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高笑いの文在寅。韓国側の情報戦に負けた日本が「悪役」になる日

日々悪化する日韓関係。韓国政府は7月10日の時点で「日本からの輸入品を中東に再輸出していた事実」を認め、軍事転用を懸念する日本の輸出規制の理由となりましたが、欧米諸国にはそれらの事実は正しく伝わっていないようです。国際関係ジャーナリストで、無料メルマガ『ロシア政治経済ジャーナル』の著者・北野幸伯さんは、その原因は日本の稚拙な情報戦略にあると指摘するとともに、改善策を記しています。

対韓国、予想通り【戦術的ミス】の影響がでてきました

日韓関係最悪になっています。

日本側の措置について、しばしば意見を求められます。それで、メルマガで「戦術的問題と戦略的問題がある」と書きました。まだ読んでない方はこちら。

どんなに腹立たしくとも。韓国と日本が国交断絶してはいけない訳

今回は、戦略的問題については、触れずにおきましょう。戦術的問題とは何か?私は二つ指摘しました。一つは、「徴用工問題」の報復として「輸出規制を強化する」というのは「とてもまずい」ということ。「徴用工問題輸出規制全然関係ない問題ですから。

しかし、日本政府は初動で大きなミスをしました。日本政府もマスコミも全国民も、「これは徴用工問題への報復だ!」と知っている。実際、日本政府高官もそう発言し、全マスコミがそう報じていました。私は、これはダメだと書きました。そのせいとは思いませんが、事実として最近は、「徴用工問題への報復ではない政府高官はいっています遅すぎですが…)。

二つ目の「戦術的問題」は、政府の説明が全然説得力がないことです。日本政府は、「安全保障上の管理の見直しとか不適切な事例があった」とかいっています。しかし、これ、何の説明にもなっていません。外国人の記者が聞いてもわけわかんないですね。

きちんと、「日本から韓国に輸出した戦略物資が、イランやシリアなどに流れている。このことは、韓国側も認めている事実です。日本が韓国に輸出したものが化学兵器に使われる危険性もあるので、輸出管理を厳格化せざるを得ない」と毎回いう。そして、毎回、証拠として以下の記事を英訳して配らなければならない。

読売新聞オンライン 7/11(木)11:40配信

【ソウル=岡部雄二郎】韓国の産業通商資源省は10日、軍事転用が可能な戦略物資を違法に国外輸出したとして摘発された業者の事例が、2015年~19年3月に計156件に上ったと発表した。産業通商資源省が韓国の野党議員に開示した資料によると、この中には、イランやシリアなど、北朝鮮と関係の深い国に輸出されたケースも含まれていた。資料によると、イランには2017年12月と19年1月、サリンの原料にもなるフッ化ナトリウムなどが輸出された。シリアには18年3月、生物・化学兵器の実験などの際に外部の汚染を防ぐための設備「生物安全キャビネット」が輸出されていた。

本当は、リスト自体を入手して英訳して毎回記者に配った方がいい。そして、各国政府にも、リストを見せながら説明しなければならない。ところが、日本政府の解説は日本人が聞いても外国人が聞いてもわけがわかりません。それで、私は、以下のように書きました。

皆さん、「日本は韓国に圧勝だぜ!」と思っていませんか?普通に考えればそうでしょう。しかし、日本政府の稚拙な説明のせいで、また国際的に日本が【巨悪】になる可能性がある。日本は、WTOで、「なぜ輸出規制をしたのか?」説得力のある説明をできない状態なのです。これが、【 戦術的問題 】です。

実際、何が起こっているのか、見てみましょう。

アメリカメディア、日韓対立の原因は【歴史問題】

アメリカ在住のジャーナリスト飯塚真紀子さん。この方は、「アメリカメディアが日韓対立をどう報じているか?」詳しく解説してくださっています。ヤフーニュース8月9日から抜粋します。ワシントンポスト(電子版)8月1日は、日韓対立をどう説明しているのでしょうか?

「両国の争いは、日本の韓国に対する歴史的態度をめぐって、両国が長年一致しない考えを持っていることに端を発する。化学製品の輸出制限は、安全保障上正当であると言われているが、一般的には、判決(韓国大法院(最高裁)が元徴用工らへの賠償を日本企業に命じた判決)に対する報復であると考えられている」と争いの原因を徴用工問題などの歴史問題に見出している。

ワシントン・ポスト、争いの原因は徴用工問題などの歴史問題」だそうです。仕方ないですね。日本政府もマスコミも、そう解説していたのですから。日本自身の戦術的ミスです。ニューヨーク・タイムズ(電子版)8月4日はどうでしょうか?

