橘川幸夫の時代分析と質問箱

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　 橘川幸夫の時代分析と質問箱　　　　　　　　　　

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通巻0001号（毎月1回発行）定価400円/月
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「ロッキング・オン」「ポンプ」など1970年代から参加型メディア一筋の活動家としてメディアの渦中で生きてきました。その体験と実感からの視点で、さまざまな事件や現象について、自分なりの視点で分析していきたいと思います。また、読者の皆様からの質問にもお答えします。一緒に、新しい社会のあり方を模索していきたいと思いますので、よろしくお願いします。

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　　　　　時代分析・第一回
　　　　　アメリカと中国の関税戦争・私感。
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トランプ政権、対中関税第４弾を発表
米通商代表部（ＵＳＴＲ）は１３日、中国からの輸入品を対象とした追加関税の「第４弾」の詳細を発表した。３８０５品目の総額３千億ドル分（約３３兆円）に対し、最大２５％の上乗せを検討する。スマートフォンなど従来は追加関税の対象外だった輸入品のほぼすべてを含み、発動されれば米消費者への打撃も大きい。（朝日新聞デジタル　2019年5月14日）


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●アメリカという国は戦略の国である。
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　ニューヨークのハドソン川を渡るジョージ・ワシントン橋というのがある。昔、この橋を通過する時に、案内してくれた人が、「この橋は、最初は普通の橋だったが、将来の交通の激化に備えて、二層化出来るように設計されているんです」と説明してくれて、びっくりしたことがある。マンハッタンは当時、発展しつつあったのだろうが、最初から更なる発展を見込んで、橋の構造を設計するという思想は日本にはないだろう。都市の発達とモータリゼーションの普及も読んでいたのだろう。日本は作ったものを継ぎ足し継ぎ足しでやりくりするのが得意だ。
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▼ジョージ・ワシントン・ブリッジ（wiki）
1927年9月に着工。設計者はアメリカ国家科学賞を受賞したオスマー・アマン。完成は1931年10月24日。翌日から一般に開放された。完成当時、中央支間長の長さで世界一 (1,067m) を誇っていたが、1937年にゴールデンゲート橋 (1,280m) にその座を譲った。橋開通当初は、ハドソン川橋（Hudson River Bridge）と呼ばれていたが、後にジョージ・ワシントンにちなみ彼の名前がついた。

当初は6車線であったが、1946年、2車線を追加し8車線となった。これはそのまま現在の橋の上層となった。1962年、交通量の増加に伴い下層が追加され、交通量は7割増加した。二層化は設計当時から想定していたもので、強度的には問題ない。
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　日本と戦争を開始した時に、アメリカは、終戦後の日本の統治のプランを描いていた。日本がもし、戦争に勝利したとして、米国を統治するというプランがあったとは思えない。まじめに考えたら、そんなの不可能だから、開戦をやめようということになるだろう。

　日米戦争の開始の理由については、さまざまな説があり、確かめる術はない。ただ、大きな視点で考えれば、日本は経済的に成長をしていて、アジアに向けて拡張政策をとっていた。このまま10年、そのまま日本を発展させたら、とりかえしがつかなくなる、として、石油や鉱石類の輸入停止などの圧力を強め、日本がぶちぎれるのを待っていた、という流れはあったのだと思う。

　中国に対しての最大限の関税措置をしたのも、すでに国内総生産（GDP）では中国に抜かれ、その差は広がるばかりになるだろう。軍事力はまだアメリカが優先しているが、中国の軍事力の増強は経済の発展以上に急速に進んでいて、数年で、米国の戦力を追い抜くだろう。そうした世界状況を阻止したいのが、アメリカである。それはトランプ個人というよりも、ジョージ・ワシントン橋を作った、アメリカを築いてきた指導者たちの意志であり、シンクタンクの描いた戦略であろう。

　一方、中国は、内戦の混乱で国内を分断され植民地化されてきたが、元はといえば、世界の大国である。長い歴史と、多数の人民の中からエリートを選抜し、官僚や軍師や技術者を育ててきた。弱いものには軍事で、強いものには交渉と策略で疲弊させ、戦に勝利する戦術のノウハウは歴史的なものだ。

　中国が共産主義を選んだのは、そのことによって欧米の植民地支配を一気に崩せるからだったのだろう。そして、現在は、人民解放軍を皇帝の軍隊とする、新しい王政国家を築いている。「一帯一路」を掲げる習近平は、現代の秦始皇帝でありチンギス・カンなのだろう。

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●南北統一と利権
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　トランプ（アメリカの戦略家たち）は、中国の驚異と戦う決意をしたのだと思う。トランプと金正恩の会議が破綻したが、最初、トランプの方から、北朝鮮が核廃棄をして、自由化にとりくめば、北朝鮮の人民が幸福になる、というようなことを言っていた。それは、北朝鮮の国民2500万人が、韓国やアメリカの企業の下請け企業や労働者になり、生産性を高めて、中産階級としての自由化に目覚めれば、アメリカにとっても、魅力的な市場になると思ったからであろう。
南北統一されれば、世界の金融資本が巨額の投資を行うだろう。そこには大きなリターンが見えるからである。

