政府はマイナンバーカードを保険証として使えるようにすると発表しました。その目的は、国民の利便性向上よりも、カードをもっと普及させることにありそうです。なぜ政府は、全国民にマイナンバーカードを持たせたいのでしょうか。(『らぽーる・マガジン』)
※本記事は、『らぽーる・マガジン』 2019年3月4日号の一部抜粋です。ご興味を持たれた方はぜひこの機会に今月すべて無料のお試し購読をどうぞ。
個人は丸裸に。マイナンバーカードが取り込む情報はさらに拡大へ
マイナンバーカードが健康保険証に
菅義偉官房長官は2月15日、閣議後の会見で、マイナンバーカード普及に向け、消費活性化策や健康保険証と一体化する施策を取りまとめることを決めたと明らかにしました。
マイナンバーカードを健康保険証として使えるようにするということで、2021年3月からの施行を目指すことになります(編注:この報道に対して、日本医師会は「マイナンバーが保険証の代わりになるという誤解が一部で広がっているが、事実誤認だ」と指摘。「マイナンバーカードのICチップに搭載された情報で保険証の確認をするということ」と説明しています)。
その目的は「カードの利便性を高めて普及を促す」ことにあるようです。つまり、交付率12%程度にとどまっているマイナンバーカードの普及率を上げるためだということです。
平成28年1月から、社会保障・税・災害保障の行政手続きでマイナンバー利用が始まっているので、既に生活のいろんな場面で、マイナンバーが求められる経験をしているかと思います。
マイナンバー制度については、総務省ホームページは「マイナンバーは、社会保障、税、災害対策の分野で効率的に情報を管理し、複数の機関が保有する個人の情報が同一人の情報であることを確認するために活用される」と説明しています。
そもそもマイナンバーの導入目的は…
政府は、マイナンバー制度導入の目的について、
- 国民の利便性向上
- 行政の効率化
- 公正・公平な社会の実現
としています。
以下、それぞれについての説明を、ホームページにあるままに掲載します。
・国民の利便性向上
これまで、市区町村役場、税務署、社会保険事務所など複数の機関を回って書類を入手し、提出するということがありました。マイナンバー制度の導入後は、社会保障・税関系の申請時に、課税証明書などの添付書類が削減されるなど、面倒な手続が簡単になります。・行政の効率化
マイナンバー制度の導入後は、国や地方公共団体等での手続で、個人番号の提示、申請書への記載などが求められます。国や地方公共団体の間で情報連携が始まると、これまで相当な時間がかかっていた情報の照合、転記等に要する時間・労力が大幅に削減され、手続が正確でスムーズになります。・公正・公平な社会の実現
国民の所得状況等が把握しやすくなり、税や社会保障の負担を不当に免れることや不正受給の防止、さらに本当に困っている方へのきめ細かな支援が可能になります。
マイナンバーカードを普及させたいだけ?
まず「行政の効率化」を行政側から見れば、国民一人ひとりの「事情」を番号だけで全てを把握することができるようになるという表現に置き換えられます。
同じく行政側から「公正・公平」の部分を見れば、「不正受給の防止」つまり社会保険料や税金の徴収漏れをなくすという表現ができますね。
マイナンバー制度挿入の3つの目的の中では、「国民の利便性」が一番インパクトが弱い感じになります。
マイナンバーカードを健康保険証として使えるようにする目的が「カードの利便性を高める」のであれば、この「国民の利便性向上」を具現化したものと言えなくはないですが、いままでの健康保険証も使えるわけで、マイナンバーカードを保険証として使えることにする目的は、国民の利便性向上よりも「マイナンバーカード普及」にあるように思えて仕方がありません。
政府はなぜ、そんなにも全国民にマイナンバーカードを持たせたいのでしょう。
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