「パナソニックのタックスヘイブン戦略」「日本はオワコン‥企業も“少子高齢化”が進む」『大村大次郎の本音で役に立つ税金情報』

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こんにちは!

大村大次郎です!

シルバーウィーク、いかがお過ごしですか?私は先ほどまで車で少し遠出をしてきました。車に乗るときいつも「カーナビって偉いなあ」と思います。カーナビの言うことを無視して、独自のルートを取ったりしても、絶対に文句も言わずに次のルートを探し出してくれます。何度、無視してもヘソを曲げるようなことはありません。何度も何度も無視していると、今度こそカーナビが怒って何も言わなくなるんじゃないかなどと、心配になることがあります。でも、そういうことは絶対にないのです。おっと、長々とバカ話をしてしまいましたね。

では本題に入りますね。今日は「パナソニックのタックスヘイブン戦略」と「日本はオワコン‥企業も“少子高齢化”が進む」の2本立てです。

●パナソニックのタックスヘイブン戦略

最近、非常に興味深い課税漏れ事件が報じられました。まずは以下の朝日新聞デジタルの記事をご覧ください。

パナソニック、421億円申告漏れ 大阪国税局指摘

パナソニックは11日、大阪国税局の税務調査で約421億円の申告漏れを指摘されたと発表した。同社が保有する北米子会社の株式をオランダの子会社に売却した価格が、不当に安かったと認定されたという。重加算税を含めて約60億円を追徴課税される可能性があるといい、同社は不服申し立てをする方針だ。

パナソニックは2017年3月、北米事業を統括する子会社「パナソニック ノースアメリカ」の全株式をオランダの子会社に約7371億円で売却した。パナソニックによると、大阪国税局は時価での評価額は約7783億円だとし、差額の約412億円が寄付金で課税対象になると認定した。ほかにも帳簿に資産の記入漏れがあるなど、約9億円分の申告漏れを指摘したという。

一方、パナソニックは11日に記者会見を開き、担当者が「第三者機関に依頼して算出した客観的な評価に基づいている」と反論した。不服申し立てをする方針の一方、国内の会計基準に基づき、19年3月期の単体決算には約60億円分の法人税などを計上する予定という。(岩沢志気) 

朝日新聞デジタル9月11日配信

~新聞記事ここまで~

著者による解説

この課税漏れというのは、ざっくり言えば、パナソニック本社がアメリカ子会社の株をオランダの子会社に売ったときに、その売却価格が低すぎたので、その低すぎた分が所得として加算されたということです。会社が保有している株などを売却するとき、それが時価と差がある場合は、新たに課税関係が生じます。もし時価よりも安く売った場合は、その差額が相手への寄付金になります。

会社が民間団体に寄付をした場合、「資本金の0.25%+所得の2,5%」までは経費に算入できますが、それを超えた額は、利益に加算しなければなりません。実質的に、民間団体への寄付金の大半は、利益に加算しなければならないのです(特定の公的機関への寄付金などは、全額、経費に計上できます)。

が、この事件のポイントは、ここではないのです。なぜパナソニックが、アメリカの子会社の株を自分で持たずに、オランダの子会社に移したのか、ということです。アメリカとオランダでは、マーケットとしてどちらが大きいかを比較したとき、まったくお話にならないほどの差があります。もちろん、アメリカの方が大きいです。オランダは先進国とはいえ、マーケットとしては、アメリカの数分の一しかありません。

だから、アメリカ子会社をオランダ子会社の配下に置くというのは、普通に考えれば非常におかしなことです。アメリカ子会社が、オランダ子会社を買収することはあっても、その逆は、普通は考えられないことです。

なのに、なぜパナソニックは、アメリカ子会社をオランダ子会社に買収させたのでしょうか?実はここには、パナソニックの税金戦略があるのです。オランダは、法人税自体が安い上に、ロイヤルティーの支払いに関する源泉税がないなど、先進国の中でも税金が非常に安い国となっています。タックスヘイブンの一つとすることもできるのです。

パナソニックとしては、アメリカの子会社の株を直接保有するよりも、オランダの子会社を一枚かませた方が、グループ全体としての節税になるわけです。だから欧米の市場で得た利益を、オランダ子会社に集中させようとしているのです。これも広義の意味では、「タックスヘイブンを利用した節税」といえるでしょう。昨今、国際的に非難を浴びているタックスヘイブンですが、このように日本を代表する企業たちも、ごく普通にタックスヘイブンを利用し、税金を安くしているわけです。

●日本はオワコン‥企業も“少子高齢化”が進む

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