「米国は7月31日に利下げをして、政策金利の目標レンジを2.00%-2.25%にする、つもりです」。パウエルFRB議長の議会証言を勝手にまとめるとこんな感じです。(『高梨彰『しん・古今東西』高梨彰)
※本記事は有料メルマガ『高梨彰『しん・古今東西』』2019年7月11日号の一部抜粋です。ご興味をお持ちの方はぜひこの機会にバックナンバー含め今月分すべて無料のお試し購読をどうぞ。
日本証券アナリスト協会検定会員。埼玉県立浦和高校・慶応義塾大学経済学部卒業。証券・銀行にて、米国債をはじめ債券・為替トレーディングに従事。投資顧問会社では、ファンドマネージャーとして外債を中心に年金・投信運用を担当。現在は大手銀行グループにて、チーフストラテジスト、ALMにおける経済・金融市場見通し並びに運用戦略立案を担当。講演・セミナー講師多数。
パウエルFRB議長、黒田日銀総裁の言葉を否定して利下げへ
パウエル証言「7月末に利下げ」を示唆
「アメリカは7月31日に25bp(ベーシスポイント=0.25%)の利下げをして、政策金利の目標レンジを2.00%-2.25%にする、つもりです」。パウエルFRB議長の議会証言を勝手にまとめるとこんな感じです。
また今回の議会証言は、間接的に黒田日銀総裁の言葉を否定するものでもあります。
パウエル議長率いるFed(Federal Reserve:米連銀)、最近の姿勢は「我慢(patient)」でした。でも我慢も限界なので利下げへ向かう、としています。
パウエル議長はこの我慢の加減を左右させる存在としてcrosscurrentsという言葉を使っていました。逆流、望むものとは反対の動き、そんな意味合いのようです。力石徹のクロスカウンターみたいなものでしょうか…。
FRBにとっての逆流はトランプ大統領
何が逆流かといえば、世界経済成長と貿易問題が望まない方向に進んだということです。
前回FOMC(連邦公開市場委員会:6月18-19日開催)時、この逆流は少し収まったかにみえました。しかし、またぞろ復活、とのパウエル議長の解説です。
また、「一時的」としていた低インフレ率ですが、ここに至っても上がって来ず。これも利下げを促す要因と。
そしてなによりuncertainty、不確実性が利下げ(金融緩和)を促す理由のようです。
これら、中国・新興国経済の循環的な減速を除けば、ほぼトランプ政権の関税ネタにて説明可能です。
結局、トランプの動きによりクロスカウンターを喰らい、インフレ率も上がらず、不確実性が高まったので、Fedは今月末に利下げする、そんなことを言っているようです。
また、6月FOMC時点の景気見通しを下方修正した、という意味にもなります。
FRB議長と米大統領とのぎこちない関係が利下げを促した、とするのは言い過ぎでしょうか。
そんな関係を見透かしたせいなのか、株価の上げも一過性に留まっています。トランプ・ツイートの方がFedの利下げよりも刺激は強いですから。
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