　しかし、トランプは、途中で、そういう夢物語を言わなくなった。トランプの背後にいる人たちがアドバイスをしたのだと思う。「南北統一したら、一番、利益を持っていくのは中国ですよ」と。やがて南北朝鮮は統一するだろう。そこには大きなビジネスチャンスがある。アメリカが南北統一を認めるとしたら、中国の影響力を最小限に押さえら、自国の利益が優先される状況にならない限り無理であろう。大国の身勝手な論理であるが、大国の論理とはそういうものである。

　そこから、トランプは、南北統一の問題を先送りして、中国の弱体化戦略にシフトしたのだと思う。しかし、中国が簡単に引き下がるとは思えない。この関税戦争は、世界史に残る、強国と強国の戦いになっていくだろう。

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●新しい冷戦
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　欧米列国にとって、かつての敵は、ナチスドイツであり日本軍国主義であった。第二次大戦に勝利して、すぐに戦いの相手をシフトした。ソビエト社会主義共和国連邦（ソ連）である。もともと資本主義のトップたちは、労働者の団結によって資本家と敵対する共産主義の運動を唾棄していたが、戦後になって、ソ連と米国が、地域支配の面でも軍事や技術開発の面でも覇を競っていた。冷戦がはじまり、世界は小さな国家や民族も、世界を覆う「核の傘」のどちらかの陣営に所属することを強制された。

　冷戦は軍事拡大や宇宙開発競争がはじまったが、お互いを「仮想敵国」として対立を深めた。アメリカは、金融や貿易相手の国への圧力で、経済的にソ連をしめあげていった。ソ連の崩壊は、アフガニスタンの侵攻の失敗からはじまる。アメリカはアフガニスタンの反共勢力「ムジャヒディン」に巨額の資金を提供し、ソ連の経済を追い詰めていった。

　ソ連は経済的に崩壊し、世界権力で有ることに寄って支えられてきた連邦の結束は崩れ、バルト三国はソ連から離脱し、東欧のソ連の支配権力も失われていった。

　アメリカを中心とした勢力は、第二次世界大戦に続き、勝利を収め世界を単独で支配しようとした。しかし、そこで現れたのが、アフガニスタンの反共勢力であったイスラムの人たちである。アメリカが「テロとの戦い」を宣言して、イスラムの原理主義者たちとの新しい世界大戦を宣言した。

　そして、アメリカがイラク・イランなどのイスラム列国と戦っているうちに、新たな勢力が台頭した。それが中国であろう。三つ巴の世界大戦がはじまっているのだろう。

　さて、日本はもともと島国であり、もともと世界視野での組織論を持ってはいない。アメリカとも中国とも、違う方法で、世界の未来を模索するしかない。日本が世界の中で、どのように生きていくかについては、今後、考えていかなければならないテーマである。

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質問・東京オリンピックに向けて、駅やデパートでエスカレーターの「歩かず2列で」 というキャンペーンやってますが、どう思いますか。日本人は一度出来た習慣はなかなか変えられないと思うのですが。急いでいる人のために一列あけてあげるというのは、日本人的な思いやりで、悪くはないと思います。

回答・確かに思いやりということでは、自然にそうなったということもあるでしょう。ただ、混んでる時に、片側一列あけておくというのは無駄な面もあります。こうした自然に出来た社会ルールを変えるには強制的なシステムが必要な場合があります。利用者というのも、その使い方については保守的なものですから、理念で「歩かず2列で」をアピールしても身体が従いません。
　例えば、2人用のエスカレーターが上下二台並列にある場所は、1人用のエスカレーターを3台並べればよいと思います。登りが1台、下りが1台、もう1台は混雑の応じて使い分ければよい。現在のエスカレーターを改良するのは大変だと思いますが、今後に新設する場合は、この方式にすればよい。日本の施工者は、細かいところの改良は得意ですが、全体の視点で大きな変更を探ろうとしないところがあります。大きな視点からの都市改造が必要な時代だと思います。


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2019年6月22日
●公文情報塾・第三期・第一回
公文俊平先生と日本の未来を議論しています。
https://t.livepocket.jp/e/hyyt4


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　　　　　　　　　　　　　後記
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みなさん、こんにちは。
「まぐまぐ」でメルマガを出すことになりました。
「まぐまぐ」とはスタートする以前から、いろいろとつながりがあり、
インターネット前夜から現在までの状況を見直すと、いろいろな感情があふれます。

「まぐまぐ」の歴史も古きなりましたが、まだまだ可能性は出し尽くしていないと思います。私も老兵ですが、メディアの未来と、日本の将来のために、「まぐまぐ」を使ってトライしてみようと思います。よろしくお付き合いのほどを。（橘川幸夫）