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将来的な株価上昇が危ぶまれるいま、日銀の出口戦略が抱えるリスク資産の未来は…?=山崎和邦

デフレ脱却の使命を帯びた黒田総裁が、リスクを承知のうえで敢行した金融政策。株価が下落している今、今後の動向にますます注目を集める、その対策とはなにか。(山崎和邦)

※本記事は、有料メルマガ『山崎和邦 週報『投機の流儀』(罫線・資料付)*相場を読み解く2019年1月20日号の一部抜粋です。最新の1月分の定期購読はこちらからどうぞ。

日銀の債務超過・上場廃止の恐れと黒田総裁の帯びる悲劇性

国民の強い不安、日銀が試される局面

この件については「今は誰も言っていないが」と述べながら、筆者が1年前から何度か本稿で述べてきた。ところで、1月16日(水)の日本経済新聞のコラム「大機小機」でまったく同じことが述べられている。以下引用する。

「株価下落によってバランスシートが最も傷つく日本の銀行は、日銀だ。日銀が保有するETFは昨年末時点の簿価で23.5兆円(筆者は既報で22兆円超と述べたと思うが、23.5兆円に修正する)。自己資本が8.4兆円(筆者が既報で8兆円と述べたが8.4兆円に訂正する)。だから、極めて高いリスク量である」。(以上、原文通り掲載)。

「時価が簿価を平均で4割弱下回ると日銀は債務超過に陥ってしまう」。(それでも日銀は民間銀行と違って破綻させることはない)。

「だが、通貨の発行を担う日銀が債務超過に陥れば、通貨価値の安定が損なわれるとの不安が国民の間に広がりかねない」。

政府は日銀に公的資金を投じて増資を図るだろう(★筆者註)」。

(★筆者註):「失われた13年」(90年~03年)において金融庁は銀行の破綻を防ぐために公的資金を世論に逆らって強制注入し、最後の2.2兆円がりそな銀行に注入された、あの時の世論の騒ぎを日銀に対してやろうとするのだ。その原資はもちろん税金である。

それによると、「失われた13年」の間に起こった国民の強い不安が日銀に対して試される。しかし、それを強行せねば債務超過になれば上場廃止もあり得る。この時に「通貨の番人」である中央銀行が債務超過で上場廃止となれば、国民の不安と海外からの見方はどんなものだろうか。

これはデフレ脱却の使命を帯びた黒田総裁がリスクを承知のうえで、「いつ何時でも」「躊躇なく」「あらゆる手段を使って」「兵力の小出しをせずに一挙に投入する」と連発して敢行した金融政策の結果である。

当時(アベノミクス相場の青春期相場のあと)米フォーブス誌が「世界に一番影響力を与える男」を掲載したところ、1番がプーチンで、4番が黒田総裁だった。80円そこそこで低迷していたドル円相場は、一気に125円を目指した。アベノミス始動期に8,665円だった日経平均は、一挙に8割を半年で上昇した。この時、黒田総裁は「英雄」だったのだ。

Next: 2020年に懸念される米景気後退に向け、日銀が抱える最大の問題とは

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