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探偵が見た八尾市小6女子いじめ暴行事件の大人達によるクズ対応

大阪府八尾市の小学校に通う女子児童が、同級生男子から後遺症が残るほどの暴行を受け、その後PTSDにまで悩まされているという深刻ないじめ事件。しかしこの件に対する警察や学校サイド、教育委の対応はお粗末極まるものでした。当案件に関して被害者家族から相談を受けていたと明かすのは、これまでも数々のいじめ問題を解決に導いてきた現役探偵の阿部泰尚(あべ・ひろたか)さん。阿部さんは今回、自身のメルマガ『伝説の探偵』で、関係各所の呆れた対応を白日の下に晒すとともに、八尾市長に対して政治パフォーマンス抜きでの一刻も早い「事件」の解決と被害者への支援を求めています。

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大阪八尾市小学生いじめ暴行事件

大阪八尾市の市立小学校に通う女子児童Aさんが同級生の男子児童Bに公園で暴行され骨折などをしてPTSDになったとのいじめ重大事態で、八尾市教育委員会は、第三者委員会を設置した。

と報道されたのは2019年4月の中旬のことであった。その後、この調査が不十分であったとして、八尾市市長が新たに第三者委員会を設置し再調査に当たるとニュースになったのは確か7月に入ってからのことであった。

ところが、10月に入り、被害家族はメディアの取材に対し、「何も変わっていない助けてほしい」と告白したことがニュースになった。

実は私は今年6月ごろから被害保護者の相談を受けており、開示請求の結果を待って本件にあたる準備を進めていた。ところが、八尾市市長の再調査宣言により、一旦その調査結果を待とうとなった経緯がある。

事件以前

Aさんへの本格的ないじめが始まったのは小学4年生からであった。Aさんは、同じ幼稚園から一緒のC君からはじめ、「ブス」「デブ」「ゴリラ」などの悪口を言われ、これにB君がのって、悪口いじめが酷くなっていった。ついには、身体をぶつけるという行為や何もしていないのに、「ツッコミ程度の叩き」をしてくるなどになった。

学級担任はベテランと言える中年女性教員であり、堪らなくなったAさんは何度も相談をしている。

当初、この担任は注意をしていたが、だんだんと注意をしなくなっていった。そこで、Aさんに対してしたアドバイスは、「無視しろ」であった。その結果、AさんはBやCを無視するようになるが、今度は、BやCから暴力や暴言を無視したという理由でAさんは担任から酷く叱られてしまった

こうして、Aさんは担任教師への信頼を失っていったのだが、この中年の担任は、好き嫌いが激しく、お気に入りの児童には手心を加え嫌いな児童へは徹底して怒るという性格であったため、Aさんは嫌われてはいけないとストレスを溜めながらも平静を装っていた。

学校では、Aさんも時には言い返すことがあったとしてこれをいじめとして認識していなかった。よって、具体的な対応は見られず、被害はエスカレートしていった。

その中には、B君C君を含めたいじめの中心人物5人の男子児童が、Aさんを羽交い締めにして、前髪を引き抜くという事件も発生している。男子児童による執拗な女子児童への暴力行為は日常化していたのである。

また、Aさんはあまりに「ブス」「デブ」「ゴリラ」などと悪口を言われることから、日常的にマスクをつけて、顔を隠すようになっていった。

2月14日公園暴行事件

2018年2月14日、Aさんは学校から帰宅すると、他の女子児童2人と、近くの萱振公園に遊びに出かけた。

(事件のあった公園)

そこで事件が起こる。滑り台の上にいたAさんは、Bから足を触られたり叩かれ、それを振り払おうとしたところ、軽くその手を踏んでしまった。これに逆上したBは居合わせたCに、「俺、ボコボコにしていいやんな」と声をかけ、Cが「やったれ、やったれ」と答えると、猛然と滑り台の上に登った。

