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いじめ第三者委員会が自ら解散を提案、北杜市教育委員会の異常

これまで3度に渡り、いじめ被害者を追い詰めるといった山梨県北杜市教育委員会の異常さを指摘してきた、現役探偵の阿部泰尚(あべ・ひろたか)さん。その後も被害者サイドに立ち問題解決に向け戦い続けてきた阿部さんですが、現地に新たな動きがあったようです。阿部さんが自身のメルマガ『伝説の探偵』で報告しています。

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山梨県北杜市いじめ事件及び市教育委員会による不適切対応事件の続報と進展

2019年7月3日 いじめ第三者委員会が異例の解散提案

 

一昨年、山梨県北杜市の女子中学生が自殺を図った事件で、対応を検証してきた第三者委員会が市の教育委員会の対応に問題があったと結論づけた。

 

市の教育委員会が被害保護者の意見を聞き入れない他、いじめ防止対策推進法やそのガイドラインを無視した対応をしたとして、北杜市に意見書を提出した。

 

一方で、市教育委員会の不適切な対応によって被害保護者の協力が得られない現在の第三者委員会では原因究明は困難だとして解散した上で新たな委員会で調査をすべきとした。

異常事態

北杜市のいじめ事件に関しては、「伝説の探偵」で随分前から追求してきた。

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ことは実際に起きているいじめをなんとか隠蔽しようとした校長が作った捏造報告書の存在から始まった。次は、第三者委員会の名簿を隠し被害側から強引に合意を引き出そうとした教育委員会の横暴だ。こうした対応には、文科省からも再三の指導があったが、市教育委員会はそれに従うことはなかった。

加害生徒の保護者がネットに誹謗中傷をあげたり、被害者側を中傷し、「大したことがないのに、ただ騒いでいるだけ」という悪意ある噂を流すなどの派生した問題もあった。

一方で、地元新聞が噂や市教育委員会からの情報のみで記事を書くなどの問題も発生したのだ。

私は被害者側につき、市教育委員会などを追求し続けた。教育委員会が異常な状態であれば、どんなに確度の高い証拠や情報を集めても、適切な判断は不能であろう。

事実、教育委員会は第三者委員会に利害関係者を選任し、強引に委員会を開始しようとしていた。しかし、これは私や被害者側の指摘によって中途に人選を変更したようであった。

また、「まぐまぐニュース」で事実を公開したことによって、北杜市市長は議会で謝罪をすることになり、第三者委員会設置によって早急な事実調査を始めたいと表明するまでになった。

第三者委員会との協議

私は被害側に同行する形で、今年はじめに新たに設置された第三者委員会と被害側との話し合いに参加することになった。

この話し合いの前には、第三者委員会の方々になぜ被害側が第三者委員会の呼びかけに不信感を持つかと知ってもらうため、1つの条件を出した。

それは、第三者委員会がその設置の経緯を調べるというものであった。

もしも、まともな判断ができる委員であれば、この設置が、法やガイドラインを無視したものであり被害側の信頼を教育委員会側が破綻させるように動いていることがわかると考えたからだ。

第三者委員会は事前に設置の経緯について調べた報告書や意見書を被害者側に報告した。

その内容は、至極当然なもので、市教育委員会によるガイドライン違反やいじめ防止対策推進法を無視したり文科省の指導をなんら反映せず強引に進めたものであると結論づけられていた。

特に人権意識の高い弁護士である委員長はあまりの酷さを理解し、被害側がどうやってもその設立経緯から第三者委員会を信頼できないということを理解していた。

ここにきてやっと、まともな判断ができる人物らに出会えたのだが、第三者委員会の設立経緯から考えて、第三者委員会を認めることは、市教育委員会の横暴を認めることになってしまう恐れもあり、被害側、第三者委員会は難しい判断をしなければならないことになった。

