毎年4万種もの生物が絶滅している地球上ですが、どの生き物たちも様々な戦略で種の保存を図っています。セミは真夏のイメージがありますが、実は春に羽化する種もいる、など「他との違い」が「戦略」なのだそうです。今回の無料メルマガ『「二十代で身につけたい!」教育観と仕事術』では現役教師の松尾英明さんが、セミの抜け殻からの気付きをもとに、新しい時代に求められる変化のあり方を説いています。
「変さ値」は生命の生き残りシステム
「『普通』と言われて嬉しいか。偏差値より『変さ値』が大切なワケ」で書いた「変さ値」の価値に関連した話。
生活科で探検をした。セミの抜け殻をたくさん見つけてきた子どもがいた。まだ周りでセミが鳴いている様子は全く聞こえないが、実は既に羽化しているものも結構いるらしい。全てのセミが同じ時期に羽化する訳ではないということである。「普通」の時期から外れた「変」な時期に羽化している個体がいる訳である。
これは、種の保存と関わる。標準偏差をとった時に、外れ値にいる者。仲間が少ない分、「普通」と違う大変さもあるが、種の生き残り手段としての価値がある。多くの種が絶滅の危機に瀕した時に「変さ値」の高い外れ値の者がいると、種が生き残る可能性が高まるのである。
「素数ゼミ」あるいは「周期ゼミ」といわれる種のセミがいる。17年周期と13年周期で、それぞれ大発生するセミである。
素数は、他の数の倍数と被らない。だから、例えば2年、3年周期で発生する寄生虫がいるとすると、12年周期のセミは速攻で確実にやられる。氷河期との関連説やら色々あるが、ともかく他と時期をずらすことが生き残りの手段になるらしい(大発生により、個体としては捕食者から逃れやすく、全滅を防げるからという説もある)。
早い時期に羽化するセミがいれば、遅い時期に羽化するセミももいる。他と違うということは、生き残りの手段にもなり得る。「変化」は、生命が自然と作り出した生き残りシステムともいえる。
これからの時代は、特にそうである。この新しい時代を生き抜くには、自身が変化していくしかない。子どもにこそ、その力をつける必要がある。それは画一的に大人の決めた「普通」「基準に揃える」という能力ではないはずである。
「変」な時期に羽化したセミたちは、今どこかの木で暮らしていて、十数年後に備えた新しい命を繋いでいるかもしれない。他と違ってもいい。そんな気付きをくれる、セミの抜け殻からのメッセージだった。
image by: Shutterstock.com