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世界的投資家が納得の指摘。なぜ日本は衰退してゆくしかないのか

世界的投資家としてその名を知られるジム・ロジャーズ氏による、『日本への警告』なる書籍が話題となっています。「彼が親中派ということを差し引いてもその指摘は有益」とするのは、国際関係ジャーナリストの北野幸伯さん。北野さんは自身の無料メルマガ『ロシア政治経済ジャーナル』でその内容を紹介するとともに、安倍政権が最優先で取り組むべき政策を記しています。

ジム・ロジャーズ、日本が衰退する理由

世界3大投資家といえば、

私が一番尊敬しているのは、ウォーレン・バフェットさんです。ソロスさんは、尊敬していませんが、「予測力はすごい!」と思います。この方は、04年時点で、「アメリカはイラク戦争の失敗で没落する!」と予測していました。昔は相当な親中でしたが、最近は、習近平のことをもっとも危険な敵!」と呼んでいます。

ジム・ロジャーズさんは、「がつくほど親中な方です。何しろ、「娘に中国語を身につけさせるために」シンガポールに移住した。「19世紀はイギリスが覇権国家、20世紀はアメリカが覇権国家、21世紀は中国が覇権国家になる!」と公言してはばかりません。私は、中国が覇権国家になるとは全然思いませんが。

さて、私は最近、ジム・ロジャーズさんの最新刊『日本への警告 米中朝鮮半島の激変から人とお金の動きを見抜く』を読みました。相変わらず、中国に優しく、日本に超厳しい意見が多い。しかし、こういう本も読んでおいた方がいいです。

私は、日本は世界一すばらしい国だと思っています。世界中(中韓北以外)で愛されてもいる。しかし、その一方で、国連「世界幸福度ランキング」で58位。労働生産性は、G7中最悪。テレビを見れば、毎日といっていいほど「親族殺し」のニュースが流れている。

そう、日本は世界一すばらしい国ですが、それでも何かを変えなければならないのでしょう。私もそう考えて、昨年「トータルな日本改革案」を本にしました。

●『日本の生き筋 家族大切主義が日本を救う』扶桑社

それはともかく、「日本の直すべきところ」を知りたければ、ジム・ロジャーズさんのような人の本を読むのは有益です。

ジム・ロジャーズ、日本が衰退する理由

いろいろいろいろ書いてあるのですが、ジムさんの「日本が衰退する理由実に納得できるものです。

日本の問題は言うまでもなく人口構成に端を発する。出生率が世界で最も低い国の一つであり、国民年齢の中央値が世界で最も高い国の一つである。人口動態からすれば、21世紀の終わりを待たずして日本の人口が半分になるのは明らかだ。

これ、その通りです。

日本の人口は、2050年までに1億人を切り2100年までに5,000万人以下になると予測されています。いってみれば、今の韓国ぐらいの規模になる。そうすると、今の韓国みたく、GDPは世界12位とかになってしまうでしょう。深刻です。ジムさんは論理的帰結として、

しかないといいます。そして、ここからジムさんらしい、「大胆」な結論が導きだされます。

日本の子どもには、気の毒にも大人たちのツケを払わされる未来が待っている。私が日本に住む10歳の子どもであれば、一刻も早く日本を飛び出すことを考えるだろう。中国や韓国に移住したほうが、よほど豊かに生活できるのだから。将来、日本の多くの家庭で、「お母さん、わたしたちはどうして外国に住まないの?」といった会話がなされる未来が私には見える。

ひ~~~。

一応、突っ込んでおきます。世界銀行のデータによると、2016年の出生率は、中国1.62。一人っ子政策は2015年に廃止されましたが。しかし36年つづいた一人っ子政策が原因で、これから日本をはるかに上回る少子化問題が起こることは確実です。韓国の出生率は日本の1.44をはるかに下回る1.17。韓国は「世界一出生率が低い国」。というわけで、ジムさんがいう、「日本は少子化問題が深刻。だから中国や韓国に引っ越せば豊かに暮らせる」というのは、かなり矛盾した意見です。

しかし、中韓のことを抜いて考えれば、「人口問題が深刻なのはその通りでしょう。

これは私の“意見”ではない。意見に対しては異論が成り立つが、この問題は簡単な算数ができれば誰でも明らかにできるものなのだから。したがって、これから起きる破綻は、日本人が自身で決めたことにほかならない。しかし、本当にそうした未来を望んでいるのだろうか?