結果、第三者委員会はその設立経緯に前代未聞の異常事態があることから、自ら解散し再度新たな委員会を設置することを意見することになった。

これは、やっとまともな判断ができた第三者委員会の各委員を否定するものではなく、市の教育委員会の横暴に対する最大の行動であった。第三者委員会が自ら解散を意見した事例は私の記憶の中でもこれが初めてだろう。

それほどまで、市の教育委員会は滅茶苦茶な対応を被害側にしていたのである。

情報封鎖によるメディアの混乱

また、私はこの一連の動きをメディアの同行を許し、記録してもらっていた。他の問題やメディア側の最後の最後の信用失墜行為もあって、この放送は見送られるかもしれないが、同行したテレビクルーによれば、地元メディアは、市の教育委員会からの強固な情報封鎖があり報道するに必要な情報がごく限られていたという。

だから、私に帯同したキー局のテレビクルーは地元局での情報収集で、あまりの情報の無さや噂レベルで被害側を中傷する話が出回っていることに困惑していた。

実際、私に帯同したテレビクルーは、私が持っている資料に目を通していたし、被害側が証拠収集した校長とのやりとりの録音や市の教育委員会とのやりとりも確認した上で、これは地元局の情報収集力にも問題はあるが、市教育委員会の対応が被害側の不利益になるようにしか働いていないと断言していた。

市の教育委員会は、仮にそのつもりはなくとも、結果、被害側が中傷されるように情報を小出しにしたり加害側がムキになって事実とは異なる情報を地域にばら撒いていることを放置していたことになる。

何が悪かったのか理解できない教育委員会

冒頭の報道(多くの報道記事の要約)では、市の教育委員会は、第三者委員会の指摘を真摯に受け止め、迅速に対応するとコメントを出している。

しかし、関係者は誰も期待していなかった。それは、およそ2年もの間、市の教育委員会は被害側の救済もしていないし、自らの不誠実な対応と問題を隠蔽しようとする対応を棚上げして、全ては自分たちに従わない被害側のせいだと結論づけていたからである。

これまでに、解散を申し出るというような行動で示す第三者委員会もなかった。これはそれだけ、「北杜市教育委員会は異常だという意思表示なのだ。

一般感覚がわずかでもあれば、一人でもまともな判断できる人物がいれば、北杜市教育委員会が自ら異常であることを自覚するものであるが、7月3日の第三者委員会からの解散申し出などの意見書を受け、7月23日現在を過ぎようとしている期間の中でも、市の教育委員会は何の対応もしていない

この間、第三者委員会からは催促があったはずなのだが、結局、何が悪かったのか理解できないのであろう、改善をしようとする動きも協議をする様子も何ないのである。

もはや、第三者委員会ではなく北杜市教育委員会が一度解散してみてはと思う事態だ。これでは、北杜市で起こるいじめ重大事態では、本来機能するはずの教育委員会が全く機能せず、むしろ後退をする要因を作り続けることになろう。

例えば、教育委員会は市議会に第三者委員会設置のために予算を取っているが、その際には、ガイドラインを違反していたことは言ってはいないし被害側の合意がないことも説明していない

言わないことは嘘をついたことにはならないが、当然に公の場であり、市民の血税を使うのであるから、役目上は第三者委員会設置に関するガイドラインに違反していないと市議会は考えるであろうし、新聞報道でも被害側の合意がないことは報じられているのだから、市議会にあげるくらいならば、合意は得ていると思うであろう。それだけ、教育委員会という公の組織は信頼すべき組織であると認識されているのだ。

ところが実際は、ガイドライン違反を異常なほどやっていて合意もなかった、当然、第三者委員会が設置されてもまともに機能する前提はなかったのだ。これは、市民をも欺く信用失墜行為である。

つまり、このような教育委員会では今後も無条件に信用することはできないのだから、通常ならば、組織の一新を図り、新たな体制で一般に当然に期待される機能を果たせるようにしなければならない。

