トランプ大統領の関税とアメリカの政策転換~武田邦彦集中講座 今の話題を深く考える(3)

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◆自国主義のトランプ大統領を批判する日本のメディアや評論家たち

昔から「貿易」、つまり遠い異国のものを船で運んでくると高い値段で売れて膨大な富を得ることができました。だから荒くれ男どもが小さい帆船に乗り込んで、一獲千金を夢見て世界の海に漕ぎ出したのです。

それは現在でもほぼ同じで、A国で100円でできるものをB国で200円で売ることができる例などはいくらでもある。「標準的な収益」というのは8%、つまり100円で8円だから、200円で売れるということは貿易というのがいかにうまい商売であることがわかる。

また、それはB国の人にとっては半分の値段で買えることを意味するし、A国の製造業の人は売れる量が増えるので、良いばかりである。だから貿易は次第に自由貿易になり、関税など貿易の障壁となるものは少しずつ減ってきた。「グローバリゼーション」である。

ところが、B国で生産していた人はA国からの輸入品で失業するし、グローバル化した強い企業の一人勝ちになってしまう傾向がある。そこで、たとえば日本からアメリカに輸出する自動車の関税は2.5%なのに、アメリカから日本に輸入するコメは778%の関税がかかっていた。これでは不平等だ。

そこで、「アメリカ国内の雇用を守ろう」とトランプ大統領が言い出した。もともとトランプ大統領は自国主義でもあるし、よく言われるアメリカの巨大赤字(貿易赤字と政府の赤字)を減らす目的、それに議会選挙が近づいている(今年の11月6日、下院と上院、州知事選)ことがあって、その政治的な思惑もある。

これに対して、日本のメディアや経済評論家などは一斉にトランプ大統領を批判している。

その内容は、主に

1)保護貿易から自由貿易の流れと逆行する。

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