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不二家が大量閉店、コージーコーナー赤字。洋菓子の甘くない現状

コンビニスイーツが大きな存在感を見せ始めた今、街の洋菓子店のみならず大手ですらそのあおりを受け苦境に立たされています。今回の無料メルマガ『店舗経営者の繁盛店講座|小売業・飲食店・サービス業』では著者で店舗経営コンサルタントの佐藤昌司さんが、不二家や銀座コージーコーナーといった、かつては一世を風靡した実力企業が現在直面している状況を詳しく報じるとともに、「苦境から脱却するためすべきこと」について考察しています。

不二家が大量閉店、銀座コージーコーナーは赤字 洋菓子店の苦境鮮明

街のケーキ屋さんの倒産が相次いでいる。帝国データバンクによると、2019年1~8月で30件の倒産が発生したという。これは、00年以降で最多だった18年の同時期(25件)を上回るペースだ。通年で最多を更新する可能性も出ている。

洋菓子店の倒産を巡っては、老舗や人気店として知られていた店も数多く存在する。昨年10月には「至高のモンブラン」などの人気商品を抱えていたモンブランが倒産した。

国内のスイーツ市場は縮小傾向が続いている。調査会社の富士経済によると、17年の市場規模は1兆4,225億円で、前年から0.4%減った。近年は縮小傾向が続いており、今後も減少が続く見込みだ。

背景には、クリスマスや誕生日といった「ハレの日需要の減少や、中元や歳暮といった従来の慣習的なギフト市場の縮小がある。街のケーキ屋さんはこういった需要に頼る部分が大きく、需要減の影響を大きく受けている。

もう1つ大きいのがコンビニエンスストアの台頭だ。コンビニは近年急激に増えている。また、近年のスイーツは「日常使い」や「プチ贅沢」としての需要が高まっており、コンビニ各社はこうした需要の取り込みに躍起になっている。こうしてコンビニと街のケーキ屋さんの競争は激しさを増している

こうした戦いにより街のケーキ屋さんは苦しい状況に置かれるようになった。今後も競争は激化するとみられ、当面は厳しい状況が続きそうだ。

一方で、洋菓子チェーンはどうだろうか。

「ペコちゃん」のキャラクターで知られる不二家は厳しい状況にある。同社は洋菓子店を展開するが、近年は不採算店の閉鎖を余儀なくされている。洋菓子事業の店舗数は15年末には986店あったが、18年末には862店まで減った。3年間で全体の13%に当たる124店が減ったのだ。

不二家の洋菓子事業は営業赤字を長らく垂れ流し続けている。03年3月期から18年12月期まで16期連続(変則決算除く)で赤字だ。18年12月期は14億円の赤字だった。不採算店の閉鎖を進めてはいるが、未だ赤字は解消されていない。

不二家は1910年11月に横浜で洋菓子店を開いたのが始まりだ。翌12月にクリスマスケーキを発売している。「ペコちゃん」が誕生したのは50年で、翌51年にボーイフレンドの「ポコちゃん」が誕生した。ソフトキャンディーの「ミルキー」が発売されたのもこの年だ。84年には、現在の主力商品であるクッキー菓子「カントリーマアム」を発売している。

同社は洋菓子店を駅前の路面を中心に出店し、成長を果たしてきた。しかし、百貨店やデパートなどに顧客を奪われるようになり、次第に苦戦を強いられるようになった。07年には消費期限切れの原料を使用していた問題が発覚し、工場の操業停止や洋菓子店の休業に追い込まれるなどの逆風が吹いた。07年3月期と08年3月期、09年3月期は巨額の営業赤字を計上している。

こうした状況を打開するため、不二家は現在の親会社である山崎製パンの力を借りることにした。消費期限切れ問題後の07年3月に山崎製パンと資本業務提携を締結。08年11月には同社の連結子会社となった。これにより、不二家は山崎製パンが持つスーパーやコンビニなどの販売ルートを活用できるようになった。こうして山崎製パンの力を借りて経営の立て直しを図り、これが功を奏し、消費期限切れ問題で落ち込んだ業績を回復させることに成功した。