Aさんは抵抗をしたが、男子児童であるBの方が圧倒的に力が強く、滑り台の上で、顔やお腹を十数回膝蹴りをされ引きずり倒された。Aさんは咄嗟にうつ伏せになって身を守ろうとするが、Bの暴力は止まらず、頭を足で踏みつけたり、執拗にAさんの手を狙って、跳ね上がりながら踏みつけた。

逃げようとするAさんが動けば腰や背中を激しく踏みつけ、髪の毛を掴み、滑り台の鉄板に頭を十数回叩きつけた

グッタリとしたAさんの上にBは跨り、「王様や」と言って笑った。Aさんは恐怖と身体の痛みで、泣き続けていた。暴行現場は、長さ160センチ程度・幅80センチ程度の狭い空間であった。

(暴力事件のあった滑り台)

(暴行現場となった滑り台の上)

一緒にいた女子児童らは「やめてや!」「先生呼んでこよう!」と叫んだ。Aさんは殺されると思ったのだろう、その女子児童らに「お母さん呼んで」と頼んだ。記録や証言記録では定かではないが、暴力は午後4時半ごろから被害女児の母親が公園に到着するまでの5時ごろまでの間続いたものと考えられる。

怪我の状態は、病院の診断書から明白である。

「左小指基節骨骨折」「腰部打撲」「胸部打撲」「左小指中節骨骨瑞線損傷」「前額部打撲擦過傷」「右足関節捻挫・打撲」

(診断書写真)

医師によれば、左手の小指は、根元から折れ、指の骨の損傷が激しいため、後遺症が残る可能性があると話したそうだ。事実として、Aさんは後遺症に悩まされている

事件後

事件後の学校の対応は極めて杜撰である。これは当初の第三者委員会も強く非難している。そもそものスタンスが揺れ動いているのだ。

例えば、3月には学校としても対応しているとしつつ、6月の段階では、公園で起きた事件には関与できないとしているし、Aさんの抵抗自体を取り上げて喧嘩であるという見方が顕著であった。

そして、公園暴行事件については、被害者が加害者とされるという問題も発生していた。

警察と児童相談所

本件については、被害保護者に私がアドバイスして、八尾警察署の記録や児童相談所の記録を開示請求によって入手している。これによれば、警察は喧嘩であると考え、大怪我をしているAさんもいわゆる加害行為をしたとして調べており児童相談所に送致をしていることがわかる。

特に、担当官は、事件に進展がなく、アポなしで相談に行ったAさん夫婦とAさんに対して、被害保護者の証言では「アポを取れと言ったよな?」と話し、当のAさんにも「あんたもやったやろ?」と聞いているとされる。

一方、担当官は、「公園での子供の喧嘩」と言い、Aさんには「お互い、暴力を振るった事はわかるね」と言ったと記録している。言い方の差異はあるにしろ、その内容は被害者を傷つけるものに他ならない

診断書問題

それにしても、特記すべきような怪我などをしていないBがなぜ被害者となったのか?これについて調べてみると、2つのことがわかった。

1つ目は、Bが自身が契約する損害保険会社に出した診断書だ。 ここには、「首の捻挫」とある。つまり、BはAさんと揉み合った時に首を捻挫したというのだ。ところが、この診断書の日付は3月1日であった。つまり、事件があった2月14日よりも随分経って怪我をしたのだと主張を展開したことになる。

2つ目は、警察の記録にあるアドバイスだ。

このような事件は、「触法少年」事件となり、刑罰ということにはならない。警察は被害保護者との会話の中で、「もしもあなたが被害届けを出せば、相手も出すことになる」と伝えた。

とある。つまり、被害者が抵抗することによって多少でも加害者が怪我をしていれば、それをダシに、加害者も暴力を振るわれたのだと簡単に主張ができてしまうということだ。

あまりに理不尽なことであるが、現場を知る警察官はこうなることを予見していたのだろう。だが、これでは、何が正義なのか、被害を受けたら一方的に命の危険を晒してもやられていた方が良いのか、特にいじめは被害者は耐えるしかないのかということになってしまわないか。