現在、日韓で起きている分断は、貿易問題と同じくらい痛ましい歴史問題が背後にある。日本統治時代の傷がまだ完全には癒えていないのだ。韓国は、日本は戦争中にした残虐行為の謝罪を十分にしていないと主張しているが、日本は法的にも政治的にも十分に償ってきたと主張している。

ここでも「歴史問題が原因になっています。ナショナル・インタレクトはどうでしょうか?

国際情勢にフォーカスした専門誌ナショナル・インタレストもまた日韓の経済戦争は歴史問題に起因していると指摘。「(日韓の)最近の非難合戦は特に辛辣だが、歴史的な不満が何十年にもわたって日韓を苦しめて来た」とし、「歴史に根ざす大きな不満は、すぐ、簡単には解決しないだろう。しかし、迅速に高まっている危険を考えると、今は負のスパイラルに歯止めをかける時である」と警鐘を鳴らしている。

このようにアメリカメディアの論調を見て、飯塚さんは、以下のように結論しています。

安倍政権は、韓国をホワイト国から除外したのは純粋に輸出管理強化上の理由からであると主張しているが、いくらそう主張したところで、世界はそうは思っていないのだ。結局は、慰安婦問題や徴用工問題などの歴史問題に起因すると考えているのである。

ま、世界というか、少なくともアメリカは歴史問題が原因だと考えている。出所全文はこちらになります。

「正気の沙汰ではない」「日韓は低レベルの経済戦争に引き込まれている」米紙、日韓の紛争を批判

ニューヨークタイムズの偏向報道

産経新聞の大御所、古森義久さん。古森さんは、ニューヨークタイムズの記事を読んで激怒しています。何が書いてあったのでしょうか?Japan-In-depth 8月9日から。

アメリカの大手紙ニューヨーク・タイムズが8月5日付に現在の日韓対立についての長文の記事を掲載した。その内容は日韓両国のいまの対立が日本の朝鮮半島統治時代の虐待やまだその謝罪をすませていないことが原因だと述べ、韓国側の日韓条約無視の賠償請求という文在寅政権の無法な行動にはほとんど触れていなかった。

飯塚さんの記事よりも、さらにひどい内容になっています。「日本による虐待謝罪していないことが原因だ」というのです。

まずいまの日韓両国の対立の原因について記事の冒頭に近い部分で「今回の争いは第二次大戦の前と最中の日本による朝鮮半島の植民地的占領と、その期間に日本が冒した強制労働や性的奴隷を含む虐待行為への負債をまだ払っていないことを原因として起きている」と書き、その原因が日本の虐待とその未決済にあると断じていた。

同記事は安倍首相についても「保守的なナショナリストとして攻勢的な軍事政策を推進している」とか「安倍首相の率いる自民党は慰安婦が強制連行されなかったというような主張を広げ、日本側の民族主義的な感情をあおった」などと書き、いかにも安倍首相にいまの日韓対立の責任があるかのように論じていた。

愛国者・古森さんは、ニューヨークタイムズの記事を読んで激しく憤っておられる。そして、

ここまでの偏向報道には日本政府として抗議をしてもよいのかもしれない。

と書いておられます。ただ、日本政府の今のやり方だと、「御社の8月5日の記事は間違っています。日本の措置は、歴史問題とは関係なく、輸出管理の見直しです」とか抗議して、さらにドツボにはまりそうで怖いです。

「御社の8月5日の記事は間違っています。日本の措置は、歴史問題が原因ではなく韓国に輸出した戦略物資がシリアやイランなどに横流しされていたことが原因です。韓国政府もその事実を認めています(韓国政府が発表したリストを添付しておきますので、かならず確認してください)。私たちは、日本が韓国に輸出した戦略物資が、シリアやイランに流れ、化学兵器製造に使われることを容認することはできません。また、それが北朝鮮に流れる可能性も完全には否定できません。日本の措置は、日本のみならず世界の平和と安全を守るのに必要な措置なのです」などと、きちんと抗議するべきですね。古森さんの記事、全文はこちら。

日韓対立で米紙酷い偏向報道

ドイツでも…

川口マーン惠美さんは、現代ビジネス8月16日号で、「ドイツで日韓対立はどう報じられているか?」について書かれています。

日本の主張には触れないまま

 