こうしたことはきっと北杜市市議会が行うことであろうが、この地で子育てをする有権者はよくアンテナを立て、明日はわが身であると考えて行動をすべきであろう。

仕組みの問題ではない人間の問題

どんなに良い仕組みを作っても、それを運用する人間がその仕組みを使う気がなければ、宝の持ち腐れになる。

そもそも、いじめ防止対策推進法は専門家の間では、まだまだ不十分だと言われているが、それでも私は、なかった時よりは随分マシになったと感じている。

また、やる気がない公務員であっても、法やガイドラインがある以上は、それに嫌々ながらも従うということはあっても、無視したり平気な顔で破るということはあまりなかった。

ところが、北杜市教育委員会のように、体裁だけを取り繕って、その実、平気でガイドラインを破ったり情報操作をすることで被害者をまるで悪者にしたりする組織的な対応は、事実として起きたのである。

政治は仕組みや制度を作り、メディアはそれを報じて、現場を知らない評論家にそれを評価させる。テストの正答評価で教育を受けた賢い人々は、それを見聞きして、現実がどうなっているかも知らずに、社会的な信用を与えてしまう。

ところが制度や仕組みは必ず穴があり、現実は見せ掛けの運用がされてしまうケースもある。

いじめ問題はまさにその典型で、学校側や教育委員会側がいいように仕組みの穴を掻い潜り被害者を貶めてしまうのだ。

素晴らしい仕組みを持ち、それに対しての予算もある教育委員会もある。しかし、それを運用するのは人なのだ。人がうまく機能しなかったり、そもそもいじめ対策に消極的否定的であれば、どんなに素晴らしい仕組みを作り、しっかりとした予算があっても不毛になってしまうのだ。

だから、我々がいるのだが、本当にそれでいいのだろうか。

私は社会的インフラでも社会的に保障されるような立場でもなく、言ってしまえば何者でもない。権能も権限もない一般人と何も変わりはない存在なのだ。そんな者に、この重要な場面を任せていいわけはないし、私としても荷が重すぎるのだ。

できれば、いじめ問題に利害のある教育委員会が常設委員を作るのではなく、市民の代表たる議会が、教育委員会の不当な対応をも範囲に含めた監視のための機能を持つ委員会を設置することが望ましいと思うのだ。

今回のような北杜市教育委員会の横暴は絶対に許してはならないし第二の被害者でないようにするために、是非とも政治には政局をいたずらに引き延ばすのではなく、子供たちをいじめから解放するためにも知恵を絞ってほしい。

編集後記

権力に巣食うものはしぶといものですが、最後は潔さも必要です。

今回、第三者委員会の面々には苦渋の決断をさせてしまいましたが、マトモな判断をしてくれたことで、ここでの正義は1つは守られたと感じました。

できることならば、市議会にはこの責任をしっかりと追及するとともに、被害者や第三者委員会の意見に基づいて、暫定的にでも速やかに新たな第三者委員会を設置するように監督するように求めたいところです。

そして、中立公平な委員によって、いじめの調査や自殺未遂に関する原因追求が直ちに行われることを願います。私は本件を被害側の要請に応じ、調査対策をしてきましたが、私にできることがあれば本件については協力を惜しみません。

やっとスタートラインに戻ることができた北杜市いじめ自殺未遂および市教育委員会よる不適切対応事件、これからはスムーズに進み、1日も早い被害救済がなされることを期待しています。

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阿部泰尚この著者の記事一覧

社会問題を探偵調査を活用して実態解明し、解決する活動を毎月報告。社会問題についての基本的知識やあまり公開されていないデータも公開する。2015まぐまぐ大賞受賞「ギリギリ探偵白書」を発行するT.I.U.総合探偵社代表の阿部泰尚が、いじめ、虐待、非行、違法ビジネス、詐欺、パワハラなどの隠蔽を暴き、実態をレポートする。また、実際に行った解決法やここだけの話をコッソリ公開。
まぐまぐよりメルマガ(有料)を発行するにあたり、その1部を本誌でレポートする社会貢献活動に利用する社会貢献型メルマガ。

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