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CoCo壱番屋がインド進出の衝撃。本場の評価は甘いか、辛いか?

国内カレー業界において敵無しを誇るCoCo壱番屋(ココイチ)が、「2020年前半のインド進出」を発表し話題となっています。日本では一強状態のココイチですが、カレーの本場で成功を収めることは可能なのでしょうか。今回の無料メルマガ『店舗経営者の繁盛店講座|小売業・飲食店・サービス業』では、著者で店舗経営コンサルタントの佐藤昌司さんが、食に関して保守的とされるインドでココイチがどこまで戦えるかを占っています。

ココイチの「インド進出」は成功するのか?

「カレーハウスCoCo壱番屋」(ココイチ)を運営する壱番屋がカレーの本場インドで勝負すると7月に発表し、話題となった。これを受けてネット上では様々な意見が飛び交った。「日本のカレーはインド人には合わない」といった否定的な意見から、「日本に住むインド人がココイチのカレーはおいしくインドでも通用すると言っていた」といった肯定的な意見まで多種多様な意見が上がり、侃々諤々の議論が巻き起こった。はたしてココイチはインドで成功するのか──。

ココイチは国内では圧倒的な強さを誇る。国内では1,267店(2019年8月末時点)を展開する。これだけの店舗数がありながら、今もなお、少しずつではあるが増加傾向が続いている

既存店売上高は好調だ。7月こそ、関東地方を中心に長雨が続くといった天候不良の影響などで、前年同月比0.7%減とわずかにマイナスとなってしまったが、6月までは21カ月連続でプラスとなっていた。通期ベースでは、19年2月期が前期比2.1%増、18年2月期が1.8%増と2年連続で前年を上回っている

国内ではココイチ1強状態で、他はどれも小粒。店舗数業界2位とされる「ゴーゴーカレーですら約70店にすぎない。

ゴーゴーカレーは「金沢カレーブームの火付け役と言われている。金沢カレーとは主に金沢市を中心とする石川県にあるカレー店で提供される独特の特徴を持ったカレーライスのことで、「ルーは濃厚でどろっとした食感がある」「ルーの上にはトンカツが載っていて、その上にはソースがかかっている」「脇に千切りキャベツが添えてある」といった特徴がある。

ゴーゴーカレーは金沢カレーとして有名だが、1号店が誕生したのは東京・新宿(04年にオープン)だ。その後店舗網を拡大し、現在は東京と石川を中心に店舗展開している。

ゴーゴーカレーは数字の「5に対するこだわりが強いことで知られている。ゴーゴーカレーの「ゴ」はもちろん、新店舗オープンのたびに、555人限定で55円でロースカツカレーを提供したり、5がつく日を「ゴーゴーデー」として特典を提供するなど「5」にこだわっている。これにより存在感を発揮することに成功した。

ゴーゴーカレーに続くのが「日乃屋カレー」だ。現在、東京を中心に約60店を展開し、ゴーゴーカレーを追撃する。

日乃屋カレーに注目が集まったのは、13年に開催された「第3回神田カレーグランプリ」だ。神田カレーグランプリでは東京都千代田区の神田エリアのカレー店の中から来場者の投票でナンバーワンを決める。神田エリアは多くのカレー店が集まるカレー激戦区として知られているが、日乃屋カレーは3回目の神田カレーグランプリで優勝したのだ。これにより日乃屋カレーに注目が集まり、以降、出店が加速した。

日乃屋カレーは家庭的な昔ながらのカレーを目指している。ルーは厳選された野菜やスパイスをじっくり煮込んで作られる。定番メニューの「日乃屋カレー」はご飯の上にルーをかけ、その上に生タマゴか温泉タマゴを載せたシンプルな1品で、価格は税込みで700円台(価格は店舗によって異なる)と安くはないが、人気だ。

このように近年はココイチの他にもカレーチェーンが育ってきている。だが、それもでココイチとの差は歴然としている。ゴーゴーカレーにしても日乃屋カレーにしても、展開地域はごく一部にとどまっている。

カレー店の展開を巡っては、吉野家ホールディングスがかつて撤退に追い込まれたことがある。同社はカレーチェーン「POT&POT」を展開し、一部地域では勢いを感じさせた時期もあったが、長くは続かなかった。「味はそれなり」というのがもっぱらで、消費者の支持が得られなかったのだ。同社はPOT&POTをカレーうどん店の千吉へ転換を進め、POT&POTは消滅することになった。

同社はカレーうどん店の「千吉」と「せんきち」を現在17店展開する。同じカレーでも、カレーライス店のPOT&POTは失敗し、なくなってしまったが、カレーうどん店の千吉は存続しているというのも興味深い話だ。POT&POTはココイチなどの影に隠れがちだった。一方で、千吉はカレーうどん店というマイナーな業態だけに同業の強敵が存在しないため、生き残ることができているのかもしれない。

