“日本の金持ちの税金は高い”という大誤『大村大次郎の本音で役に立つ税金情報』

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こんにちは

大村大次郎です。

かなり寒くなりましたが、いかがお過ごしですか?前号の消費税の特集は、おかげさまでかなりの反響をいただきました。今号は、通常モードに戻すつもりでしたが、前号の消費税特集の反響が大きかったことと前号では言葉足らずの面があったので、今号も消費税特集の後半ということにさせていただきたいと思います。

●「“日本の金持ちの税金は高い”という大誤解」

前号では、消費税というものがいかに欠陥の多い不公平な税金であるかということをご説明しました。が、「では消費税に代わる税収はあるのか?」という疑問を持った方も多いかと思われます。日本の金持ちの実質的な税負担が、実は先進国の中ではもっとも低いので、金持ちにもっと税負担を課すべきだと、前号では述べましたが、今回は、それについて、もうすこし具体的に述べたいと思います。前号と重複しますが、先進国の所得税の負担率は、次のようになっています。

主要国の個人所得税の実質負担率(対国民所得比)世界統計白書2012年版より 

日本    7,2%

アメリカ  12,2%

イギリス  13,5%

ドイツ   12,6

フランス  10,2

この個人所得税というのは、先進国ではその大半を「高額所得者が負担しているもの」です。国民全体の所得税負担率が低いということは、すなわち「高額所得者の負担率が低い」ということを表しています。つまりは、日本の金持ちの税負担は、先進国の中で一番低いわけです。しかも、かなりの差が開いてのワースト1位なわけです。この部分について、もう少し掘り下げて説明したいと思います。

個人所得税について、アメリカと日本を比較してみますね。2015年度のアメリカの個人所得税の税収は、1,55兆ドルとなっています。1ドル=110円で計算しますと、170兆5千億円です。これはこの年だけ突出した数字ではなく、だいたいこういう数字で推移しています。

では、日本はと言いますと、2015年度の16兆4千億円です。この日本の数字も決して突出した数字ではありません。

で、両者を比べた場合、実に10倍以上も差があるわけです。日本の個人所得税の税収がいかに少ないか、ということです。

もちろん、アメリカと日本では、経済規模が違います。が、経済規模を調整したところで、日本は圧倒的に個人所得税の税収が少ないのです。アメリカと日本の名目GDPを比較した場合、アメリカは日本の約4倍です。現在の日本の所得税の税収を4倍にしても、65兆6千億円しかありません。アメリカの半分にも遠く及ばないレベルなのです。

繰り返しますが所得税というのは、先進国のほとんどでその大半を高額所得者が負担するものなのです。だから、所得税の税収が低いということは、高額所得者の税負担が低いということなのです。だから、ざっくり言えば、日本の金持ちは、アメリカの金持ちの半分以下しか税負担をしていないということなのです。

もし、日本の金持ちが、アメリカの金持ちと同等の所得税負担をすれば、約40兆円の税収となるのです。今よりも、24兆円も近くも増収になるのです。現在の消費税の税収は、17兆円程度です。10%に引き上げても20兆円程度にしかなりません。だから、日本の金持ちがアメリカ並みの所得税さえ払えば、消費税増税の中止どころか、消費税を廃止してもおつりがくるのです。

しかも、です。アメリカの金持ちというのは、決して税負担が高い方ではないのです。アメリカでも、投資家の優遇税制などがあるため、近年、国民の不満が高まり、「格差解消」を訴えて社会問題と言えるほどの大きな運動になりました。ニュースでも大きく取り上げられたので、ご存知の方も多いはずです。そういう、決して金持ちの負担が大きいとは言えないアメリカと比べても、日本の金持ちは半分以下の負担しかしていないのです。日本の金持ちがいかに税金を払っていないか、ということなのです。

●日本の金持ちは“名目上の税率”は高い

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