朝日新聞が消費税推進派に転向したトンデモない理由『大村大次郎の本音で役に立つ税金情報』

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こんにちは

大村大次郎です。

花粉の季節がやってきましたね。私は花粉症ではないのですが、この季節はなぜかやたらと身体が冷えて鼻水などがでるのです。自分では、「これは風邪であって花粉症ではない」と信じ込んでいますが、「それは花粉症の一種だよ」という人もいて、若干おびえています。

では本題に入りますね。今日は「朝日新聞が消費税推進派に転向したトンデモない理由」の一本立てです。

●消費税の罠

昨年(2018年)の10月、安倍首相は、2019年からの消費税の増税をついに表明しました。消費税というのは、財務省や財界、大手新聞社などの「消費税を導入したい人々」によって、これまでけたたましい喧伝をされてきました。だから「消費税は公平で良い税金」「少子高齢化対策のため消費税増税はやむを得ない」と思っている人も多いようです。

しかし「消費税を導入したい人々」の喧伝というのは、自分たちの都合のいい情報だけをかき集めたものです。消費税について、ちゃんと多角的に分析すれば、これほど不公平で欠陥だらけの税金はないのです。日本国民の「消費」は、バブル崩壊以降ずっと下がり続けてきました。総務省の「家計調査」によると2002年には一世帯あたりの家計消費は320万円をこえていましたが、現在は290万円ちょっとしかありません。

近年、先進国で家計消費が減っている国というのは、日本くらいしかないのです。これでは景気が低迷するのは当たり前です。この細っていくばかりの「国民の消費」に税金をかければどうなるでしょうか?国民の生活はさらに苦しくなり、景気は低迷するのは、火を見るより明らかです。実際、消費税が導入され、税率が上げられるたびに、日本の景気は急激に悪化しました。

そして、このメルマガでも何度か触れましたが、消費税は社会保障費などには使われていません。消費税が導入されたのは1989年のことですが、その直後に法人税と高額所得者の所得税が下げられました。その後も、消費税が増税されるたび、セットのようにして、高額所得者の所得税と法人税が下げられ続けました。所得税の税収は、1991年には26、7兆円以上ありましたが、2018年には19兆円に減っています。

法人税は1989年には19兆円ありましたが、2018年には12兆円に減っています。つまり、所得税と法人税の税収は、この30年の間に、14、7兆円も減っているのです。一方、現在の消費税の税収は17、6兆円です。つまり、消費税の税収の大半は、所得税と法人税の減税分の穴埋めで使われているのです。

その結果、現在、日本の大企業や、高額所得者たちは世界一と言っていいほどの資産を保有しています。日本企業はバブル崩壊以降に内部留保金を倍増させ446兆円にも達しています。これはアメリカよりも大きい額なのです。もちろん断トツの世界一です。また近年、日本は億万長者の数が激増し、彼らの資産の額もめちゃくちゃに膨張しています。

2017年の世界的金融グループのクレディ・スイスの発表によると、日本で100万ドル以上の資産をもっている人は282万6千人でした。前の年よりも74万人近く増加しており、増加率は世界一なのです。そして日本は「国民純資産額」では、断トツの世界一なのですが、その大半は一部の富裕層が握っているのです。

この現状を見たとき、誰に税金を課すべきかは、一目瞭然なはずです。細っているばかりの国民の消費に税金をかけるべきか、世界でも稀に見るほど資産を膨張させている企業や富裕層に税金をかけるべきか。小学生程度の算数の知識があれば、絶対に間違わないはずです。

にもかかわらず、なぜ財務省、財界やマスコミはこぞって消費税を推奨するのでしょうか?中でも、朝日新聞は常日頃は庶民の味方を標榜し、国のやることには文句ばかりを言っているはずなのに、こと消費税に限っては強硬な推進派となっています。なぜ朝日新聞が消費税を推奨しているのかというと、そこにはとんでもない闇があるのです。

●朝日新聞が消費税絶対推進派になった日

2012年3月31日、朝日新聞は衝撃的な社説を発表しました。「税制改革の法案提出  やはり消費税増税は必要だ」と題されたその社説には、「高齢化が急速に進むなか、社会保障を少しでも安定させ、先進国の中で最悪の財政を立て直していく。その第一歩として、消費税増税が必要だ。私たちはそう考える」と記されており、消費税を強力に推進する内容となっていました。この社説を発表して以降、朝日新聞は強硬な消費税推奨派になったのです。