ココイチがインドで苦戦しそうな理由

こうしてみると、カレー業界ではココイチの存在がいかに大きいかがわかる。

ココイチの1号店が誕生したのは1978年。翌79年には愛知県にフランチャイズチェーン(FC)本部と工場を完成させた。97年に佐賀県、99年に栃木県にそれぞれ工場を完成させている。これらの工場でカレーソースを製造し全国の店舗に供給している。

工場を建設するには莫大な費用がかかるが、店舗数が増えれば1店舗当たりの工場の費用負担は減るので、店舗数を増やせば増やすほどコスト競争力は高まる。これを原動力の1つとし、店舗網を拡大してきた。

ココイチは豊富なメニューが売りだ。グランドメニューのカレーライスは40種類以上ある。オーソドックスな「ポークカレー」のほか、魚介類を使った「海の幸カレー」や、野菜類を使った「野菜三昧カレー」など豊富だ。他に、地域限定のメニューや期間限定のメニュー、カレーラーメンといった非カレーライスメニューもある。トッピングも豊富だ。加えて、ルーの種類や辛さ、甘さ、ご飯とルーの量が調節でき、幅広いカスタマイズが可能となっている。

カレーライスは家庭でも食べる機会が多いので、メニューの幅が狭いと飽きられやすい。ココイチは前述の通りメニューの幅が広いので、顧客を飽きさせないことに成功した。

幅広いメニューは客単価を押し上げる効果もある。定番のポークカレーは税込み505円(一部地域は484円)と低価格だが、他のカレーは700円台が多く、それほど安くはない。これらにトッピングを加えると1,000円程度になるケースもある。ココイチではトッピングを加える客が多く、高い客単価を実現している。

日本で圧倒的な力を誇るココイチがカレーの本場インドに進出する。三井物産と共同出資で新会社を設立した。三井物産が持つネットワークや知見と、壱番屋のカレー店運営のノウハウを持ち寄り、インド市場を攻略する考えだ。

インドには日本のカレーを持ち込んで勝負する。現地の食習慣に合わせ、動物性食品を含まないルーを日本の工場で製造し、インドに輸出する。20年をめどに1号店を首都のニューデリー近郊に出店する計画だ。10年後にはFC含めて30店を目指すという。

はたしてココイチのインド進出は成功するのか。筆者は成功はかなり難しいと考えている。インド人は食に関して保守的で見慣れない食べ物に手をつけたがらないとされているためだ。

日本のカレーはインドで食べられているカレーとは大きく異なる。日本のカレーは小麦粉でとろみをつけうま味やコクを特徴とする。一方、インドのカレーは小麦粉を使わずサラッとしていてスパイスが効いているのが特徴となっている。両者は別物とする向きが強い。インド人にとって日本のカレーは「見慣れない食べ物」となり、すぐには受け入れられないだろう。

インドで成功している外食チェーンの多くは商品をインド人向けにアレンジしている。例えば「マクドナルド」がそうで、スパイスが効いた料理を好むインド人に合わせたメニュー構成にして人気を博すようになった。

インドでは、外国料理では中華料理が根付いているが、インド人向けにアレンジしているものが大半だ。インド独特のスパイスを入れるなどしてインド人が好む味付けにし、「インディアンチャイニーズ」として親しまれている。

ココイチもインド人向けにアレンジする可能性はある。ただ、日本式のカレーを持ち込むということなので、ルーはアレンジしないということだろう。一方で具をインド人向けにすることが考えられる。だが、主役はあくまでも「ルー」だ。やはり日本のルーが受け入れられるかが重要となるだろう。

なかなか難しい挑戦となりそうだが、応援はしたいところだ。ココイチは国内では飽和感が漂っており、海外市場の開拓が急務となっている。本場インドで成功し、海外展開に弾みをつけたい考えだ。ココイチがインドで通用するのか、注目が集まる。

店舗経営コンサルタントの視線で企業を鋭く分析!
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佐藤昌司のブログ「商売ショーバイ」

image by: walterericsy / Shutterstock.com

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東京MXテレビ『バラいろダンディ』に出演、東洋経済オンライン『マクドナルドができていない「基本中の基本」』を寄稿、テレビ東京『たけしのニッポンのミカタ!スペシャル「並ぶ場所にはワケがある!行列からニッポンが見えるSP」』を監修した、店舗経営コンサルタント・佐藤昌司が発行するメルマガです。店舗経営や商売、ビジネスなどに役立つ情報を配信しています。

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【著者】 佐藤昌司 【発行周期】 ほぼ日刊

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