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2019年秋のGDP低下で…ドイツ銀行が抱えるリスク、デリバティブ契約は銀行平均の8.3倍=吉田繁治

ドイツ銀行の破たんがあらためて懸念されています。そこで今回は日銀より早くゼロ金利からマイナス金利を敷いた、ユーロの金融機関がかかえる問題を解説します。(『ビジネス知識源プレミアム』吉田繁治)

※本記事は有料メルマガ『ビジネス知識源プレミアム』2019年7月18日号の一部抜粋です。興味を持たれた方は、ぜひこの機会にバックナンバー含め今月すべて無料のお試し購読をどうぞ。

世界的な株高のなか、異常に低い株価から見えるドイツ銀行の危機

ユーロの銀行危機を集約するドイツ銀行

19か国で構成する、ユーロ最大の銀行であるドイツ銀行(総資金量1.77兆ドル=運用資金195兆円)に集約された「ユーロの銀行の危機」をとりあげます。三菱UFJの総資金量が2.79兆ドル(307兆円)ですから63%の規模です。

ドイツ銀行は民間の銀行です。名前から間違えやすい中央銀行ではありません。統一通貨ユーロの加盟する、ドイツの中央銀行はユーロのECBです。ユーロはドイツが加盟したというより、ドイツが作ったと言うのが正しい。

矛盾した統一通貨の中の、ドイツ銀行

ユーロは経済の生産性と水準が異なり、財政赤字が3%以上の南欧を抱え、矛盾を内包した統一通貨です。ドイツが、「経常収支の構造的な赤字」(=ドルの増刷になる)から、価値を下げ続ける基軸通貨のドル」から逃れるために作った通貨がユーロです。

欧州が、再び、第二次世界戦のような国家間の大戦争を起こさないための統一通貨とされていますが、それは名目上の目的にすぎません。ドイツが、対外的な貿易黒字によって貯めていたドルが、プラザ合意(1985年)で、マルクに対して1/2に切り下げられ、ドルを貯めていたドイツ(と日本)が大きな損をしたことがきっかけでした。1985年から、15年かけてじっくりとユーロを作ったのです。このときは、ことあるごとに。ドイツには反対するフランスも、ドルの価値低下に苦しんでいたため、賛成したのです。

「最適通貨圏の理論」を作ってノーベル賞を得たマンデルは、国家を超えて統一通貨(最適通貨)にするには、生産性の水準を同じに向かわせるために「労働の移動の自由」が必要としていました。

しかし、EU内で移民風な労働の移動があっても、ドイツ、フランス、南欧のGDP生産性(GDP÷労働者数)の格差は解消しなかったのです。そして南欧では、ユーロ加盟条件を満たさない3%以上の財政赤字が続きました。

成立上の矛盾をかかえていても、統一通貨なら、加盟19か国のユーロの内の貿易決済は、ドルを使わずユーロで決済できます。

ユーロの為替レートは、{(ドイツ)マルク+(フランス)フラン+(南欧)南欧通貨}として、GDPの構成比をかけて平均化されるため、ドイツにとっては常にマルクより安い。南欧諸国にとっては常に高い。このためドイツの貿易黒字は、恒常化します。貿易黒字のため、ドイツにユーロが集まり続けるということです。

1999年の統一通貨のあと、ユーロはドイツ銀行に集まりました。ドイツ銀行は、そのユーロを国内より高い金利をもとめて、南欧、東欧、中東、アジア(中国)、アフリカ、つまり海外に貸し付けていたのです。

Next: ドイツ銀行の危機は、いつ、なにをきっかけに起きたのか?

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