韓国政治は現在、完全に行き詰まり状態になりました。なぜ文在寅(ムン・ジェイン)政権は政策の「エアポケット」に落ち込んだのでしょうか。(『勝又壽良の経済時評』勝又壽良)
※本記事は有料メルマガ『勝又壽良の経済時評』2019年5月9日号の一部抜粋です。ご興味をお持ちの方はぜひこの機会にご購読をどうぞ。当月配信済みのバックナンバーもすぐ読めます。
元『週刊東洋経済』編集長。静岡県出身。横浜市立大学商学部卒。経済学博士。1961年4月、東洋経済新報社編集局入社。週刊東洋経済編集長、取締役編集局長、主幹を経て退社。東海大学教養学部教授、教養学部長を歴任して独立。
国民はさらに貧乏に。マイナス成長で無能の刻印が押された文政権
危機的状況を見て見ぬふり…
韓国政治は現在、完全に行き詰まり状態になりました。いわゆる、脳死状態です。文在寅(ムン・ジェイン)政権が、危機的状況を危機として認識しないことが理由です。
政府に都合の悪い記事は、フェイクニュースとして切り捨てています。こうして反政府的な新聞メディアを敵視するようになりました。TVなどは、労組の力が強いことから「親文政権」的存在で、政権の援軍に回っています。
韓国政治は、露骨に言論統制的な傾向を強めています。
「進歩派」を名乗る文政権が言論封殺
進歩派を名乗る文政権が、反政府的な言論に対して敵対的な行動を見せていることに、米国の知韓派から次のような反対メッセージが出されました。
米国の識者20人が、文在寅大統領に公開の書簡を送り「韓国政府は名誉毀損を乱用し、政治的に反対の意見を検閲している。この点に懸念を表明する」との考えを伝えました。「韓国における言論の自由のための連合」が、4月29日、ホームページを通じて文大統領に送った書簡では、具体的には次のような事例を挙げました。以下、『朝鮮日報(5月6日付け)』から引用します。
1)今年3月、「共に民主党」が記事の見出しで、「金正恩(キム・ジョンウン)氏の首席報道官」と表現した米ブルームバーグ通信の記者を公の席で非難した事件
2)警察が現政権を風刺した学生によるポスター掲示と関連して厳しい捜査を行ったこと
3)文大統領が大統領選挙前、自らを「共産主義者」と批判した高永宙(コ・ヨンジュ)元放送文化振興会理事長を名誉毀損で告訴し、損害賠償を求めたこと
産経新聞の元ソウル支局長は、2014年に旅客船「セウォル号」が沈没した際、朴槿恵(パク・クンヘ)前大統領の動きに疑惑を指摘。検察は、これを名誉毀損で起訴しました。当時、野党の文大統領が「(検察は)間違っている」と発言した事実も書簡では取り上げています。米国の識者らは、「その文大統領と現政権が、評論家や政治的反対勢力を検閲するため、同じ手段を使っていることに大きく失望している」と指摘したのです。
文在寅大統領と与党は、野党時代には正論を吐いていても権力を掌握すると、言論の自由を弾圧する側に立っていること。しかも、前政権よりもその頻度が高くなっているので、「進歩派政権」の看板に大きな汚点を残しています。
文在寅政権が、頻繁に「名誉毀損」で訴える事態は、政策の行き詰まりの結果でしょう。それ故、メディアがその現実を指摘すると、政権が「逆上」するという悪循環に陥っている感じを否めないのです。