結婚できない問題~武田邦彦集中講座 複雑な問題を簡単に切る(5)

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◆なぜ「未婚率の上昇、晩婚化」が起こるのか、科学的に整理をする

日本人で生涯で一回も結婚しない人(生涯未婚者)は、つい最近までほとんどいませんでした。数でいえば、今から50年前には100人のうちに1人から2人で結婚しない人は本当に珍しいということでした。100人に1、2人ということになると、誰でも「結婚はするものだな」と思っていたのも当然です。

ところが、それからわずか50年しか経っていないのに、今では100人に約25人、つまり4人に一人が生涯未婚なのですから、身の回りに「あの人も、この人も」となるので、「結婚しなくてもよいや」と思うようになったのです。

人間は子供ができなければすぐ絶滅するのですから、結婚して子供を持つのは当然のことです(ここで注意しなければならないのは、結婚して子供ができないというのはまったく別のことで、夫婦で平均二人の子供がいる状態になるには、子供がゼロの人がいなければ平均は2人になりません(物理の問題です))。だから、簡単に言うと「結婚しなければいけない」と言えます。

ところが問題は未婚率だけではなく、結婚年齢も上がっています。結婚年齢は女性が大切ですから女性で整理をすると、今から50年前が平均23歳、それが現在は30歳です。女性が子供を産む最適な年齢は25歳まで、ギリギリで35歳。結婚して1、2年後に子供が生まれることを考えると、平均30歳というのはかなり晩婚と言えます。

なぜ、「未婚率の上昇、晩婚化」が起こるのか、やや科学的な見方から整理をしてみたいと思います。

人間の大脳が発達する前(約200万年前まで)は、本能で人生を送りましたので、男女の関係も簡単でした。本能というのは自分で判断するのではなく、親からもらったDNA(遺伝子)の命令通りにするのですから、親から遺伝子で「何歳で結婚しろ」と言われれば、その年になったら必死になって異性を探し結婚しますから、「結婚するかどうか、いつ結婚しようか」などは考えません。

ところが、大脳が発達し本能(遺伝子情報)を抑圧するようになると、性欲も結婚も、子供のことも全部、頭で考えなければならなくなったので、面倒なことになりました。つまり「生物としての人間に素直」にはならなくなったのです。

まず、第一に男性の性欲が後退し、女性の誘いが必要になりました。その結果、女性がお化粧をして、やや挑発的な衣服やしぐさをしないと男性が誘わなくなりました。また、本能なら結婚する時期もほぼ決まっているし、基本的には「異性ならOK」ですから、美人である(これも女性からの誘いの一つ)迷いもなかったのですが、それも複雑になりました。



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