事執筆に入り、15時頃になんとか執筆を終え、先方へ入稿連絡…。

眠気でフラフラになりつつも、解放感からか晴ればれとした気持ちで他の業務に勤しんでいました。

ところが…

 

2日目:20:00

編集長「さっきの記事だけど、先方からいろいろ表現的に直してほしいところがあるみたいだから修正お願い!」

…と、さっさと家に帰りたかった私に、容赦ないセリフが飛んできます。

 

「明日の正午マストなのに今からかよっ!しかも原稿真っ赤(※)じゃん! 私に寝るなと!?

てか先方も確認するの遅いわ! 事前にある程度要望出してくれればよかったのに!」

 

(※)原稿真っ赤
赤い字で修正指示が大量に書き込まれている状態。
つまり修正が大変ということ。

 

などと1人で愚痴をたれながらも、ここまできて投げ出すのは嫌だったので、原稿の内容を半分以上ガラッと変えて書きなおし…。

その後は先方の担当さんと直接やりとりで修正&チェックの応酬が続きます。

結局深夜までやりとりは続き…。

 

3日目:1:45

先方の担当さん(チャットにて)

「こちらでOKです! ご対応ありがとうございました。」

 

おわっ…た…。

 

先方の担当さんにも夜遅くまでご対応いただきました。大変だっただろうなぁ…。

 

※ちなみに本件以降、定時を過ぎてからの依頼は全て断ることにしました(笑)

 

私の体験では勤務間インターバルは0時間だった! 法的問題は?

朝10時に出社してから、翌日の深夜25:45まで、ほぼぶっ通しでの約40時間勤務となった私。

いろいろと法的に気になる点もあったので、虎ノ門法律経済事務所の斎藤先生に聞いてみました。

 

Q.勤務間インターバルが一切なく、翌日の業務にそのまま入るのは法的に問題ないのでしょうか?

 

A.問題があります。

法定労働時間は、労働基準法が定める1週間だけではなくて1日の最長労働時間を定めています。
実は、使用者が1週間について40時間を超過した形で、各日については1日について8時間を超過することはできないのです(労働基準法32条1項・2項)。
ただ、例外があって、商業、映画、演劇業(映画製作は含まれません)、保健衛生業、接客イ娯楽業であって、常時10人未満の労働者を使用する場合は、特例があります。
それでも週に44時間1日8時間制が定められているのです(労働基準法40条1項、規25条の2第1項)。

もちろん、これを超えることは各種業態ではいくらでもあるとは思います。この場合、割増賃金を支払う必要がありますし、割増賃金を支払わない使用者は、6か月以下の懲役または30万円以下の罰金が定められているので(労働基準法119条1号)、サンクションも用意されているのです。

 

ぶっ通しで翌日も業務を行った場合、残業代はどうなる?

…という事は、一度も退社していないのだから、翌日の業務にはまるまる残業手当がつくのでは?

 

Q.前日から一度も退社していないのであれば、翌日の業務に対してまるまる残業手当が付与されるということはあり得ますでしょうか?

 

A.割増賃金を請求できるでしょう。

どんな小さく見積もっても、さきほどもご説明させてもらいました、割増賃金を請求できるでしょう。

割増賃金額は「通常の労働時間または労働日の賃金」に労働時間及び割増率を乗じることで計算することになります。通常の労働時間または労働日の賃金とは、労働契約に基づく1時間あたりの単価(=時間単価といいます)に対して割増賃金の支払い対象となる労働時間数を乗じることで計算します。

時間単価 × 労働時間数 × 割増率

こちらが一応の計算式です。

 

 

まとめ

営業時間の長い飲食店や、システム開発現場など、多くの場面で起こり得る状況かと思います。こういった現場では、交代制などを用いてうまく負荷分散してほしいものですよね。

ライターの場合は途中で書く人を変えるわけにもいかないし、どうすればよいものか…。

 

働き方改革法案によって、さまざまな変革が予想される今日。

将来、日本もオランダのように週休3日の残業なし(オランダでは法律で禁止されている)にならないかなぁ…。

なんてことを思いながら、今日も会社で記事を書いている私でした。

 

*取材協力弁護士: 虎ノ門法律経済事務所 池袋支店 齋藤健博弁護士(弁護士登録以降、某大手弁護士検索サイトで1位を獲得。LINEでも連絡がとれる、超迅速弁護士としてさまざまな相談に対応。特に離婚・男女問題には解決に定評。今日も多くの依頼者の相談に乗っている。弁護士業務とは別の顔として、慶應義塾大学において助教も勤める。)

 

*執筆・取材:アシロ シェア法編集部(シェア法を盛り上げようと日々奮闘中。執筆いただける弁護士先生募集中です。)

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