本来、報道機関というのは「公正中立」じゃないとならないという建前があります。新聞社が、賛否両論がある消費税について、これほど明確に「自分の主張」を行うということは珍しいことでもあります。

朝日新聞は、これまで消費税を推進してきたわけではありませんでした。1987年に消費税の原型ともいえる「売上税」が自民党から提案されたとき、朝日新聞は反対の立場でした。

特に、テレビ朝日のニュース・ステーションは大々的に売上税反対キャンペーンを繰り広げ、自民党は選挙で大敗、売上税は廃案に追い込まれました。このときは、「自民党はニュース・ステーションに敗れた」とさえ言われました。

また消費税が導入されてからも、朝日新聞は、「消費税賛成」の立場は取ってきませんでした。「消費税はやむを得ないのではないか」という論調ながらも、「大企業や富裕層の税制優遇」「歳出の削減」を徹底的にやらなければ、消費税増税について国民の理解を得られるわけはない、という立場を貫いてきたのです。

消費税というのは、年収が低い者ほど負担割合が高くなる税金です。たとえば、年収200万円の人は、収入のほとんどを消費してしまいますので、年収の8%を取られているのと同様になります。が、年収1億円の人は、だいたい収入の半分以下しか消費には充てませんので、収入に対して4%以下の税金が課せられているに過ぎないことになります。

もし所得税などで、年収300万円の人の税率を8%にし、年収1億円以上の人の税率を4%以下にすれば、国民は猛反発するし、絶対にそういう税金は認められないはずです。しかし、それと同じことをしているのが消費税なのです。消費税は「間接税」であり、実際に誰がどの程度の負担をしているのか見えにくいので、国民が騙されているだけなのです。朝日新聞も、この低所得者ほど高負担になるという消費税の欠陥については、たびたび批判してきたのです。

また朝日新聞は2012年3月18日の社説でも「整備新幹線 これで増税が通るのか」と題して、整備新幹線の着工にゴーサインを出した当時の野田政権に対して、「歳出を絞らずに消費税の増税を国民に求めるとは不届きな!」というニュアンスのことを述べています。

ところが、それからわずか2週間後に、冒頭に紹介した2012年3月31日の社説が出されました。朝日新聞はこの社説で、「大企業や富裕層の税制優遇」「歳出の無駄」などの問題は解決していないことを認めつつ、「それでも、とにかく消費税は増税しなくてはならない」という、強力な消費税推進派の立場に豹変したのです。

普通の良心のある新聞社であれば「大企業や富裕層の税制優遇の解消」「歳出の削減」の問題の方を先に片づけることが先決だと言い続けるのが当然のはずです。にもかかわらず、朝日新聞は、「消費税の増税の方が先だ」と言い始めたのです。

その後、朝日新聞は、すっかり強硬な消費税推進派になってしまいました。2018年10月1日の社説では、次のように消費税増税を強力に主張しています。

「4年前は増税の先送りを決め、『国民に信を問う』と衆院を解散した。16年の参院選の直前には『これまでの約束とは異なる新しい判断だ』として、2度目の延期を決めた。昨年は、増税で得られる税収の使い道を変えるとして、またも国民に信を問う戦略をとった。来年は統一地方選や参院選がある。政治的な理由で、3度目の延期をすることがあってはならない。」

これを読むと、朝日新聞は安倍首相よりもはるかに消費税の増税に積極的だということがわかります。つまり、朝日新聞は安倍首相に忖度して消費税増税を推進しているわけではなく、むしろ躊躇する安倍首相の尻を叩いて、消費税増税を働きかけているのです。

朝日新聞は、「日本の将来のため」「国民の生活」を真剣に考えてこういう結論を出したのではありません。朝日新聞は信じがたいほどの利己的な考え(自社の権益を守るため)により、強硬な消費税推進派に転向したのです。朝日新聞が豹変した理由は、ざっくり言って次の三つです。

1朝日新聞は税申告において、たびたび国税から不正を指摘されており、当時も税務調査で多額の課税漏れを指摘されていた。2そもそも朝日新聞は日本有数の大企業であり、消費税は朝日新聞にとって有利な税金だった。3当時、消費税の軽減税率品目が検討されており、新聞を軽減税率に入れてもらいたかった朝日新聞は、財務省の機嫌を取った。

この三つを順に説明していきますね。

●脱税常習犯としての朝日新聞

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