特集【広まるサブスクリプション 〜リアルへの動きに何を学ぶか?】
これまでもこのメルマガで、Netflixやアマゾンの動画配信サービスなどで取り上げてきた、定額制の使い放題サービスのサブスクリプションが、業界の枠を超えて、どんどん広まっている。
今号では、美容系のサブスクリプションを事例に、なぜ、今サブスクリプションが流行り、マーケティングにどう活かせるのか、について考えていく。
美容系サロンでのサブスクリプション
サブスクリプションは多々あるが、中でも多いのが、動画系、音楽系といった、エンタメジャンルの定額制だ。SpotifyやHuruなどもそうだが、古くは、WOWOWなども広い意味ではサブスクリプションモデルと言える。
今回、目新しいのは、サロン系・美容院のサービスがある、ということ。つまり、ネットやテレビなどのメディア上で完結するものではない、という意味において、アリそうでなかった画期的な試みと言える。
MEZONというサービスがあり、毎月1万6000円支払うと、このサービスに加盟している、どのサロン・美容院でも、何回でもシャンプーブローが受けられるサービス。
さらに、3万5000円のコースだと、ヘッドスパ、アレンジ、前髪カットなども、月内であれば無制限でできるそうだ。
先日の日経MJ(19年2月15日)の記事によると、昨年11月に開始して以来利用者が急増。現在利用者は3800人。年代も3、40代を中心に、20〜60歳代まで幅広く会員になっているとのこと。
仕組みとしては、月額会員登録をアプリでする。行きたい時に、アプリで予約。来店し、シャンプーブローして毎回の支払いは、登録してあればなし。という、いたってシンプルな仕組みだ。
会員と加盟店のベネフィットは何か?
記事によると、ユーザーの平均利用回数は、月に9回。1回あたり2000円弱、ということになる。
加盟店は2月に170軒になり、年内には東名阪沖縄に展開する予定で、年内には1000店舗を目指すとのことだ。
通常、美容系のサロンに行くときには、毎回予約をして張り切っていく、とユーザー側も少し気合いを入れていくことになるが、定額制で、アプリでシンプルに申し込めるとなると、時間の空いたときや、気分転換がしたい時、ちょっとしたお出かけの時などに、気軽に行くことができると、いう意味で、広がっていきそうなサービスだ。
同社の社長のコメントで、「美容室をスポーツジムのように使って欲しい」とあった。
実際にユーザーの方々は、髪を洗うのが面倒な時や、昼休みに昼寝したい時、デートや女子会の前など、ちょっとした場面での活用をしているようで、まさに狙いぴったりと言えそうだ。
MEZONに加盟している美容院側にも、ベネフィットがある。1回あたりの支払いを受け取れるだけではなく、自らの営業努力ではないところでの新規顧客が獲得できるし、サブスクでシャンピーをするという、美容に関心がある顧客層が発掘できることになる。
さらに、シャンプーブローに加えて、パーマやカラーを発注することもあり、売上増になっているとのこと。これは既存顧客へのクロスセルやアップセルになるので、自店舗の売り上げ増にもつながる。
リアルなサブスクリプションへの広がり〜どう自社ビジネスに活かすか?
記事にはさらに、エステ業界にも広まっていて、月額1万円で、先端のエステマシンを使えるサービスや、シャンプーなどのヘアケア製品が、定額で毎月届くなどというサービスも生まれている。
サロン系の業態だけではなく、カフェにもサブスクリプションの仕組みができ始めている。カフェパス、というサービスでは、月額4,860円で30カップまで、1杯162円で飲めるサービスをやっている。杯まで900円というライトプランも用意されている。
ホームページには、「毎日のようにカフェや喫茶店を利用するなら30CUPSがおすすめ!30杯飲むと162円に!?通学・通勤途中にコーヒーをテイクアウトしたり、午後の一息にフラッとコーヒーを飲みに立ち寄ったりと、日常的にカフェを利用するならこのプラン」とあるように、コーヒー好きにはありがたい内容だ。
このように、ユーザーにとって今までの使い方と違う、新しい使い方をしてもらうアプローチは、マーケティングの大家、コトラーが言う、「水平思考」。
以前コンビニエンスストアが、単に物を販売するだけではなく、宅急便を受け取れたり、公共料金を払えたり、ATMを設置して「使用の状況」を追加したことで、売り上げの純増を図ったことと共通する。
例えば、歯科医でのサービスで、歯のクリーニングを定額制にするなどの応用になる。
水平思考のポイントは、何を売るか、ということではなく、ユーザー・顧客に何ができるか、という視点でにある。
もう一つは、「固定観念」「過去の成功体験」を捨て、自由な発想をすること。「そんなのできるわけない」という否定的な発想では、新しいアイディアは出ない。
もし自分がユーザーだったら、何が欲しいか、ユーザーが何を喜び、そこに自社の仕組みで何ができるのか、を、常に考え続けていると、お客様も、自社も、ビジネスパートナーも喜ぶ仕組みができる。
リアル店舗でのサブスクリプションは、その意味でも、大いに参考にできる傾向だ。