今回は、ソフトバンク・ビジョン・ファンドが、普通のベンチャーキャピタルファンドと比べてどのような点において違うのかについて書いてみたいと思います。(『決算が読めるようになるノート』シバタナオキ)
※本記事は有料メルマガ『決算が読めるようになるノート』2018年12月4日号の抜粋です。ご興味をお持ちの方はぜひこの機会にバックナンバー含め今月分すべて無料のお試し購読をどうぞ。
AppGrooves / SearchMan共同創業者。東京大学大学院工学系研究科技術経営戦略学専攻 博士課程修了(工学博士)。元・楽天株式会社執行役員(当時最年少)、元・東京大学工学系研究科助教、元・スタンフォード大学客員研究員。
ソフトバンク・ビジョン・ファンドが異次元である理由
2つのファンドを組み合わせた、普通と違うベンチャーキャピタル
今日の記事では、ソフトバンク・ビジョン・ファンドが、普通のベンチャーキャピタルファンドと比べてどのように違うか、というのを書いてみたいと思います。
まずは決算の概要を、簡単に見てみたいと思います。
このスライドが端的に表す通り、ソフトバンク・ビジョン・ファンド事業の営業利益が大きく伸び、他の事業から生み出される営業利益とほぼ同じレベルで、営業利益が出るまでになっています。
現時点で67社により投資が行われており、世界中のユニコーン企業に最も多く投資しているファンドが、ソフトバンク・ビジョン・ファンドであると言えるのではないでしょうか。
ソフトバンク・ビジョン・ファンドの仕組み
ソフトバンク・ビジョン・ファンドの仕組みを簡単におさらいしておきましょう。
ソフトバンク・ビジョン・ファンドの仕組みは、投資家向けの決算説明会資料に詳しく書いてありますので、ファンドビジネスに興味がある方は、ぜひこちらを一読することを強くお勧めします。
ソフトバンク 2019年3⽉期 第2四半期決算 投資家向け説明会
ソフトバンク・ビジョン・ファンドと呼ばれるものには、現時点で2つのファンドが存在します。
本体のソフトバンク・ビジョン・ファンドと、もう一つ、デルタファンドと呼ばれるものも存在しており、合計約$97.7B(約9兆7,700億円)という、非常に巨大なファンドサイズになっています。
このスライドにある通り、投資期間は原則として2017年から5年間となっており、ファンドそのものは12年間継続することになっている、という点を覚えておきましょう。
ファンドへの出資コミットメントが$97.7B(約9兆7,700億円)とあるわけですが、そのうちすでに投資が行われたのは$29.9B(約2兆9,900億円)となります。従って、2つのファンドを合わせると、現時点でまだ$66.3B(約6兆6,300億円)分の、投資余力が残っていることになります。
ベンチャーキャピタルにおけるファンドビジネスの一般的な流れは、出資コミットメントの全額をファンドに預けるのではなく、ファンドが投資するタイミングでキャピタルコール(※)が行われ、LPからファンドに資金が送金され、ファンドから投資先のスタートアップに資金が入金される、というものです。
※「キャピタルコール」というのは、「この会社に投資をするので、以前コミットした金額のうち●円分を振り込んで下さい」という依頼をファンドからLP(ファンドの出資者)へ対して行うことです。
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