三つ子虐待死事件。減刑署名に猛反対の母親たちに見る日本の闇

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不妊治療の末授かった生後11カ月の三つ子の次男を、いわゆる「育児ノイローゼ」状態に陥っていたとみられる母親が虐待死させた事件。被告の責任能力を認めた名古屋地裁の実刑判決に対する減刑を求める署名活動も話題となっていますが、その動き自体に異を唱える「母親」たちからメッセージを受け取った、というのは健康社会学者の河合薫さん。河合さんはメルマガ『デキる男は尻がイイ-河合薫の『社会の窓』』で彼女らの主張を紹介するとともに、判決だけに焦点を当てる限り同様の事件は防ぐことはできないと記しています。

※本記事は有料メルマガ『デキる男は尻がイイ-河合薫の『社会の窓』』2019年4月3日号の一部抜粋です。ご興味をお持ちの方はぜひこの機会にバックナンバー含め初月無料のお試し購読をどうぞ。

プロフィール:河合薫(かわい・かおる)
健康社会学者(Ph.D.,保健学)、気象予報士。東京大学大学院医学系研究科博士課程修了(Ph.D)。ANA国際線CAを経たのち、気象予報士として「ニュースステーション」などに出演。2007年に博士号(Ph.D)取得後は、産業ストレスを専門に調査研究を進めている。主な著書に、同メルマガの連載を元にした『他人をバカにしたがる男たち』(日経プレミアムシリーズ)など多数。

三つ子虐待事件と日本の闇 「私たち」の問題では?

2018年1月に起きた「三つ子の虐待事件」で、生後11カ月の次男を床にたたきつけ死亡させた母親に、先月、実刑判決が言い渡されました

母親は事件当日の夜、子ども部屋に寝かせていた次男が泣き始めたところ、激しい動悸と吐き気をもよおし、次男をベッドから抱き上げ、畳の上に投げ落とした。その2週間後、次男は搬送先の病院で息を引き取りました。子供達は三つ子で、不妊治療の末に生まれていました

事件の詳細と本件に関する私の見解は、日経ビジネスに書きましたので(「三つ子虐待事件の母親を追い詰めた『男社会』の限界」)、こちらでは「コラム公開後」に起きたことを取り上げたいと思います。

まず、件のコラムの内容を簡単に説明しますと、「そもそもなぜ、こんな事件がおきてしまうのか?」という視点で、「ケア労働無償)」を軽視する日本社会について問うたものです。

もし、もっと「ケア労働」への理解が進み、「ケア労働」を重んずる社会であったなら、痛ましく悲しいこのような事件は防げたのではないか、と。「国のあり方」、「私たちのあり方」を、一度立ち止まって考えてみるべきなのではないか。私たちの「哲学」ってなんだろう。誰が悪いとか、誰それの責任だと、するのではなく。「そもそもを考えることの必要性を書きました。

コメント欄にはいつもどおり賛否両論ありました。直接メールやメッセージを送ってくれた人も多く、さまざまな意味で「問題の根深さ」を痛感しました。

そんな中、何人かの方たちから「母親の減刑署名活動」に関して意見をいただき、なんともやりきれない気持ちになってしまったのです。

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