日韓の「国民性」その差はどこに?キリスト教を切り口に考察した

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日韓両国の間には今、様々な問題が横たわっています。そんな両国の相違点を「キリスト教」を切り口に調査し明示しようと試みているのは、メルマガ『ジャーナリスティックなやさしい未来』の著者で、通信社のソウル特派員経験も持つ引地達也さん。引地さんは今回の記事中、調査を行おうと思うに至ったきっかけや、その結果がもたらすであろう意義を記しています。

キリスト教から見るジャーナリズムの倫理観とケア行動

社会における「ケア」活動は、そのケア活動を生み出すコミュニティがケアの質を高めたり低くしたりする─。そんな当たり前そうな命題を設定し、現在研究を進め、今月は日本と韓国でのアンケート調査を始めた。それは「キリスト教を切り口にし、コミュニティを形作る日韓のメディア行為の差異、結果として発出されるケア行為の違いを浮き彫りにしようという試みだ。

私がソウルで記者活動をしていた時に、考えた日韓の「違い」を実証的に明示できないかと考えての本調査は、どの国においてもケアの質を高めようとする時に重要な示唆を含んでいるとの仮説をもとに進めているが、いざキリスト教会に赴き、面前でアンケート調査を進めていると信者のみなさんから「この質問は難しい」などとの声も聴かれる。「少し頭をひねってでも、お願いします」と平身低頭に協力をお願いする声は、ケアの未来を開くため、との思いが込められている。

日韓には現在、大きな溝がある。戦時中の朝鮮人労働者に対する賃金に関する徴用工問題や北朝鮮をめぐる対応の違い、韓国の「進歩派」大統領と日本の「保守的」首相との根本的な思想と行動様式の違い。近年の交流史を振り返れば、この溝は現在においては外交問題ではあるが、時の為政者が変われば可変するものだから、一時のものでもある。

一方で「国民性という言葉で括られるメンタリティはその社会反応を呼び起こす際の素因でもあるから、その一時の現象を判断するには、国民のメンタリティを考えなければならないのだが、これは歴史や思想史、宗教や倫理性等、多面的に複合的に観察し、それらの関係性の結果として行われるコミュニケーション行為を捉えなければならないから、簡単なことではない。今回の「キリスト教」に関する調査は、日韓の宗教観の先にある国民的な倫理観を分析した上で、メディアの倫理につながるのかどうかの挑戦である。

韓国はキリスト教国に近い様相を持ったアジアでは珍しい国でもある。日本のキリスト教徒は約191万人で1%に対し、韓国は3割以上がキリスト教、仏教が約25%とされる。この割合の多さゆえに政治の動向にも、社会問題にもキリスト教は大きく関わってきた。

80年代後半の民主化運動の際に、ソウル中心部にあるカトリックの明洞聖堂が民主化を後押しした歴史的な行動をとったことは有名である。同時に民主化以降の大統領7人中、金泳三金大中廬武鉉李明博文在寅がキリスト教徒である。

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