プロが追い求めるアービトラージの世界/田渕直也のトレードの科学 Vol.012



ここまでの議論のまとめ

市場の構造を考えていく「市場の物理学」のパートも、そろそろまとめに入っていきたいと思います。

ここまでの議論では、市場の基本的性質として、以下のような点が浮かび上がってきました。

・相場変動の大半は、ランダムな変動、もしくはそれに近い動き方をしていて、基本的には予測できない部分が多い

・相場変動のパターンやトレンドと見えるものの多くは、人の錯覚である

・伝統的なファンダメンタルズ分析が扱う情報は、市場が最も効率性を発揮しやすいものであり、そこから有効な戦略を導くことは難しい

・テクニカル分析で浮かび上がってくるパターンや法則もまた、錯覚であることが多い

・ただし、相場変動の一部には、こうしたランダムウォーク的変動では説明できない部分がある

・その一つは、相場が上がれば売りが増え、相場が下がれば買いが増えるという自己抑制的フィードバックによるものである

・もう一つは、相場が上がれば買いが増え、相場が下がれば売りが増える自己増幅的フィードバックによるものである。

・二つのフィードバックは絶えず揺らいでいて、どちらが優勢となるかを予測することは難しいが、フィードバック・ループと呼ばれる循環的な構造を生みやすく、単なるあてずっぽうよりも多少精度の高い予測が可能となる余地が生まれる

・自己増幅的フィードバックは、自己抑制的フィードバックに比べてやや稀な現象だが、ときにファットテールと呼ばれる“思わぬ”大変動を生み、それが累積の投資リターンに決定的な影響を与える

・こうした市場の性質を十分に理解したうえで、期待リターンをプラスにするやり方を見つけ、それを数多く繰り返していくことが重要である

こうした点を踏まえて、「市場の物理学」から浮かび上がるプラスの期待リターンの源泉を改めて見ていきましょう。

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