断っておくが、ドイツは韓国を元々ホワイト国には入れていない。しかし、一般のドイツ人は、そんな話とは無縁だし、これらの記事でももちろん触れられていない。つまり、ことの次第がちゃんと説明されているとは言い難い。また、日本の主張には全然触れないまま、「日本は、この決定は安全保障上の懸念によるものだと言っている」で済まされている。これでは、どう見ても、強い日本が弱い韓国に対して理不尽なことをしているようにしか取れない。

これ、川口さんは、「ドイツメディアが悪い」ということなのでしょう。しかし、私は、日本政府の問題だろうと思います。

「日本は、この決定は安全保障上の懸念によるものだと言っている」

確かに、日本政府は、こういっています。そして、「それ以上のことは何もいっていない」。そうではないですか?もし日本政府が、具体的事例をあげ、韓国政府のリストを見せ、このままの状態をつづけたら、世界がより危険な状況になることを丁寧に説明したら?ドイツのメディアだって、日本政府の説明を書くことでしょう。

しかし、日本政府は、「日本はこの決定は安全保障上の懸念によるものだ」としかいっていません。これ、アメリカ人もドイツ人も、「わけわからんとなります

そして、そのあと、「この喧嘩の裏には、20世紀前半の強制労働の問題が潜んでいる」となり、こちらは、やけに詳しく説明がなされている。日本が1910年から45年まで朝鮮半島を植民地としていたこと、昨年10月に韓国の最高裁で、日本製鉄(元・新日鐵住金)と三菱重工に、当時の徴用工に対する賠償金支払いの判決が出たこと。つまり、これが真の原因と思える書き方だ。

これは、韓国の方が情報戦が一枚上手ということですね。日本は黙っていて何の説明もしない。しかし、韓国は大騒ぎして説明もきちんとするので、韓国側の方が説得力があるのです。

しかしながら、1965年、日韓の間で「日韓基本条約」が締結されたことについては一切触れられていない。これにより、日本の韓国に対する無償3億ドル、有償2億ドル、さらに民間借款3億ドルという破格の経済協力が決まり、また、両国の請求権に関する問題も完全かつ最終的に解決され、国交正常化が実現したことについて、解説がまったく無いのである。その代わり、「日本側は、それは1965年に解決済だと言っている」と一言あるだけだ。

これも、同じですね。日本政府が、「1965年に解決済みだ」というので、ドイツメディアがそう書いている。日本政府は徴用工問題について解説する時、日韓基本条約について、毎回丁寧に解説しなければダメです。できれば、毎回原文を読んで英訳を記者に渡して日本の正しさを主張しなければならない。川口さんが書いていることを、毎回毎回、外国人記者が暗記するくらい繰り返して説明しなければならない。

「1965年に解決済み」って何ですか?

外国人はわけがわからないから韓国の味方になってしまうのです。川口さんの記事全文はこちら。

韓国・文在寅の「反日」政策をドイツメディアはどう報じているか

今からでも…

本当に、日本政府の情報戦の弱さ、稚拙さには腹が立ちます。どう考えても圧勝できそうな戦いすら、見事に負け戦にするのですから。心を落ちつけて、これからどうすべきなのか書いておきます。

  1. 徴用工問題と輸出管理強化、ホワイト国除外などを結びつけてはいけない。シラを切りとおす
  2. なぜ日本が上の措置をとったのか、一言で終わらせず、毎回きっちり解説する
  3. 日本から韓国に輸出された戦略物資が、シリアやイランに流れ、化学兵器などの製造に使われる可能性があることを、毎回強調する
  4. 韓国政府が発表した、156件のリストを英訳し、毎回配布する

今からでもやってください。お願いします。慰安婦問題で負け、南京大虐殺でも負け、景気よく始めた日韓戦争でまた負けるのですか

ちなみに、日韓戦争今後の見通しはどうなのでしょうか?経済戦争では日本が圧勝できるでしょう。というのは、日本の方が図体がでかい。日本のGDPは世界3位、韓国は12位。日本の経済規模は、韓国の3倍以上です。だから、これはジャイアントとのび太の戦いで、日本が勝てます。

しかし、情報戦で日本は負けつつあります。経済戦で勝つことも大事ですが、それで、日本が世界で悪役になったら意味ないですね。日本政府は、がんばって挽回して欲しいと思います。

image by: 대한민국 청와대 - Home | Facebook

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【著者】 北野幸伯 【発行周期】 不定期

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