軍隊についての重要な誤り~武田邦彦集中講座

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◆反戦を訴え、軍隊を否定する人々は、真に軍隊の意味を理解していない

日露戦争のさなか、当時の人気詩人、与謝野晶子が「君、死に給うことなかれ」という詩を発表し、満州で戦う弟を思う気持ちを吐露したと評判になりました。今でも時折、「反戦」の一つのシンボルとして話題になることがあります。

歴史には「もし」がありませんから、むつかしい問題ですが、もし日本が日露戦争を戦わなければ、日本はロシアに占領され植民地となり、最低でも婦女子を含めて500万人程度は殺戮され、日本で生まれた富の多くがロシアに持っていかれて悲惨なことになったでしょう。

これは単なる推察ではなく、大東亜戦争後のソ連による日本人の抑留では約60万人が抑留され、6万人が死んでいる。またイギリスのインド支配では100年間に2億人の人口のうち、約2000万人が犠牲になったとされています。いずれにしても、植民地や抑留という場合、人口の10%が殺害されるのが普通です。

明治の終わりの人口が約5000万人ですから、もしロシアに占領されていたら日本人は500万人ぐらいが殺害されていたということになるのです。日露戦争の日本軍の戦死者は5万人余ですから、兵士は1人で100人分の命を救ったことになります。

当然のことですが、「軍隊」というのはその国を守るために存在するのですから、軍隊が国民の代わりに戦って死ぬもので、もし軍隊が戦うのと、戦わない場合と死者の数が同じなら、どの国も軍隊など持つはずもありません。

でも、詩人で男女のことが専門だった与謝野晶子は、そんなことは知らず、歴史や国家については無知だったので、自分の身の回りのことから感情的に詩を書いたのでしょう。与謝野晶子の弟さんは幸いにも生きて日本の土を踏んでいますが、もし「弟が死なければ」、与謝野晶子の家族とその周辺の人、100人が殺されていますが、そんな算数の計算はできなかったのだと思います。



◆敵国への攻撃が正当となる「専守防衛」とは

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