8月7日、首相官邸で突如行われた、小泉進次郎衆院議員と滝川クリステル氏の結婚発表。ワイドショーのみならず、ニュース番組がこぞってトップニュースとして報じたことに批判の声も上がりましたが、そもそもなぜ彼らの結婚というプライベートイベントが、首相官邸という公の場で公表されることが許されたのでしょうか。元全国紙社会部記者の新 恭さんが自身のメルマガ『国家権力&メディア一刀両断』で、「その裏で起きていたこと」を推理しています。
官邸を小泉・滝クリ結婚発表の舞台にできる菅官房長官の権勢
いやもう、びっくりしたのなんの。首相官邸の玄関ロビーで、堂々と結婚の記者発表を、カップルそろってやるというのは、官邸の歴史始まって以来の珍事である。
官邸の正面玄関は3階にある。玄関を入ると、テレビニュースでおなじみのホールが広がり、片隅に通称「番小屋」がある。記者たちがたむろし、モニターなどで来訪者を見張っている部屋だ。
そこにいきなり、政界のプリンス、小泉進次郎衆院議員が、「オ・モ・テ・ナ・シ」の滝川クリステルさんをともなって現れたのだから、すわ何ごとか!と、駆け寄っていくのが記者のつとめである。
「今日は総理に会われるんですか」とかなんとか、記者は聞いただろう。小泉氏は「ちょっと菅官房長官に」とでも、答えたに違いない。
「お二人で、どんなお話を…」「終わってから皆さんにお話します」
おそらくそんなやりとりがあって、小泉氏とクリステルさんは5階の官房長官執務室に向かった。
しばらくして5階から降りてきた小泉氏らは待ち受ける大勢の報道陣に、何が起きているのかを語った。小泉氏と菅氏の話を合わせると、ことの次第はこうである。
その日、8月7日の朝、小泉氏が菅氏に電話をかけた。「きょうお時間ありませんか」。
午後1時半のアポイントがとれた。滝川クリステルさんも同行すると伝えた。同じ神奈川県選出のよしみで、小泉氏はしばしば執務室にやってくるので、菅長官は「結婚報告」とは気づかなかったらしい。
二人から話を聞いた菅長官は「おめでとう。いや、俺もカンが悪いな。滝川クリステルさんとどうして一緒に来るんだろうと思ったよ」と言い、「総理いるから、よかったら」と、内廊下でつながっている総理執務室へ案内した。
その日の新聞の「首相動静」によると、午前11時40分以後は、午後1時39分に小泉氏ら二人が入室するまで、訪問者がなかったことになっている。分刻みのスケジュールが組まれている首相にしては、比較的ゆったりした日だったようだ。
広島原爆の日の6日、長崎原爆の日の9日を避け、「突然だが、今日だな」と7日、菅長官に電話したら、たまたま運よく、総理、官房長官のスケジュールに空きがあったので二人に報告できたと小泉氏は語る。
でも待てよ。政治向きの話なら自民党代議士の小泉氏が急に電話をかけて、空いている時間にアポイントをとるということは何ら不思議ではない。しかし、まさに小泉氏が報道陣に断ったように、結婚というプライベートなことについて、いかにクリステルさんのお腹が目立ってきつつあるといっても、そんなに電光石火の報告をするものなのだろうか。
筆者は、「突然の連絡」「運がよかった」とか、菅長官の「俺もカンが悪いな」を、小泉氏がさりげなく語ったのに、少なからず引っかりを感じた。
下衆の勘ぐりかもしれないが、突然の連絡でも、菅長官がその日まで知らなかったのでも、ないのではないか、と思ったのだ。
兄、小泉孝太郎氏によると、進次郎氏から結婚の話を聞いたのは6月初旬で、その後、滝川さんの自宅を訪問して4回くらい会った。父の小泉純一郎元首相に進次郎氏、クリステルさんが会った時も孝太郎氏が同席していたという。
すでに妊娠はわかっていて、菅官房長官への結婚の報告に支障はないが、参議院選の期間中を避け、7月21日の投開票後しばらくして公表する手はずだったのだろう。