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悲観論はここまでだ。衰退途上国ニッポンを再興させる一筋の光明

経済産業分野においては、もはや先進国の地位からは滑り落ち、衰退途上国とすら言われる日本。「衰退途上」の字義の通り、我が国はこのまま沈みゆくほかないのでしょうか。今回のメルマガ『国際戦略コラム有料版』では著者の津田慶治さんが、「衰退途上国としてどう生きるかは、日本人の特性を再検討し違う道を模索することが必要」とし、具体的な再興策を提示しています。

日本経済をどう維持するか?

日本の人口は減少し、物作りでも日本の若者が関心なく、AIとソフト開発には論理力が必要であるが、日本人はあまり数学が得意ではない。日本経済の今後を検討しよう。

米国株価

NYダウは、利下げ期待で、7月16日27,398ドルと最高値を更新したが、製造業ISMが50割れ、かつ米欧貿易戦争も始まり大きく下落したが、ステルスQE4と3回の利下げと、雇用統計もよく米中貿易協議も、部分合意の方向と報道で、大きく上昇

リスクオン相場で連日最高値更新になっているが、10年国債の金利は1.6%に上昇してきたし、米中通商交渉が12月に延期したことや中国が関税下げの一段の拡大を要求するが、トランプ大統領は、それを合意していないとしたのに、6ドル高の11月8日27,681ドルになる。

トランプ大統領は、米中通商交渉を株価のコントロールに使っているが、現時点の株価上昇は行き過ぎであり、少し止めたいと思っているが、市場は熱狂に包まれて、株価は上昇している。このため、中国との12月部分合意の調印もなくなる可能性が出てきた。

IMFは、世界全体で、188兆ドルの債務が政府と民間であり、この債務は返せないと警告し、同じく19兆ドルの社債が発行されているが、半分はデフォルトの危険があると、言っている。

ガンドラック氏は重大な局面にあると述べている。バブル絶頂期は株価も猛然と上がり、熱狂の中にいるので、その相場に巻き込まれてしまうことになる。しかし、実体経済を見ると、企業の収益は減少して、資産と借金を増やす両建経営は行き詰まり、そろそろ限界に近い可能性がある。

景気のピークは2018年で、それから下り坂になっている。雇用統計で雇用が増加しているが、低賃金労働者だけである。中間層以上の雇用は減少している。投資家は、次の不況に備える行動を取ることだと、ガンドラック氏は警告している。

バブル崩壊は、そこに踊った金の量に比例するので、中央銀行がバブルを作ったので、今までの10倍以上のお金が踊っているので、今までの10倍の衝撃になるとガンドラックは言っている。次のバブル崩壊で米国経済は崩壊することになると見ている。

ここで、米中通商交渉が破綻すると、そのトリガーになりかねないと見るが、ランプ大統領の9月1日分の関税引き上げを元に戻すことは了承しないことで、中国の農産物輸入500億ドルも宙に浮くことになる。しかし、悪いニュースで株価が下がると押し目買いが入り株価は落ちない

トランプ大統領は、2020年6月に株価を最大値にしたので、現地点での爆上げは危ないと感じて、12月の合意が危ぶまれる状況にすることで、株価を少し下げたいようである。しかし、今の熱狂相場で、悪いニュースを相場が無視してしなう傾向が出てきた。

中国も米国の世論調査を見ていて、バイデン候補の支持率が復活してきたことで、様子見のムードが漂い始めている。しかし、中国の輸出が9月1日の関税引き上げで16%の減少しているので、これ以上の関税UPは阻止して、できれば9月1日実施分の関税UPも元に戻したいようである。

日本の株価

日経平均株価は、2018年10月2日24,448円になったが、以後低調で、12月26日18,948円と暴落し、その後はレンジ相場になり、10月から売り残の買戻しや海外投資家1.6兆円の買い越しで、連日の年初来高値になっている。たぶん、海外の買いの半分以上は投機筋の先物買いで、24,000円に向けて上昇している。

しかし、ソフトバンクGの155億円の赤字、楽天の141億円の赤字など下方修正が多数出ている。上場企業の前期比1兆円の収益悪化になっている。実体経済は弱い。それと、米中通商交渉の行方に心配が出ても、なお、11月8日23,391円と続伸した。熱狂相場が日本株をも押し上げている

