「なぜ物価上昇率は上がらないの?」が世界的な疑問として立ちはだかっています。でも、低インフレの呪縛が解けるかも?と感じさせる物事が2つ出てきました。(『高梨彰『しん・古今東西』高梨彰)
※本記事は有料メルマガ『高梨彰『しん・古今東西』』2019年8月14日号の一部抜粋です。ご興味をお持ちの方はぜひこの機会にバックナンバー含め今月分すべて無料のお試し購読をどうぞ。
日本証券アナリスト協会検定会員。埼玉県立浦和高校・慶応義塾大学経済学部卒業。証券・銀行にて、米国債をはじめ債券・為替トレーディングに従事。投資顧問会社では、ファンドマネージャーとして外債を中心に年金・投信運用を担当。現在は大手銀行グループにて、チーフストラテジスト、ALMにおける経済・金融市場見通し並びに運用戦略立案を担当。講演・セミナー講師多数。
価格は同じでも量が減って物価上昇中。低インフレはここで終了か
追加関税分を負担しているのは米国の消費者
「何でインフレ率(物価上昇率)は上がらないの?」が世界的な不可思議として立ちはだかっています。
でも、「低インフレの呪縛」から解かれるかも、と感じさせる物事が2つ、昨日は出て来ました。
1つ目は「米国、対中追加関税措置を一部先送り」に関するトランプ大統領の発言です。
米国は、追加関税「第4弾」の実施を9月1日から12月15日へと一部延期する旨、公表しました。
これに際し、トランプ大統領は「クリスマスシーズン(商戦)に影響が出たらまずいからね」と述べています。
トランプ大統領は、対中関税を「中国が支払い、米国の収入を得るのだから良い」としてきました。恐らく今でも同様の発言をするはずです。
しかし、追加関税分は米国内での販売価格に上乗せされます。実際に関税分を負担しているのは米国内の消費者です。「米国消費者が支払い、米国政府が収入を得る」図式です。
昨日のトランプ発言はこの現実を追認するものです。追加関税がかかればクリスマスプレゼントの費用も上がる、これを認めたわけですから。
追加関税はインフレ率上昇に繋がります。
米消費者物価指数(CPI)が上昇に転じつつある
もう1つのインフレに関する物事は、米消費者物価指数(CPI)のデータそのものです。
7月分の米CPI、物価全体の指数は前年比+1.8%、食料とエネルギー価格を除いた「コア指数」は前年比+2.2%でした。コア指数が下げ止まりから上昇に転じつつあります。
またコア指数の前月比は+0.3%。これは2ヶ月連続です。3-5月は各月+0.1%でした。
「前月比+0.3%」が12ヶ月続いた場合、足し算的な考え方をすれば、年間の物価上昇率は+3.6%。実際には複利の考え方が適用されるので、それ以上のインフレ率となります。
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