誤って書類を破棄

さらに、この問題には情報として足りない部分が多くあるのだ。その原因は他の事案であれば、即日報道され教育委員会や学校は幹部総出で謝罪会見を開かなければならないレベルの問題である。この件、Aさんがいじめをひどく受け始めた頃の記録がすっぽり抜けているのだ。理由は、「当時の担任が記録を誤って破棄してしまった」からだということになっている。

(記録の写真)

たいていの市区町村では、いじめに関係する資料は重要資料にあたり、この保管などは厳重に管理する必要がある。今、あちこちの学校や教育委員会で資料紛失や誤っての破棄が起きているが、その多くは被害者側の主張を示す部分がなぜか消えるのだ。

また、Aさんがいじめについて相談をしていたスクールカウンセラーの記録も大量に書いていたはずのメモがなくなっているのだ。八尾市教育委員会指導課によれば、各校のスクールカウンセラーについては、「記録の保管期限はなく」「個人のメモであっても学校と共有し」「他記録も学校と共有する」とのことであった。

ところが、このメモが一切喝さい無くなっている上、当時のカウンセラーは自分で保管しているから、「あると回答し後日教育委員会が調べると、「ないとなったのだ。これら資料紛失に対し、指導課は「隠蔽」と言われても仕方のないことだとしている。

それにしても、カウンセラーの守秘義務は学校に及ぶと考えても良いものだが、学校と共有となれば、カウンセラーに相談を控える種の相談もあろう。もしも、共有が本当であるならば、カウンセラーは完全な守秘義務のない校長の御用聞に他ならない立場なってしまう。ここは改めるべき問題と考えた方がよい。

不可解な点はもう1つある。当時の小学校校長は教育委員会畑のエリート公務員であり、学校教育部参事、文教常任委員、人権教育課課長を歴任してからこの小学校の校長となっている。いわゆる戻れば出世のコースだ。

さて不可解な点とは、多くの教育委員会ではいじめの対応は教育指導課や指導課が学校と連携して対応している。本件においても当初は指導課が担当していた。ところが、本件がいよいよ「いじめの重大事態」と認識され、第三者委員会が動き始めているとなると、一変して担当窓口が変わったのである。

それは、小学校校長が少し前まで課長を務めていた「人権教育課」であった。

確かに、八尾市教育委員会の組織図を見ると、いじめのガイドラインなどは人権教育課が出しており、いじめ対応は人権教育課なのだろう。しかし、この担当窓口の変更と校長の前任から考えれば不適切ではなかろうか。

この事実は私が聞き取りの最中に気がついたものであり、2019年11月の現在も、こうした背景について、被害家族には告げられていない

また、教育委員会設置の第三者委員会は、被害側の合意を得ずに勝手にスタートしている。これは、いじめ対応におけるガイドラインに違反しているとも言える。被害保護者に第三者委員会が動いていると告げられたのは、実際に第三者委員会が立ち上がってからおよそ2ヶ月後のことであった。

市長設置の第三者委員会

こうしたこともあって市長は第三者委員会を自らの付属機関として設置し、再調査を指示したのかもしれないが、同時に、早く調査を進めるようにと指示もしている。そのためか、第二の第三者委員会の調査ペースはかなりハイペースで進めている。これはこれで良いのだが…。

被害家族によれば、2019年10月に聞き取りがあった際、調査員から年内に結果を出すという発言があったという。この段階では、学校関係者15人程度と被害側の話しか聞いていない状態であった。すでにある程度のバイアスがあったとは考えられないだろうか。

被害女児の父によれば、調査員は「はじめの第三者委員会の報告に基づいて調査をしている」と言ったそうだ。これでは、前回調査の焼き回しになりはしないか、不安というより、やっぱりダメなんだという残念な気持ちがあったと話してくれた。

被害女児は不登校のまま

現在も被害女児のAさんは恐怖で家から外に出ることができない状態が続いている。事実、彼女は2月14日の事件以降、学校に通えていた時期もある。しかし、暴力を振るったBがその後もAさんに嫌がらせをしたり、これに学校が一切対応をしなかったこと、警察や児童相談所の対応などを含め、どこに行っても自分は危険な状態なのだと事実を持って刷り込まれてしまって、外に出ることができなくなってしまったのだ。

