バブルにおける非合理的な価格形成
今回は、市場におけるランダムではない部分、すなわち市場の非合理性の典型例として、バブルの話をしたいと思います。市場の効率性がもたらすランダム性の中では、プラスの期待リターンを見出すことはできず、市場の非合理性の中にのみチャンスがあるわけですから、その非合理性について理解することがまず大切です。
バブルの時には、株価などの資産価格が後から考えるとどんな理屈でも正当化できないようなとんでもない水準に押し上げられます。
17世紀のオランダで発生したチューリップ・バブルでは、珍しい品種のチューリップの球根が、家一軒を買えるほどの高値で取引されました。18世紀のイギリスで発生した南海バブル事件では、実体を伴わない会計上の利益を背景に、南海会社という会社の株が短期間に数倍に跳ね上がりました。
現在にいたるまで、数限りなく繰り返されてきているバブルでは、これと同じような現象が無数に起きています。
1980年代の日本のバブルでも、日経平均の平均PER(※)が約60倍という信じがたい水準を付けました。
※PER……株価収益率。株価を一株当たり純利益で割った値。株式市場全体で見ると、概ね10~20倍くらいが適正水準といわれている。
このように、あまりにも非合理的に形成された価格は、いずれ修正されざるを得ません。実際に、過去に起きたすべてのバブルが崩壊を迎えました。
ここで、一つのアイデアが浮かび上がるかもしれません。価格の非合理性を見抜くことが出来れば、市場の逆を突いて利益を上げられるのではないか、ということです。
ところが、こうした「市場の非合理性を突く」という考え方は、実際にはうまくいかないどころか、非常にコストが高くつくものとなりがちなのです。
その理由の一つは、「今がバブルであり、近いうちにかならず相場は反転する」と予想することが極めて難しいことにあります。