しかし、ここ数年はコンビニが急激に増えて競争が激化し収益性が大きく悪化している。洋菓子事業の15年12月期の営業損益は11億円の赤字(前の期は4億円の赤字)となり、赤字幅は大きく拡大した。18年12月期まで4期連続で10億円超の営業赤字を計上している。前述の通り不採算店の閉鎖を進めてはいるが抜本的な改善には至っていないのが現状だ。事業売上高も店舗閉鎖に伴い減少傾向が続いており、14年12月期は376億円だったが、18年12月期には327億円まで減った。

不二家にとってコンビニは悩ましい存在だ。というのも、競争相手ではあるが一方で商品提供先でもあり協力関係にもあるためだ。ただ、コンビニでの商品展開の規模は限定的で、山崎製パンの傘下入りでもたらされた販路拡大効果よりも、競争激化によるマイナスの影響の方が大きいのが現状だろう。

事態打開の「打つ手」はあるのか

不二家は洋菓子事業のほかに、スーパーやコンビニで販売される菓子の製造と卸売りを行う「製菓事業」も手掛けている。「カントリーマアム」シリーズが看板商品だ。同事業の18年12月期業績は、売上高が700億円、営業利益が66億円だった。売上高と営業利益はともに増加傾向にあり、同事業に関しては好調と言っていいだろう。

では、不二家全体の業績はどうか。同社の18年12月期連結決算は、売上高が前期比0.6%減の1052億円、営業利益は2.1倍の24億円だった。最終利益は91.6%減の13億円だった。営業黒字は9期連続(変則決算除く)、最終黒字は4期連続となっている。洋菓子事業の営業赤字は製菓事業の黒字で穴埋めできているので、全体では赤字とはなっていない。とはいえ、洋菓子事業の赤字を許していいわけでは当然ない。また、全体の売上高はここ数年横ばいが続いており、成長が見られない状況だ。早急に抜本的な対策を講じる必要がありそうだ。

不二家以外の洋菓子チェーンはどうか。

銀座コージーコーナーも苦戦を強いられている。同社のウェブサイトや採用サイトによると、売上高は19年3月期が253億円で、近年は減少傾向にある。18年3月期は259億円、17年3月期は266億円だった。また、決算公告によると、19年3月期の最終損益は7億5,500万円の赤字(前の期は3,800万円の黒字)に陥った。最終赤字は5年ぶり

同社は現在、首都圏を中心に洋菓子店を約400店舗展開している。1号店が誕生したのは1948年。84年に発売した「ジャンボシュークリーム」がヒットし、同社の看板商品となっている。同社の商品はこれまでに数多くの賞を受賞しており、例えば、国際的な食品品評会「モンドセレクション」を03年まで7年連続で受賞している。

同社は昨年に創業70周年を迎えた。老舗であり、根強いファンを抱えている。しかし、他の洋菓子店と同様に、ハレの日需要やギフト需要の減少などで苦戦するようになった。08年にはロッテホールディングスの傘下に入り、立て直しを図っている。しかし、それでも厳しい状況から脱することができていないのが現状だ。

洋菓子販売では不二家や銀座コージーコーナーといった大手でさえも厳しい状況に置かれている。事態を打開するには商品を強化するほか集客力の高い商業施設への出店を強化したり海外市場を開拓するといったことが必要だろう。また、SNSなどを活用し、コンビニスイーツにはない魅力を発信するといったことも欠かせない。街のケーキ屋さんも同様で、コンビニにはない商品を開発し、その魅力を積極的に発信していく必要があるだろう。洋菓子店は岐路に立たされている。

店舗経営コンサルタントの視線で企業を鋭く分析!
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佐藤昌司のブログ「商売ショーバイ」

image by: bluehand / Shutterstock.com

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東京MXテレビ『バラいろダンディ』に出演、東洋経済オンライン『マクドナルドができていない「基本中の基本」』を寄稿、テレビ東京『たけしのニッポンのミカタ!スペシャル「並ぶ場所にはワケがある!行列からニッポンが見えるSP」』を監修した、店舗経営コンサルタント・佐藤昌司が発行するメルマガです。店舗経営や商売、ビジネスなどに役立つ情報を配信しています。

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【著者】 佐藤昌司 【発行周期】 ほぼ日刊

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