また、彼女は2月14日に代表される暴力事件や不適切な大人や組織の対応を原因としてPTSDを発症しているのだ。

特にこの小学校の対応は最悪であり、その酷さは枚挙にいとまがない。例えば、運動会で踊るダンスのDVDを運動会の直前に渡されたりしている。そのダンスには誰が映っているのだろうか、そんな直前に手渡されて、彼女はダンスを覚えることができるのだろうか。思いも配慮もかけらもないのだ。受け取る側は、「お前は来るな」というメッセージかとも思えてしまうだろう。

いじめ防止対策推進法によれば、被害者とその保護者の支援をするようにとの条文がある。本件において、十分に被害者のケアはされているとはいえず、むしろ、ズタズタにされたと言える。彼女は明らかに二次被害を受けておりこの二次被害も修復が難しい大きな心の傷になっている。

八尾市市長には、本件を政治的なパフォーマンスに使わず、もう1度この酷い事件を丁寧に見直し、市として全力で被害者が心の平安を取り戻せるための支援をしてもらいたい。

編集後記

いじめの定義においては、一定の関係性があり、何らの行為があって、それを受けた側が心身の苦痛を感じれば、いじめとなります。だから、喧嘩があって互いに殴り合って互いに心身の苦痛を感じれば、これは2件のいじめが発生したとするのが正しい解釈となるわけです(これは東京都教育庁マニュアルの事例)。

ところが、一方が強力に暴行、これを防ごうと抵抗したものが互いにいじめと認められるでしょうか。例えば、正当防衛では、我が身や他人の生命身体を守るためであれば一定の攻撃は許されます。これが男女であったら、より強く認められても良いのではないでしょうか。

ある目撃情報によれば、2月14日夜、Bはその兄に激しく殴られていたとあり、翌日に目の周りが青くなっていたとの情報もありました。確かに首の捻挫をしていたかもしれない、しかし、それはAさんと揉み合ってできたものとは言い難いはずです。

また、現場となった公園には何度か足を運びましたが、そのいずれも保護者が公園にはいました。多くの子供たちが遊ぶ公園で、学齢の低い子や未就学児などはお母さん連れでした。また、意外と人通りがあり、公園前の道路は生活道路なっていて、自転車や徒歩の大人が通っていました。もしかすると、当時の様子を見ていた大人がいたかもしれないのです。

そして、当時の校長、この方は人権教育課の課長でした。役所の課長は一般企業で言えば部長・本部長クラスです。この方は、市の記録によれば、スクールロイヤーに相談し、弁護士から教授されてはじめて本件をいじめとして対応しなければならないと認識したとあります。

八尾市教育委員会ではいじめの対応指針などを公開するのは人権教育課の範疇です。このレベルの認識と知識で、よくもまあ、課長が勤まったものだとも思うし、このレベルでいじめに対応しようというのには無理があろうと思います。

これほど酷い暴行が起きて、被害者を加害者とするのは一般的に理解できません。本件については、Aさんが笑顔を取り戻せるまで、寄り添うと共に、調査を継続したいと思います。

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image by: Kansai explorer [CC BY-SA 3.0], ウィキメディア・コモンズ経由で

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社会問題を探偵調査を活用して実態解明し、解決する活動を毎月報告。社会問題についての基本的知識やあまり公開されていないデータも公開する。2015まぐまぐ大賞受賞「ギリギリ探偵白書」を発行するT.I.U.総合探偵社代表の阿部泰尚が、いじめ、虐待、非行、違法ビジネス、詐欺、パワハラなどの隠蔽を暴き、実態をレポートする。また、実際に行った解決法やここだけの話をコッソリ公開。
まぐまぐよりメルマガ(有料)を発行するにあたり、その1部を本誌でレポートする社会貢献活動に利用する社会貢献型メルマガ。

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