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高島屋、中国撤退の大誤算。なぜシンガポールでの大成功を活かせなかったのか=児島康孝

高島屋が「上海 高島屋」の撤退を発表して波紋が広がっています。シンガポール店での成功ノウハウを上海に持ち込んだ高島屋にいったい何が起きたのでしょうか?(『「ニューヨーク1本勝負、きょうのニュースはコレ!」連動メルマガ』児島康孝)

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高島屋、上海から撤退を発表

高島屋が2019年6月25日に「海外連結子会社の清算に関するお知らせ」として発表した今回の「上海 高島屋」の撤退。この1本のプレスリリースが大きな波紋を呼んでいます。

直接の上海撤退の原因は、高島屋の連結子会社である上海高島屋百貨有限公司が、家主と進めていた賃料(テナント料)の減額交渉が成立しなかったためとのこと。

しかし、この撤退はそうかんたんな話ではありません。

2012年にオープンした「上海 高島屋」とは

「上海 高島屋」は、2012年12月にオープン。地下1階・地上7階で、テナントとして出店。シンガポール高島屋の成功ノウハウを、中国・上海でも活かそうという狙いでした。

背景には、日本国内の「高島屋」の収益力が、限界を示しているという現状があり、シンガポールのように収益力が高い店舗をさらに展開しようというのが狙いでした。

「上海 高島屋」は海外連結子会社

高島屋の店舗には、同じ高島屋に見えても2種類があります。高島屋本体の店舗と、連結子会社の店舗です。

日本国内でも、難波にある大阪店、東京の日本橋店、新宿店などは、いわば「直営」とも言える本体の店舗です。

最大の売上高を誇る大阪店(難波)は、大阪を南北に走る南海電鉄の終着駅と一体で、1店舗で年商(売上高)1473億円(2019年2月期)です。

一方、岡山高島屋(年商184億円)や高崎高島屋(年商159億円)などは、「直営」ではなくて
連結子会社です。

同じ高島屋に見えてもいろいろ、というわけです。

今回の「上海 高島屋」は、海外に展開する連結子会社となります。また、シンガポールの高島屋も連結子会社です。

「上海 高島屋」の売上げは…

さて、「上海 高島屋」の売上げの推移ですが、
2017年2月期:63億円
2018年2月期:70億円
です。

順調かと思えますが、
2019年2月期:純額31億円(31億8600万円)
となっています。

2019年2月期は「純額」として計上方式(集計方式)を変更しているため、「総額」表示である
2018年2月期との比較は複雑となり、そのまま比較することはできません。

しかし、経常損益や当期損益(純損益)をみますと、厳しい状況が透けて見えます。

<「上海 高島屋」経常損益ベース>

2017年2月期:赤字15億円(ー15億8,900万円)
2018年2月期:赤字14億円(ー14億6,300万円)
2019年2月期:赤字15億円(ー15億2,700万円)

<「上海 高島屋」当期損益(純損益)ベース>

2017年2月期:赤字16億円(ー16億500万円)
2018年2月期:赤字30億円(ー30億8,600万円)
2019年2月期:赤字15億円(ー15億2,800万円)

ちなみに2月期というのは、前年の3月1日から当年の2月末までの1年間です。2019年2月期とは、2018年3月1日から2019年2月末までです。流通企業の多くは2月期決算を多く採用しています。

Next: なぜ上海進出は失敗した?大成功のシンガポール店を見れば原因がわかる

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