名古屋流ビジネスが成功する秘訣は「売ろうとしない」こと

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世界のトヨタをはじめ、カゴメやコメダ珈琲など、名古屋系企業には「堅実」というイメージがあります。メルマガ『理央 周 の 売れる仕組み創造ラボ 【Marketing Report】』の著者で、名古屋市出身のMBAホルダー・理央周さんによると、名古屋流ビジネスの特徴は、一度でも常連となった客を徹底的に大切にするところにあると指摘。ところ構わずポスティングや折り込みなどでチラシをまくのは、かえって非効率だと、名古屋流商法の真髄を語っています。

蓬莱軒に学ぶ名古屋流商法の強さ

東京や大阪の経営者に、「名古屋のビジネスは堅調ですよね。どこにその秘密があるのですか?」と聞かれることが多くある。トヨタ自動車や名古屋鉄道グループなど、伝統的な大企業だけでなく、地道に成長を続ける、また伝統を守っている中小企業も多いため、このような質問をいただくのであろう。

名古屋市熱田区にある、ひつまぶしの老舗あつた蓬莱軒」さん。明治6年創業140年の老舗の5代目女将から学ばせていただいたのは、「当たり前のことを当たり前にやってきただけ」「いい人材に恵まれた。人は宝です」という素晴らしいひとこと。

顧客サービスについて話が及ぶと、一番に「美味しいものを食べていただくこと」そして、「笑顔で帰っていただくこと」とのこと。名古屋で蓬莱軒と言えば、誰でも知っているのはもちろん、ひつまぶしの代名詞。広告などもほとんど打たずクチコミで広まって、ここまできているのは「美味しいから」にほかならない。

心に響いた言葉は「美味しかったら必ず人から人に伝わります」という一言。飲食店に行くのは「大事な人と美味しいものを楽しく食べに行くのだ」ということを再度思い起こさせてくれた。ひつまぶしは世の中に多いけれど、やはり蓬莱軒さんを一番に思いおこすのは、「この味」だからである。流行っている有名店になるには理由がある、ということを学ばせていただくことができた。

売ろうとするから売れない〜あつた蓬莱軒に学ぶ顧客価値の創造

私の自宅には、毎日多くの「チラシ」がポスティングされる。ポストがいっぱいになってしまう日もあるくらいだ。

「土地をお売りになりませんか?」

「利回りのいい金融商品がありますよ」

しかし、私は土地を売るつもりもリスクの高い金融商品を買うつもりも「今は」ない。なので、大半のチラシはリサイクルボックスに直行である。

しかし、同じように毎日届く新聞や、友人からの手紙、銀行の残高証明書などは、当たり前のようにリビングに持ち帰る。

この違いは何か? それは、中身が私にとって有益かどうか」に尽きる。ヒトは8割のモノは要らないのだ。だから「売ろうとする情報は不要である、と考えるべきである。

蓬莱軒から学べることをまとめると、

  • 独自の味を守り続けることこそが、お客様が感じる最大の価値になる
  • 美味しいものを提供という自社の「事業コンセプト」から外れないこと
  • お客様に毎日相対している従業員こそ宝である

これらが相まって、一番に思い起こすことができる店になり、ひいては、事業の目的である「利益」を上げられるのだ。

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