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軍事産業の弱体化にトランプが大慌て、北朝鮮のレアアース争奪戦が米国の死活問題に=高島康司

北朝鮮問題の核心は「レアアースの争奪戦」にある。米国・中国・ロシアが水面下で争いを続けているが、軍事産業の劣化が続く米国はもう後がない状況だ。(『未来を見る! 『ヤスの備忘録』連動メルマガ』高島康司)

※本記事は有料メルマガ『未来を見る! 『ヤスの備忘録』連動メルマガ』2019年4月19日号の一部抜粋です。ご興味をお持ちの方はぜひこの機会にバックナンバー含め今月分すべて無料のお試し購読をどうぞ。

失敗したのはオバマ政権、なぜ米軍事産業はここまで劣化したのか

北朝鮮で見つかった「世界最大のレアアース鉱床」の謎

すでに周知かもしれないが、2013年に巨大なレアアースの鉱床が発見された。発見されたのは、北朝鮮の首都ピョンヤン北東部から約150キロ離れたところにある「チョンジュ鉱床」だ。これは、2億160万トンの埋蔵量を有する世界最大のレアアース鉱床だと見られている。

発見したのは、オーストラリアに本拠地があるイギリスの企業「SREミネラルス・リミテッド(SRE Minerals Limited)」だ。同社は、北朝鮮政府の鉱山省との間で合弁企業の「パシフィック・センチュリーズ」を設立で合意し、「チョンジュ鉱床」の25年間の採掘権を北朝鮮政府から獲得した。「パシフィック・センチュリーズ」の本社は、国際的な経済制裁を回避するために、バージン諸島におかれている。

しかし、これで北朝鮮のレアアースの発掘は行われるとと思いきや、2019年になっても採掘が開始された気配がない。また、採掘権を取得するために合弁会社を設立したオーストラリアの「SREミネラルス・リミテッド」だが、オーストラリアの株式市場に上場し、バージン諸島に登記されていることは確認されているものの、会社の実態はよく分からない。北朝鮮がレアアースの存在を国際的に認知させるために作った幽霊会社なのかもしれない。

さらに北朝鮮のレアアースの埋蔵量だが、レアアースの存在は確認されているものの、その2億160万トンという埋蔵量を証明する確実なデータはないという見方も多い。試掘もされていないようなので、実際の埋蔵量は未確定なのではないかともいわれている。

しかし、いずれにせよ、北朝鮮でレアアースの埋蔵が確認されたことは、地政学的に大きな影響があることは間違いない。アメリカ、中国、ロシアによるその争奪戦こそが、北朝鮮を巡る交渉の核心にあるに違いない。

アメリカの安全保障上の脅威

北朝鮮のレアアースに特に大きな関心を示さざるを得ない状況にあるのは、アメリカである。

レアアースは、第4次産業革命を主導している次世代のIT・ハイテク製品製造にはなくてはならない原材料である。レアアースの供給が中国に握られることは、いま繰り広げられている米中によるテクノロジーの覇権争いでアメリカが敗北することを意味する。これはなんとしてでも阻止しなければならない。

だが、トランプ政権は感じている本当に脅威はこれだけではない。当メルマガでも何度も書いたように、アメリカの軍事的な覇権の基盤となっている最先端兵器の製造には原材料としてのレアアースの存在が欠かせないからだ。

ちなみに、以下が先端兵器の用途である。
・ランタン:暗視ゴーグル
・ネオジム:光波測距儀、ミサイル誘導システム、通信システム
・ユウロピウム:モニターや照明用の蛍光物質
・エルピウム:光ファイバーデータ転送システムの増幅器
・サマリウム:耐熱性永久磁石、誘導爆弾、ホワイトノイズ生成のためのステルス技術

さらに、以下が代表的な兵器に使われるレアアースの量である。
・F35戦闘機:417kg
・アーレイ・バーグ級ミサイル駆逐艦:2,358kg
・バージニア級原子力潜水艦:4,173kg

これを見ると、レアアースは先端的兵器の製造には欠かせない原材料で、これなしでは兵器生産に大きな影響が出てくることは間違いない。

もし引き続きレアアースの供給が中国に独占された状況が続くなら、これはアメリカの安全保障上の深刻な脅威になることは間違いない。これは以前の記事でも何度も指摘した。

Next: 失敗したのはオバマ政権。トランプ政権になってようやく問題が表面化した

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