環境大臣として国際デビューを果たした小泉進次郎氏ですが、日本時間の23日の記者会見で口にした「セクシー発言」が話題となっています。環境問題は言うまでもなく人類が協働すべく案件ですが、「これを利用し外交的・政治的に優位な立場を作り上げようとするのが中国」と批判するのは、台湾出身の評論家・黄文雄さん。黄さんはメルマガ『黄文雄の「日本人に教えたい本当の歴史、中国・韓国の真実」』で、日本政府や小泉大臣に対して、中国を利することにならぬよう戦略的に行動することを求めています。
※ 本記事は有料メルマガ『黄文雄の「日本人に教えたい本当の歴史、中国・韓国の真実」』2019年9月24日号の一部抜粋です。ご興味をお持ちの方はぜひこの機会に初月無料のお試し購読をどうぞ。
プロフィール:黄文雄(こう・ぶんゆう)
1938年、台湾生まれ。1964年来日。早稲田大学商学部卒業、明治大学大学院修士課程修了。『中国の没落』(台湾・前衛出版社)が大反響を呼び、評論家活動へ。著書に17万部のベストセラーとなった『日本人はなぜ中国人、韓国人とこれほどまで違うのか』(徳間書店)など多数。
【台湾】小泉大臣は環境問題が中国の覇権争いに利用されないよう警戒せよ
前週は中国と国交を結んだソロモン諸島が、台湾と断交したニュースをお伝えしましたが、それから1週間もたたずして、今度はキリバスが中国と国交樹立、台湾と断交しました。
これによって台湾が国交を維持する国は15カ国になりました。太平洋島嶼国は14カ国ありますが、これまで台湾とはソロモン諸島、キリバス、パラオ、マーシャル諸島、ツバル、ナウルの6カ国が国交を結んできましたが、これが4カ国になったかたちです。
貧しい小国が多いため、中国からの支援攻勢に弱い点が指摘されてきました。今後も中国は、この地域の国々への金銭攻勢を強めて、台湾との国交引き剥がしを画策してくることは間違いありません。
もっとも、以前このメルマガで紹介したパラオのように、断固として中国になびかず、そのため中国政府が中国人旅行客の渡航を禁止した国もあります。
● 台湾とパラオという日本が統治した国が、今も中国に屈しない理由
中国と国交を樹立したからといって、対中国人感情が良好なわけでもありません。ソロモン諸島では、2006年に行われた選挙の結果を不満に思った野党支持派が、華僑による買収工作があったとして、中国人経営の商店を襲い、略奪や放火を行いました。
世界各地にチャイナタウンをつくっている中国人ですが、商売で利益をあげるだけで地域に溶け込まず、「富める中国人」と「貧しい現地住民」という構図が中国人への憎しみを生んでおり、ソロモン諸島でもそれが爆発したわけです。このときの襲撃事件によって、ソロモン諸島からほとんどの中国人や華僑が脱出し、チャイナタウンは寂れてしまいました。
そうした中国人への反発があるから、逆に中国政府は経済支援攻勢を強めて、反発を抑え込もうとしてきたわけです。ソロモン諸島の輸出のうち対中国が6割を占めており、貿易相手国1位です。
太平洋島嶼国に対する中国の支援攻勢と影響力拡大に神経を尖らせているのが、オーストラリアです。2017年にはファーウェイがソロモン諸島に高速インターネットの施設を提案しましたが、このとき、オーストラリア政府は即座に対抗策を提案し、現在では約103億円を投じてパプアニューギニアを含む海底インターネットケーブルの建設を行っています。
● 豪州、ソロモン諸島に188億円支援 中国の影響力拡大阻止へ 太平洋諸国を重視
ソロモン諸島はガダルカナル島をはじめ、日本とも歴史的に関係が強い国です。中国の勢力拡大に対して、日本も対抗措置を考えるなど、もう少し関与すべきでしょう。
キリバスについては、今後、温暖化による海面上昇によって国土全体が水没の危機に陥るとされている国です。そのため、いざというときにオーストラリアやニュージーランドへ移住できるように両国と交渉しましたが、環境難民を認めていないため、拒否されてしまいました。そのため、フィジーと交渉して移住を認めてもらい、同国に土地を購入したという現実があります。
このような窮状にあるキリバスに対して、中国は言葉巧みに経済支援を持ちかけ、台湾との断交を迫ったわけです。キリバス同様に水没の危機が叫ばれているのがツバルであり、こちらも中国による支援攻勢による離反が懸念されています。
もっとも、温暖化による海面上昇については、これを疑問視する研究もあります。また、ツバルなどは打ち上げられた堆積物などにより国土がむしろ拡大しているという説もあります。
小泉進次郎環境大臣の国連演説が話題になっていますが、環境問題は覇権主義の道具にもなりうる点で、きわめて重要な問題です。環境問題を全面に出して援助を行うことには国際的世論も反対しづらく、他国に対して外交的・政治的に優位な立場をつくりあげることが可能だからです。
もっとも、中国こそ現代の環境破壊大国であることも事実です。中国国内の環境汚染は言うまでもありませんが、他国での中国のインフラ建設支援についても、環境を無視した開発が現地住民の反発を呼んでいます。実際、ミャンマーのミッソンダムは環境破壊の懸念から現地住民の猛反対運動が起こって頓挫しました。また、ニカラグアの運河建設も、環境保護や土地収用の問題から住民暴動まで起こりました。
● 「中国人は出ていけ!」怒号飛び交う抗議デモ ニカラグア運河建設の波紋
つまり、環境問題で中国を牽制することもできれば、逆に中国を利することになってしまう場合もあるわけです。日本政府や小泉大臣にはその点を踏まえた上で、戦略的に行動していただきたいものです。
それはともかく、中国の台湾友邦切り崩しに対して、アメリカは怒り心頭であり、台湾と断交した中南米のドミニカ、エルサルバドル、パナマからは大使を召喚しています。今回の太平洋島嶼国についても、アメリカは台湾との断交はしないように圧力を与えてきましたが、それでも断交に踏み切ってしまいました。
もちろんそれは、香港問題が台湾へ飛び火している中国の焦りでもあります。その先には、2020年1月の台湾国政選挙が控えており、それを見据えた動きでもあります。もともと、台湾国政選挙を米中の代理戦争だと考えている人も少なくありません。
20年1月の台湾国政選挙が代理戦争となるのは間違いありませんが、これまで以上に影響が大きく、政治体制のみならず外交、環境などにもかかわってきますし、米中のインド太平洋戦略から日本の国益や国策にまでかかわってきますので、第三者として傍観しているわけにはいきません。
まさしくこの国際情勢の変化までが絡んでいるのです。ただ、台湾にとっては中国の金銭外交はすでに民衆レベルでもよくあることなので、中国が台湾に対してこれ以上の懐柔策を行うことには限界が見えています。
米中貿易戦争はすでに1年以上も続いており、さらに長期戦も予想されています。中国はすでに毛沢東時代の「自力更生」が可能な国ではなく、地球資源に頼らざるをえない、歴史上最大の通商国家となっており、国家存在の限界にまできています。
いくらバラマキ外交をしても、「カネの切れ目が縁の切れ目」になるのが、現在の中国の状況なのです。
image by: 小泉進次郎 - Home | Facebook
※ 本記事は有料メルマガ『黄文雄の「日本人に教えたい本当の歴史、中国・韓国の真実」』2019年9月24日号の一部抜粋です。