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利回り銘柄は配当重視。商社株はアベノミクス相場でどのように株価が変動したのか=若林利明

利回り銘柄を探すにあたって、個々に銘柄をピックアップすることは可能です。今回はその代表として、5大総合商社株のアベノミクス相場の動きを確認してみます。(『資産運用のブティック街』若林利明)

筆者プロフィール:若林利明
外資系機関投資家を中心に日本株のファンドマネージャーを歴任。現在は創価女子短期大学非常勤講師、NPO法人日本個人投資家協会協議会委員。世界の株式市場における東京市場の位置づけ、そこで大きな影響力を行使する外国人投資家の投資動向に精通する。著書:「資産運用のセンスのみがき方」(近代セールス社)など。

※本記事は有料メルマガ『資産運用のブティック街』2019年1月24日号を一部抜粋・再構成したものです。興味を持たれた方は、ぜひこの機会にバックナンバー含め今月すべて無料のお試し購読をどうぞ。

5大総合商社の株価推移と日経平均の動きを比較

利回り銘柄の軌跡…5代総合商社と市場の動きの連動を探る

利回り銘柄として、個々の銘柄アプローチにより浮上してくる銘柄はいくつかありますが、業種として捉えるとその代表業種は、薬品と総合商社です。ここでは総合商社株を例に取りあげます。薬品業界と比べると、いわゆるビックネームとして経済社会に浸透しており、安心投資が利回り投資家にとっては重要であることを考慮すると、より身近な業界と思われます。ここでは5大総合商社の株価推移と市場指数として日経平均の動きを比較しました。

2012年12月末の価格を1とし、その後3か月ごとの月末値の変化をプロット、最終は2018年の大引け最終値です。この6年間、日経平均とほぼ同じ動きを示しているのが伊藤忠、少し遅れたのが三菱商事です。

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住友商事、三井物産、丸紅は明らかに劣位にあります。2013年から2015年の年央まで続いたアベノミクス相場の第一段階は、買いの主役である外国人投資家による成長イメージの強い国際優良株中心に展開した相場です。日経平均はこうした外国人投資家好みの銘柄の動きが大いに反映されますので、総合商社株がやや流れの外に置かれた感もあります。

業種内比較のポイント…株価形成要因の吟味と経営者の意識

総合商社の場合も一般的株価形成要因としての一株当たりの利益(EPS)、一株当たりの純資産価値(BPS)、株価利回りの3つの要素のアプローチが必要ですが、この3要素の適用に多少のアクセントをつける必要があるようです。

そこで、現状の横並び比較した表を作成しました。株価は2018年12月末の大引け値です(BPSは2018年3月、EPSは2019年3月期のコンセンサス予想、利回りはそれらを前提に計算したものです)。

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この5社のEPSの水準と株価の位置は概ね納得できるような状況ですが、過去6年間の株価の動きに関しては、このEPSの各期の実績とそれを原資とする配当実績の推移をみるとより立体的に解釈ができるようです。そこで5社の過去6年間の配当実績と今期予想を一覧表にしてみました。

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第1の注目点は配当変動です。現状維持(据え置き)、あるいは増配の動きが持続して見られるのは住友商事と伊藤忠商事です。残りの3社は一時的に減配となる時期を経ております。

第2の注目点は三菱商事の2016年からの増配実績です。これらの認識をもって株価の軌跡を見ると大変興味ある推論が見て取れるようです。株価の動きとして6年間では伊藤忠がNO.1の実績、途中まで日経平均の動きに出遅れていた三菱商事が大幅増配を2017年以降継続することにより急速に上昇、伊藤忠との差を縮める動きとなっております。通常、増配は収益の裏付けがなければ意味がありませんが、一方で、一時的な利益の落ち込みがあっても配当維持があれば、それは株主還元への意識の高さということになります。

伊藤忠の株価にはそれがあったことになります。また、三菱商事の近年の株価堅調ぶりには驚きますが、これは増配のペースが好感されていると思われます。この動きに自信を持ったのか三菱商事の経営幹部による配当に関する積極的な発言がみられます。無論、背景には先行見通しの自信の表れと思われますが、同時に前段で触れたM&Aに対する意識、株式の等価交換といったものがあるのかもしれません。

収益力によって5大商社の株価の位置は異なりますが、相応の配当を実施する中、直近、利回りで見ると大きな差がなくなっているのが現状です。三菱商事の増配と株価の動きを横目で見ているようでもあります。いずれにせよ、投資家にとって利回り株としての商社株の魅力を増大させることに違いありません。

【※ご注意】
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資産運用のブティック街』(2019年1月24日号)より一部抜粋
※太字はMONEY VOICE編集部による

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