望んでいません。

ルトワック、日本の最優先課題は?

ちなみに人口問題というか、「少子化問題が日本の最重要課題」と考えているのは、ジムさんだけではありません。世界一の戦略家ルトワックさんも同じ意見です。ルトワックさんは、『日本4.0』の中で、「少子化問題」を日本最大の問題の一つと位置づけています。少し引用しておきましょう。

日本は長年、少子化問題を議論しながら、人口減少という国家にとって真の危機を間近にしても、思い切った施策を打ち出そうとしていない。そもそも将来の納税者が減少すれば、近代国家は衰退するしかないのだ。

親日家のルトワックさんですが、この問題については、日本政府を強く批判しています。

もうひとつ、子どもがいなければ、安全保障の議論など何の意味もないということだ。人間の人生には限りがあり、未来は子どもの中にしかない。当然、国家の未来も子どもの中にしかなく、それを守るために安全保障が必要なのである。どんなに高度な防衛システムを完成させても、国内の子供が減り続けている国が戦争に勝てるだろうか?未来の繁栄が約束されるだろうか?

そしてルトワック氏は、少子化解決のための具体的方策も提案しています。

もし日本が本当に戦略的な施策を打ち出すのであれば、最も優先されるべきは、無償のチャイルドケアだろう。スウェーデン、フランス、イスラエルは、高い水準のチャイルドケアシステムを整備し、実際に子供が増えている。

まずは不妊治療の無料化。イスラエルはこれを100%実施している。次は出産前の妊婦が必要とする諸費用、出産費用、さらに小学校に行くまでのチャイルドケアの費用を国が負担することである。

これらの施策も「社会主義的だ!」と批判する人がいるでしょう。ルトワックさんは、「極端に保守化した人たちを批判します。

高齢化が行き着くと、国内の雰囲気は保守化し、悲観的になる。未来のことを考えない近視眼的な思考がはびこるようになるのだ。私は日本の右派の人々に問いたい。あなたが真の愛国者かどうかは、チャイルドケアを支持するかどうかでわかる。民族主義は国旗を大事にするが、愛国者は国にとって最も大事なのが子どもたちであることを知っているのだ。

というわけで、ジム・ロジャーズさんとルトワックさん、あらゆる面で違う二人ですが、一つの点で意見が一致しています。それは、「日本最大の問題は、少子化問題だ」ということ。私もそう思います。

安倍内閣の最重要課題は、かくあるべき

「日本国の最優先課題を二つあげやがれ!」といわれたら、

をあげるでしょう。

私は、ずいぶん昔に「成功する人の特徴」を見つけました。簡単な話で、成功する人は、「集中しているのですね。たとえば、イチローさんは、小学生の頃から野球に集中していた。バフェットさんは、11歳で初めて株を買った。

日本は明治維新後、欧米列強の植民地にされないよう、「富国強兵」でがんばってきました。それで、日清、日ロ、第1次大戦で勝利できた。戦後は、「経済一本」で来て、大成功を収めました。やはり、課題が山ほどありすぎると、成功する確率が低くなります。内政に関しては、「最重要課題は出生率を上げること」と定めて、やっていくべきです(もちろん、他の課題は全然無視していいという話ではありません)。

日本の未来を考えると、「少子化問題解決」は、憲法改正より重要です。安倍総理、出生率1.8の公約を、是非実現してください。

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【著者】 北野幸伯 【発行周期】 不定期

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