リスクオン相場であり、1ドル109円台になって、想定為替レート108円後半より円安になり、外人投資家が日本株買いを開始したようである。日本は、景気後退が米国より強く出ているのに、株高になっている。バブル抑止を日銀が進めないと、バブル崩壊時の衝撃を米国同様に受けて、大手銀行の一角を含めて、多数の地銀が倒産の憂き目にあうことになる。

日銀の金融政策の方針を転換する必要がある。バブル抑止に替えることである。金利水準はそのままで、日銀手持ちのETFを大量に売ることである。そして、バブルを抑止して、外人投資家の期待を裏切ることである。これを、強く推奨しておく。

米国のバブル崩壊、経済崩壊に巻き込まれてはいけない。EUは巻き込まれないように不況風を吹かせているがそれが正解である。

日本は、すでに物作り大国ではない

株価は上昇しているが、AV系、IT系機器では韓国と中国に負けて、ソフト産業、ITサービス業では、米国と中国に負けている。自動車でも今後のEV系では、中国や欧州に負ける危険性がある。

徐々に、製造業のGDPに占める割合も低下しているし、民生機器での日本企業のシェアが下がっている。モノづくりでの限界点に来ているように感じる。物からサービスへ産業構造が変化してきている。設備投資でも製造業ではなく、観光産業が活性化している。

それに伴い、若者に物づくりへの情熱を感じなく、優秀な人が物づくり企業に入らない。このため、企業は物づくりで日本離れを推し進めている。

工作機械や電子部品でも中国、韓国企業が徐々に出てきている。特に「中国製造2025」で急速に先端製品の性能が上がっている。

三菱航空機のスペースジェットは、複数回の納期延長でキャンセルが多発している。日本人だけでの開発が大きな問題となってきている。外国人が主力で日本人は補助の方が良かった感じである。

反対に、ホンダ・ジェットは、知識ある外国人で設計・開発したことで、大きな成果を出している。米国での設計・開発・生産を行い、日本には何もない

日本人の物づくり能力がそれほどでもないことが証明されてきている。また、大学でも研究費用が削減されて、将来ノーベル賞を取れる研究が少なくなり、若手が研究生活を送れないような環境になっている。AIや量子コンピューター分野の実用化でも米中に、大きく離されている。

これにより、大きく製造業の競争力が失われることになるが、国家予算の余裕もなく、対応できないでいる。今後、10年程度で、中小企業の半分程度がなくなり職人芸的な物作りができる部品産業も衰退することになる。

勿論、AIやソフトの開発に機械産業でもシフトせざるを得ないが、これは、論理力が必要であり、日本人の5%程度しか対応できないし、必要なら世界から有能な人間に日本に来てもらうしかない

物作りを捨てるのではなく、世界から有能な人間に来てもらうことである。職人芸が必要な部品産業は、東南アジアの人に任せるしかない。製造業の工場は、AIとロボットで無人化されてくるので、日本人を必要としなくなる

このような状態では、日本は、もう、物作り国家から違う国家像を描かないといけない。勿論、AIなど最先端技術をベンチャーなどで行い、それを国がサポートして、大きな力を掛けるべきであるが、予算が回せない。

日本を衰退途上国という評論があるが、それではどうするかの議論が出ていない。そして、衰退途上国としてどう生きるかは、日本人の特性を再度検討して違う道を模索することが必要である。

観光立国

とすると、日本の次は何かというと、観光しかない。観光には、それを魅力的にする複数の要素がある。その要素を強化する方向で、観光業を推進することである。

日本は、「観光資源+礼儀良さ+治安の良さ+まじめな態度+観光に必要な高級食材+料理を作るシェフ」などを重層的に育成して、それほどには、論理力を必要としない分野に力を入れて推進して、国民の8割が食べていける職を作る方が良い。低賃金かもしれないが、一流になれば、それ相当な賃金になる。

観光資源では、伝統工芸の世界も維持する必要がある。漆産業や漆工芸などは、維持する必要がある。治安の維持には、貧富の差を拡大しないような仕組みを作るしかない。まじめさは、論語教育などが必要である。

そして、観光立国化することで、最低の職を確保しておくことであるが、これは、フランスやスイスと同じ戦略でもある。日本のスイス化やフランス化とも言えることである。

現時点、4,000万人が来日して、1人20万円程度を日本で使うと、それだけで、8兆円規模の産業になる。IRなど観光での消費を増やせば、10兆円規模になる。携帯電話やコンビニの市場規模と同じレベルになる。

そして、高級化も推進して、富裕層の観光を促進して、1人当たりの消費額を上げる政策も必要になる。

この産業を延ばすことで、次の日本のメイン産業をするために、観光公害などを、抑制して地元住民の暮らしとの調和を図る必要がある。京都市の行っている宿泊税などは、迷惑を金に代えて、市民生活を保護したり、舞妓さんを見ようと観光客が大勢来る祇園などは、地域に入る木戸銭を取ればよいような気がする。舞妓を見るショーなども行い、観光客の要望を満足させればよい。

というように、観光業を組み立てなおして、次の多くの日本人の就職先は、観光業関連にすればよい。こちらは対人サービスであり人間が対応した方が良い

地域振興にもなる。地域の観光資源を掘り起こすことである。特に外国人が好むのは、田畑と里山の風景であり日本のどこにもある風景である。これを観光化することが必要になる。

自然風景も観光資源になる。3月に奥入瀬に行ったが、雪が多く歩きにくいし、緑もない風景であったが、多数の外国人がいる。聞くと、台湾からの観光客であり、台湾には雪のある奥入瀬のような風景はないと言っていた。日本人は秋の紅葉のシーズンが良いと思っているが、台湾の人は冬の方が良いのである。北海道も冬にタイからの観光客が多いという。いろいろな国の観光需要は違うので、それに対応すると、面白いことになると見た。

農業の再生

現在、温暖化や寒冷化が同時に起きている。大陸内部では極地からの冷たい風で、10月の米国中西部は、ものすごい吹雪に覆われて、普通5度程度の温度であるのに、今年はマイナス30度まで下がっているので、トウモロコシの40%が刈り取り前で収穫できなかったという。大豆も半分程度がダメなど、大きな被害が出ている。このため、米農家の倒産が20年ぶりに多くなっている。日本では逆に温暖化による台風の強大化で被害が出ている。

オーストラリアなどは温暖化による干ばつで、小麦が不作になり、中国も米国から大豆、豚肉などの輸入をせざるを得ないことになっている。農作物の世界的な気候変動で不作になっているのだ。

発展途上国は、農産物価格のインフレで、国民が政府に対して、怒りのデモを行っている。この現象が徐々に日本の食卓にも出てくることになる。

このことが、日月神示に出てくるので、心配している。このため、早く、日本農業の再生を政府主導で行う必要があると見ている。

若者の農業への誘導を行い農産物の収穫量を増やしていくことが必要になる。農家の平均年齢が70歳では、農産物の量を増やすことができないし、耕作放棄地が増えるだけである。

儲かる農業のために、大規模で自動機械農業への投資支援をして、若者の就業を促進することが必要である。地方の人口減少もこの政策である程度は防げることになると見る。

水素社会への移行、素材革命

トヨタが推進する水素社会への移行は国家も含めて、推進するべき分野であろうと思う。自然エネルギーの変換効率が上がり、キャンピングカーには、必需品化してきた。家でもFITが終了して、今後、蓄電池などのサポートで、使われることになる。

原発から巨大な電力ではなく、地域などでも地産地消エネルギーが出てきて、電気の分散化が進んでいくことになる。

また、ミドリムシの量産に成功したことで、ミドリムシを餌にする油分の多い微生物の量産もできることになっている。石油が微生物から得ることができるはずである。ミドリムシから石油にするより効率が大きく上がるはずである。自然エネルギー利用であり、CO2を減らすことにもなる。

素材での日本は大きなポジションがある。固体型電池、セルロース・ナノファイバー、IPS細胞などで、物性や生物の特性に起因した研究の方が日本人気質に合っている

日本人の弱い論理分野は、海外から論理力のある人を日本の会社が雇い、AIやロボット化、機械のソフト化を行い、日本企業が今後も世界で戦えるようにしないといけないと同時に、観光業と伝統芸や農家水素社会化素材分野などを振興して、今度の寒冷化・温暖化を見据えて、国家戦略を変えていくことである。その基本にあるのは、日本は衰退途上国にあり、すべての分野で最先端になることはできないという諦めであろう。

さあ、どうなりますか?

image by: FiledIMAGE / Shutterstock.com

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【著者】 津田慶治 【月額】 初月無料!月額660円(税込) 【発行周期】 毎月 第1〜4月曜日 発行予定

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